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シーザー暗号(カエサル暗号)

文字盤を右に何コマかずらして書くことで、ルールを知っている人同士だけが読める秘密のメモです。

  • 約3分
  • 図 1点
  • 2026-10-13 検証

定義

シーザー暗号は、文字の並び順を決まった数だけ後ろにずらして別の文字に置き換える、古くて最も基本的な暗号方式のひとつです。元の文字が何か分からないように姿を変えますが、何コマずらしたかさえ分かれば、誰でも元どおりに読めてしまいます。

文字盤を横にスッとずらす秘密のメモ

友だちと秘密のメモをやり取りするとき、ひらがなを1文字ずつずらして書くと約束したと想像してみてください。「あ」の代わりに「い」、「か」の代わりに「き」を書くイメージです。こうすると「あか」という言葉は「いき」のように変わり、ほかの人にはすぐに気づかれません。

古代ローマの将軍ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)は、機密を含む大事な手紙をやり取りするとき、まさにこの方式を使ったと伝えられています。彼はアルファベットを右に3文字ずつ後ろへずらして、秘密の手紙を書きました。

たとえば「A」は「D」に、「B」は「E」になります。アルファベットの最後にある「Z」は先頭に戻って「C」になります。このように1つの文字を決まった別の1つの文字に1対1で置き換える方式を単一換字暗号といい、シーザー暗号はその中でも最もシンプルな形です。手紙を運ぶ使者が敵に捕まっても、内容を知られないようにするための知恵でした。

ひとつの鍵で閉めて開ける、共通鍵暗号のご先祖さま

暗号の世界では、誰でも読める元の文章を「平文(ひらぶん)」、読めないように変えた文章を「暗号文」と呼びます。平文を暗号文に変えることを「暗号化」、元の文章に戻すことを「復号」といいます。

シーザー暗号でいちばん大事なポイントは「何文字ずらしたか」です。暗号の世界では、このずらす数を暗号を解くための秘密鍵と呼びます。鍵が「3」なら3文字ずらし、鍵が「5」なら5文字ずらして文字を置き換えるわけです。

手紙を送る人と受け取る人は、あらかじめ同じ鍵の数字を知っておく必要があります。3文字ずらして暗号化したなら、受け取る人は逆に3文字戻して復号しないと内容を読めません。送る側と受け取る側が同じ鍵を使うという点で、今も広く使われている共通鍵暗号方式の原始的なご先祖さまのひとつといえます。

もう少し正確にいうと:なぜ今は使えないの?

もう少し正確にいうと、シーザー暗号は今のコンピューター環境ではまったく安全ではありません。英語のアルファベットはたった26文字なので、ずらし方は1文字から25文字までのわずか25通りしかないからです。

攻撃者はコンピューターを使わなくても、紙に25通りを1つずつ書き出すだけで、あまり時間をかけずに暗号を解けてしまいます。このように、考えられるすべてのパターンを片っ端から試してパスワードなどを見つけ出す方法を総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)と呼びます。

文字の種類が多い言語でも安全とはいえません。日常の言語には、よく出てくる文字が決まっています。暗号文の中でいちばん多く現れる文字を探す頻度分析攻撃を使えば、すぐに元の文章が見えてきます。そのため、現代の暗号技術は文字を横にずらすだけの方法ではなく、解くのが難しい複雑な数学の式と、組み合わせが天文学的に多い秘密鍵を使っています。

よくある誤解

誤解

シーザー暗号は、コンピューターがなかった昔は絶対に解けない完璧な暗号だった。

事実

原理的にはアルファベットでのずらし方が25通りしかないので、1つずつ試したり、よく出てくる文字の頻度を分析したりすれば、コンピューターなしでも解ける弱い暗号です。ただ、当時はそうした解読の方法があまり知られていなかったため、ある程度の効果があったと考えられています。

日常で出会う場面

  1. 鍵が3のとき、英単語「CAT」を3文字ずつ後ろにずらして「FDW」に変える過程です。

  2. ネット掲示板でネタバレ防止のために文字を13文字ずつずらして書く「ROT13」というルールも、シーザー暗号の一種です。

つまり ひとことで

シーザー暗号は、文字を決まった数だけずらして隠す、最も基本的な共通鍵暗号方式のひとつです。

作成 2025-03-21 更新 2026-10-13 検証 2026-10-13