定義
地球はケイ素と酸素が豊富な岩石でできていますが、宇宙には炭素がとくに豊富な環境で生まれた系外惑星もあるかもしれないと考えられています。惑星内部の超高温・超高圧によって炭素がぎゅっと圧縮され、内部の大部分がダイヤモンドの結晶に変わっているのではないかと想像される、仮想の惑星のことです。確認された例はまだありません。
地球とは「生まれた材料」からして違います
鉛筆の芯になっている真っ黒な黒鉛のかたまりでできた、巨大な世界を想像したことはありますか?私たちが住む地球の地下を掘ると、砂やガラスの原料であるケイ素と酸素、そして鉄がほとんどを占めています。地球で宝石をつくる炭素は、全体の0.1パーセントにも満たない、とても貴重な元素です。
ところが広い宇宙には、酸素より炭素のほうが多いガスや塵の雲が集まった場所が、まれにあるかもしれません。太陽系とはまったく違う成分の材料で固まった惑星系です。科学者たちは、こうした場所では岩石の代わりに炭素が主役になる炭素惑星が生まれうると考えています。
このような惑星は、生まれたときから黒鉛や炭化ケイ素といった炭素のかたまりをたっぷり抱えて育つといわれています。砂や土で固めたお城ではなく、炭や鉛筆の芯の粉を何層にも重ねて作った巨大な星のようなものです。
宇宙で一番大きな圧力鍋
炭素がたくさんあるからといって、ひとりでに透き通った硬い宝石になるわけではありません。鉛筆の芯の黒鉛と、きらめくダイヤモンドは、どちらもまったく同じ炭素原子でできていますが、原子のつながり方がまるで違います。薄くすべる黒鉛の層を、硬い網目状の立体構造に変えるには、とてつもないエネルギーが必要です。
地中の深くへ進むほど、上からのしかかる重さで圧力はどんどん大きくなり、熱も上がっていきます。地球のマントルでも、数万気圧になる深さ約150キロメートルあたりでダイヤモンドが生まれます。炭素惑星なら、ある深さより下では炭素がダイヤモンドとして存在しえますし、惑星が大きいほどそうした層は厚くなる可能性があります。
この過酷な環境の中で、炭素原子はもう耐えきれず、すき間なくがっちり手をつなぎます。巨大な天体まるごとが自然の超大型宝石工場のように働いて、惑星の内部に厚いダイヤモンドのマントル層をつくりだしうる、というわけです。
もう少し正確にいうと
ダイヤモンド惑星という名前を聞くと、表面全体がガラス玉のように澄んで輝く星を思い浮かべがちです。でも実際の見た目は、宝石店のショーケースとはまったく違います。
惑星の表面は、黒っぽい赤の溶岩や真っ黒な黒鉛の粉、ねっとりしたタール状の物質におおわれていると推定されています。輝く宝石に出会うには、地表を突き抜けて数百キロメートルも深い地下へ掘り進み、ようやく硬い結晶質のダイヤモンド層にたどり着きます。
かつて代表的な候補とされた「かに座55番星e」は、中心の星のすぐそばを1日もかからない周期でぴったり張りついて回っています。理論上は昼側が2,000度を超えると予想されていましたが、2024年のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測では約1,500度と、予想より低い値が出ました。研究チームは、一酸化炭素や二酸化炭素が多い厚い大気が熱を運んでいるのかもしれないと見ています。ロマンあふれる宝石の星というより、極限の物理法則がつくりだした荒々しい異世界といったところです。
よくある誤解
ダイヤモンド惑星は、表面から澄んでキラキラ輝く宝石の世界だ。
地表は黒鉛の粉や暗い色の炭化水素系の物質におおわれていると推定されています。ダイヤモンドは、すさまじい熱と圧力を受ける深い地下のマントル層にできると考えられています。
日常で出会う場面
地球から約40光年離れた系外惑星「かに座55番星e」は、2012年の研究で内部に炭素が多い可能性が示され、ダイヤモンド惑星の候補として注目されましたが、その後の観測で疑問が大きくなりました。
太陽系の天王星や海王星の深い内部でも、メタンが強い圧力を受けて「ダイヤモンドの雨」が降っているという研究があります。
つまり ひとことで
炭素が豊富な惑星が、極限の重力と圧力を受けて内部に巨大なダイヤモンド層を抱えているのではないかと想像される、仮想の天体です。