定義
気体の圧力(押す力)、体積(占める空間)、温度(熱さの度合い)の間にある比例と反比例の関係を、ひとつにまとめて説明する物理の法則です。一定量の気体では、圧力と体積をかけた値を絶対温度で割った値が、いつも一定に保たれます。
押すと狭くなり、温めるとふくらみます
注射器の先を指でふさいでピストンをぐっと押すと、中の空気の体積が小さくなります。外から強く押すほど、気体の粒は狭い空間に閉じ込められて、ぶつかり合う回数が増えていきます。温度が一定のとき、圧力が高くなると気体の体積が小さくなる現象。これがボイルの法則です。
逆に、つぶれた卓球のボールをお湯に入れると、魔法のようにまたパンと張った形に戻ります。気体の粒が熱を受けてエネルギーを得ると、より速く力強く動くからです。圧力が同じとき、温度が上がると気体の体積が大きくなる原理を、シャルルの法則と呼びます。
目に見えない空気の粒は、休みなく飛び回る小さなボールのようなものです。外から無理に押さえつければおとなしく縮こまりますが、熱を加えてエネルギーを吹き込むと、四方八方に暴れ回って自分の居場所を広げようとする性質を見せます。
圧力・体積・温度の三角関係
日常では、圧力か温度のどちらか一方だけが変わることはあまりありません。たとえば、空高く上がっていく気象観測用の風船を思い浮かべてみましょう。高い空へ上がるほど空気が薄くなって周りの気圧(圧力)は下がり、高度が上がるにつれて気温(温度)もぐっと下がります。
圧力が下がると風船は大きくなろうとし、温度が下がると風船は小さくなろうとします。この2つの変化をいっぺんに計算してくれる式が、ボイル・シャルルの法則です。気体の圧力(P)と体積(V)をかけて、それを温度(T)で割ると、気体の量が変わらないかぎり、その結果はいつも一定の値を保ちます。
つまり、圧力・体積・温度は、3つのうち1つが変わると、残りもバランスを取るために一緒に動く三角関係にあります。圧力を2倍にして温度も2倍にすると、体積は元の状態のままになります。
もう少し正確にいうと
この法則で計算するとき、ふだん使っている摂氏温度(℃)をそのまま入れると、でたらめな結果になります。氷点下の温度を代入すると体積がマイナスになる、おかしなことが起こるからです。そのため気体を扱うときは、分子の運動エネルギーが理論上もっとも低くなる温度であるマイナス273.15℃を0度とした絶対温度(単位はK、ケルビン)を必ず使う必要があります。
また、現実の気体は、粒そのものに大きさがあり、互いに引き合う力もあるため、この式に完全にぴったり合うわけではありません。それでも、ふつうの気圧と温度であれば、実際の空気もこの式とほとんど同じように動きます。科学者たちはこれをもとに、あらゆる気体の性質をまとめた理想気体の状態方程式という、より大きな地図へと発展させました。
よくある誤解
摂氏温度が10℃から20℃へと2倍に上がれば、気体の体積もちょうど2倍になる。
体積は摂氏温度(℃)ではなく「絶対温度(K)」に比例します。10℃(約283K)から20℃(約293K)に上がったのは、絶対温度で見ればわずか約3.5%の上昇なので、体積もほんの少ししか大きくなりません。
日常で出会う場面
つぶれた卓球のボールをお湯に入れると、中の空気が膨張して丸く元に戻ります。
ダイバーが吐き出した水中の泡は、水面に上がるほど水圧が弱まって、だんだん大きくなります。
冬に気温が急に下がると、タイヤの中の空気が縮んで、空気圧の警告灯がつきます。
つまり ひとことで
気体の圧力・体積・温度はかみ合って動き、圧力と体積の積を絶対温度で割った値はいつも一定です。