定義
汎用人工知能(AGI、Artificial General Intelligence)とは、特定の作業だけをこなす従来の人工知能とは違い、人間にできるあらゆる知的活動を自分で理解し、学習して実行できる汎用的な人工知能のことです。
囲碁の天才と、何でもこなせる人の違い
私たちが使うカーナビは道探しが抜群にうまいのに、ラーメンの作り方は知りません。世界チャンピオンに勝った囲碁プログラムも、チェス盤の前では石ひとつ置けません。このように特定の1つのことだけが得意なプログラムを「特化型AI(Narrow AI)」、または「狭いAI」と呼びます。
一方、人間は運転を習っていて行き詰まれば地図を見ますし、空いた時間に新しい料理を覚え、状況に合わせて適応していきます。汎用人工知能はまさにこの人間の力のように、あらかじめ決められた機能に閉じこもらず、新しい分野を自分で学んで解決する知能です。
ソフトウェアのコーディングから法律相談、創作の文章、科学実験の設計まで、人間の知性が届くあらゆる領域で、人間と同等かそれ以上の実力を発揮することを目指しています。
賢いチャットボットと本物の知能の決定的な違い
最近の対話型AIを使ってみると、まるで本物の人と話しているように感じます。膨大な文書を一瞬で要約したり、それらしい詩を作り出したりもします。そのため「もう汎用人工知能は完成しているのでは?」と思う人もいます。
ただ、今のAIは膨大な量の文章を統計的に学習し、次に来る最もそれらしい単語を推測するという仕組みで動いています。この方式で文の意味を理解していると言えるのか、世の中の仕組みをどこまで把握しているのかは、研究者の間でも意見が分かれています。
また、長い期間にわたる計画を自分で立てて守り抜いたり、学習データになかった突発的な状況を人間のように柔軟に切り抜けたりすることには、まだ多くの限界があるという評価が一般的です。見た目が人間をまねることと、本当に考える力を備えることのあいだには、とても大きな差があります。
もう少し正確に言うと:たどり着くための宿題
もう少し正確に言うと、汎用人工知能に到達したかどうかを判定する絶対的な基準は、科学界でもまだ1つに合意されていません。かつては、会話だけで機械か人間かを見分ける「チューリング・テスト」が物差しにされていました。しかし最近の言語モデルは、短い会話では人間と区別しにくいほど進歩したため、この物差しだけでは足りないという評価が多くなっています。
本物の汎用知能になるには、見る・聞く・触れるといった感覚を組み合わせて世界を理解するマルチモーダル能力と、自分で目標を立てて行動するエージェント技術が必要です。なかでも、機械が人間の価値観や安全のルールから外れないように制御するAIアライメント(AI Alignment)の問題が、中心的な課題とされています。
知能が人間の水準に達したあと、自らをさらに優れた知能へ改良し始めれば、知能が爆発的に成長しうるという見方もあります。そのため、汎用人工知能を人類史上もっとも重大な変化だと考える人もいますが、いつ実現するのか、その影響はどうなのかについては、意見が大きく分かれています。
よくある誤解
最新の大規模言語モデル(LLM)のチャットボットは、すでに汎用人工知能に到達している。
現在のチャットボットは膨大なデータで学習して多くのことをこなしますが、見慣れない状況で自分で長く計画を立て、汎用的に問題を解く力は人間に及ばないという評価が多いです。ただし、AGIの基準そのものに合意がないため、「到達した」という主張と「まだ遠い」という主張が並んで出ています。
日常で出会う場面
新しいプログラミング言語や会計ルールが登場しても、人の助けなしに自分で説明書を読んで習熟し、実務をこなします。
医学論文を読んで新しい薬の分子構造を設計し、実験ロボットを自ら制御して臨床試験まで指揮します。
つまり ひとことで
汎用人工知能とは、特定の分野に閉じこもらず、人間のようにあらゆる知的作業を自分で学んで解決する汎用的な人工知能です。