定義
スモッグとは、煙を意味するスモーク(Smoke)と霧を意味するフォッグ(Fog)を組み合わせた言葉です。工場や自動車から出た汚染物質が水蒸気や日光と混ざり合い、空気を白っぽく濁らせる大気汚染の現象です。
煙と霧が出会うと、巨大な灰色のカーテンになります
寒い冬の日に、閉め切った部屋で鍋を煮込むと、換気扇がないせいで部屋中にけむりと湯気がこもってしまいますよね。都市の空でもまったく同じことが起こります。工場の煙突や暖房ボイラーから出た石炭の煤煙が冷たい冬の霧とからみ合うと、街全体が白く濁った闇に閉じ込められてしまいます。
煤煙に含まれる有害な硫黄分は、霧の中の水滴に溶け込みます。すると、ただの水滴が、人の呼吸器を刺す強い酸性の毒をもった粒へと姿を変えます。さらに風まで吹かなければ、この有毒な霧は散らずに、通りに長くとどまり続けます。
これが、歴史上たくさんの犠牲者を出した典型的なロンドン型スモッグです。人間がつくり出した汚染物質が自然の霧と出会って、命をおびやかす有毒な雲に変わってしまったわけです。
日光がつくり出す、まぶしいのに目にしみる霧
もう少し正確にいうと、今の私たちが経験するスモッグは、石炭の煙だけでなく、晴れた日の強い日差しによっても生まれます。冬ではなく真夏の昼間に多く現れる、現代型のスモッグです。
自動車が走るときに出す排気ガスや油の残りかすのような成分は、空気中をただよっています。そこに強烈な夏の日差し(紫外線)が降りそそぐと、空気中の分子が分解されたり再び結びついたりして、まったく新しい物質ができます。このとき、目やのどを刺激するオゾンのような有害な化学物質が大量につくられます。
こうして晴れた日に日光の化学反応で生まれる茶色っぽい霞を光化学スモッグと呼びます。空は晴れ渡って見えるのに、目がちくちくして息苦しくなるのは、この目に見えない化学反応のせいなのです。
空気のふたが閉まると、街は締め切った部屋になります
ふだんは、地面近くの暖かい空気が上へのぼり、上空の冷たい空気が下りてくることで、空気が自然に混ざり合います。この対流のおかげで、地表にたまった煤煙も空高く運ばれて散っていきます。
ところが、上空のほうが逆に暖かくなることがあります。たとえば、晴れて風のない夜が明けると、地面が急激に冷えます。すると地表には重くて冷たい空気がたまり、その上に暖かい空気の層が布団のようにかぶさります。このように上下の温度が逆転して、空気が上下に混ざる流れが大きく弱まる状態を逆転層(気温の逆転現象)と呼びます。
暖かい空気の層が巨大な鍋のふたのように街の上をふさぐため、汚染物質の逃げ場がなくなります。夜に地面が冷えてできたふたは、ふつう朝日で地面が温まれば数時間で開きます。けれども高気圧がとどまって上空の空気が沈み込んで温まると、昼になっても開きにくいふたができます。こうなると排気ガスがたまり続け、スモッグが何日も街全体を押さえつけることもあります。
よくある誤解
スモッグは、ただ天気がどんよりして発生する自然の濃い霧にすぎない。
自然の霧は主に小さな水滴ですが、スモッグは煤煙や自動車の排気ガスなどの人工的な有害物質が化学反応を起こして混ざった、危険な汚染物質のかたまりです。
日常で出会う場面
日差しの強い夏の昼間に、都心の空がうっすらと茶色っぽくかすんで見える現象です。
冬に風がやんで霧が出た日、煤煙が散らずに、息をするとのどや目がちくちくする現象です。
つまり ひとことで
スモッグは、煤煙や排気ガスが霧や日光と結びついて空気中に閉じ込められる、危険な大気汚染です。