定義
スマートフォンやタブレットの画面表面に微弱な電気を均一にためておき、電気を通す指先が触れたときに生じる電気的な変化を捉えてタッチ位置をリアルタイムに割り出す方式です。現代のほぼすべてのスマート端末で標準的に採用されています。
指が触れると、電気が少しだけ動きます
スマートフォンの画面は一枚のなめらかなガラスに見えますが、その下には目に見えない透明な電極グリッド(格子)が碁盤の目のようにびっしりと敷き詰められています。この極薄の格子回路には、普段からごく微弱な電気が一面にまんべんなく行き渡っています。
人の身体は水分やミネラルが豊富で、電気を通しやすい「導体」です。指先が硬いガラス画面に触れた瞬間、画面の電極にたまっていたごくわずかな電荷(電気を帯びた粒)が指先の方へとわずかに移動します。
画面の端にある制御チップは、電気が減った位置の横軸(X軸)と縦軸(Y軸)の座標を1秒間に数百回ものスピードで素早く追跡します。センサーが割り出した正確な位置情報がOS(基本ソフト)に伝えられ、画面に触れた動作がリアルタイムな反応となって現れます。
この仕組みのおかげで、画面を強く押し込む力はまったく必要ありません。指先が表面を軽くなでるだけでも電荷の移動が起こるため、なめらかなスワイプやタッチ操作が自然に行えるのです。
正確に言うと:「静電容量」の変化を読み取っています
より厳密に言えば、単に電気が流れることだけを検知しているのではなく、電気をためる能力の変化を精密に測定しています。電子工学では、電荷を蓄える物理的な容量のことを「静電容量(キャパシタンス)」と呼びます。
画面内部の透明電極同士は、互いに向かい合ってごく微弱な電界(電場)を作っています。導体である指がガラス表面に近づくと、指そのものが新たな電極のような役割を果たし、電極間の静電容量のバランスが変動します。
端末内の制御チップは、画面全体の静電容量の基準値をリアルタイムで比較し、どこで変化が起きたかを瞬時に計算します。この検知プロセスは極めて精密なため、指一本だけでなく、複数の指が同時に触れるマルチタッチも別々に識別できるのです。
また、電極にはITO(酸化インジウムスズ)のような透明な導電性素材が極薄で使われており、感圧式のように空気層を挟んだ何重ものフィルムを必要としません。そのため、有機EL(OLED)や液晶ディスプレイが映し出す鮮やかな画質や発色をほとんど損なわないという利点もあります。
手袋をしていると、なぜタッチできないの?
かつての電子辞書やカーナビに使われていた感圧式(抵抗膜方式)画面は、2枚の導電膜が物理的に接触するよう、ぐっと押し込むことで反応していました。そのため、ペンの先やプラスチックの棒、厚手の冬用手袋で押しても、圧力さえ加われば認識してくれました。
一方、静電容量方式の画面は、押し込む圧力ではなく電気を通す導電性の物体との反応だけを読み取ります。一般的な毛糸や革の手袋は電気を通しにくい上に、生地の厚みによって指先と画面の間に距離ができてしまうため、センサーが検知できるほど静電容量が変化しません。薄手の手袋を着けたり、感度を上げる「手袋モード」をオンにしたりすると反応する場合があるのはこのためです。
スマホ対応の防寒手袋の指先に、金属繊維などの導電糸が織り込まれている理由もここにあります。指の電気伝導性を手袋の繊維を通じて画面表面まで伝え、電荷が移動する通り道を作っているのです。
なお、指先に水滴がついていたり雨粒が画面に落ちたりすると、誤作動(ゴーストタッチ:意図しない入力)が起きることがあります。水も電気を通す導体であるため、センサーが水滴を「指のタッチ」と勘違いしてしまうためです。
よくある誤解
スマートフォンの画面は、指の体温や押し込む圧力を感知して動いている。
温度や物理的な圧力ではなく、指の導電性によって生じる「ごくわずかな静電容量の変化」を検知して動作しています。
画面に水滴が落ちて勝手にタップされるのは、タッチセンサーの故障である。
水も電気を通す導体であるため、故障していなくてもセンサーが水滴を指先と誤認することがあります。これは「ゴーストタッチ(意図しない入力)」の代表的な原因の一つです。
日常で出会う場面
2本の指をつまんだり広げたりして写真をスムーズに拡大・縮小するマルチタッチ操作(ピンチイン・ピンチアウト)
指先に導電糸が縫い込まれた、スマホ対応の防寒手袋
つまり ひとことで
画面表面に微弱な電気を行き渡らせておき、電気を通す指が触れたときに生じる静電容量(電気をためる量)の変化を捉えて位置を割り出す技術です。