定義
Bluetooth(ブルートゥース)は、電子機器同士がわずかな距離で、わずらわしいケーブルを使わずにデータをやり取りできるようにする近距離無線通信技術です。スマートフォンやワイヤレスイヤホン、スマートウォッチ、キーボードなど、身の回りのさまざまな機器をケーブルなしでスマートにつないでくれます。
ケーブルなしで、どうやって機器同士がつながるの?
ポケットの中でイヤホンのコードが絡まり、イライラした経験は誰にでもあるはずです。Bluetoothは、この邪魔なケーブルを目に見えない微弱な電波信号へと置き換えた技術です。端子に差し込まなくても、スマートフォンとイヤホンが空間越しに会話できるようにしてくれます。
Bluetoothは主に10メートル前後の近い距離で電波をやり取りします。機器同士が初めて接続するときは、「ペアリング(機器同士の紐付け)」というステップを踏みます。このとき2台の機器はお互いを確認し、二人(2台)だけの安全な暗号鍵を共有します。
一度ペアリングが済めば、機器同士は固有のアドレスと暗号鍵でお互いを瞬時に識別します。電波そのものは周囲全体に飛んでいますが、他の機器はあなた宛ての信号を解読できないか、自分宛てではないため無視します。そのため、電車やカフェのように周囲で何百台もの無線機器が使われていても、自分のスマートフォンの音楽が他人のイヤホンに誤って流れることはなく、自分の耳だけにきちんと届くのです。
もう少し詳しく:電波が混ざらない仕組み
もう少し詳しく説明すると、Bluetoothは家庭用Wi-Fiと同じ「2.4GHz(ギガヘルツ)」という電波の帯域を使っています。いわば同じ道路を一緒に走っているようなものですが、信号が途切れにくい秘密は周波数ホッピング(Frequency Hopping)という技術にあります。
Bluetoothは、2.4GHz帯を79本の細い小道(チャンネル)に細かく区分けしています。そして、1秒間に実に1,600回もの猛スピードでチャンネルを次々に飛び移りながら、データを小分けにして送ります。決まったパターンで素早く道を変え続けるため、ある小道が電波障害を受けても影響はごく一部にとどまります。さらに最近の機器の多くは、混雑している小道を自動で避けて通る「適応型周波数ホッピング(AFH)」も取り入れています(※これはClassic Bluetoothの仕様で、BLEは40チャンネルを別の方式で使用します)。
Wi-Fiが広い高速道路を爽快に走り、大容量の動画を一気に運ぶ大型トラックだとすれば、Bluetoothは狭い路地をすばしっこく駆け抜ける小型の配達バイクのようなものです。Wi-Fiに比べて通信速度はずっと遅く距離も短いですが、その代わりにバッテリー消費を極限まで抑えながら安定した接続を維持できるのです。
バッテリーをほとんど消費しない、賢い省電力技術
スマートウォッチやスマートタグ、各種センサーといった小型機器には、大きなバッテリーを積むスペースがありません。そこで広く活躍しているのがBLE(Bluetooth Low Energy / Bluetooth低電力)と呼ばれる技術です。ワイヤレスイヤホンの音楽再生は今もClassic Bluetoothが主流ですが、省電力をベースにした新しい「LE Audio」の普及も進んでいます。
BLEは、データを送信していない普段の時間は深い「冬眠状態」に入り、電気をほとんど使いません。そして、スマートウォッチの心拍測定データやスマホのメッセージ通知など、新しい情報が発生した一瞬だけパッと目を覚まします。瞬く間にデータを送り届けると、すぐにまたスヤスヤと眠りに戻るのです。
この賢い省電力設計のおかげで、コイン電池たった1個でも、紛失防止タグや無線センサーが1年以上バッテリー切れにならずに動き続けます。いまやBluetoothは、音楽鑑賞だけでなく、スマートホームや車のスマートキー、ヘルスケア機器をつなぐ社会の必須インフラとして欠かせない存在になっています。
よくある誤解
Bluetoothをオンにしているだけで、スマホのバッテリーが急激に減ってしまう。
初期の頃とは異なり、現代の機器はBLE(低電力技術)を採用しているため、接続待機中に消費される電力はごくわずかです。待機時の電力消費は、画面の点灯やモバイル通信モデムなどに比べれば無視できるほど小さなものです。
日常で出会う場面
スマホで音楽を流し、ワイヤレスイヤホンで身軽に歩きながら聴く。
スマートウォッチが測った1日の歩数や心拍数データを、スマホのアプリへリアルタイムに転送する。
ケーブルをつながずに、ワイヤレスのマウスやキーボードをタブレットやパソコンに接続する。
つまり ひとことで
Bluetoothは、近距離で周波数ホッピングにより電波の干渉を防ぎ、BLEなどの技術で省電力を実現しながら機器同士を無線でつなぐ通信技術です。