定義
気体の圧力・体積・温度・量の関係を、ひとつのすっきりした式にまとめた物理の法則です。気体の粒子は引き合わず大きさもない、という「仮想の気体」をもとにつくられています。
気体を支配する4人の主役
夏の日差しの下に置いておいたお菓子の袋が、パンパンにふくらんでいるのを見たことがあるでしょう。気体は、まわりの環境によって大きさも力もどんどん変わる性質を持っています。
気体の状態を説明するのに必要なのは、たった4つの要素です。外へ押し出す力である圧力(P)、占める空間である体積(V)、中に入っている粒の数であるモル数(n)、そして熱さを表す絶対温度(T)です。
この4つはバラバラに動くのではなく、たがいに密接につながっています。温度を上げると粒が活発になって体積が大きくなり、風船を手でぎゅっと押すと体積が減って内部の圧力が上がります。
科学者たちは、この複雑なつながりを「PV = nRT」というたったひとつの美しい式にまとめました。Rは計算を合わせてくれる気体定数という固定の数です。この式があれば、気体の状態のうち3つがわかるだけで、残りのひとつをすぐに計算できます。
この世に存在しない完璧な気体
ここで、ひとつ意外な事実があります。この式にぴったり当てはまる気体は、現実の世界には存在しない仮想の気体だということです。
私たちが吸っている空気の中の酸素や窒素のような実際の気体は、とても小さいけれど確かに大きさ(体積)があり、粒どうしが引き合ったり押し合ったりする力もはたらきます。こうした現実の要素をいちいち計算に入れると、式が複雑になりすぎて扱いにくくなります。
そこで科学者たちは、2つのルールをもつ「理想気体」という完璧なモデルを考えました。第一に、気体の粒そのものの大きさはゼロ。第二に、粒どうしはぶつかる瞬間以外、引き合う力も押し合う力もない。
物理の問題で、複雑な空気抵抗や摩擦力をひとまず無視して考えるのと同じように、気体の基本原理をすっきり理解するために取り入れた、賢い基準点なのです。
もう少し正確に言うと:現実の気体との違い
もう少し正確に言うと、私たちが息をしている日常の環境では、実際の気体も理想気体の式にほぼ当てはまります。部屋の中の空気の粒は互いに遠く離れているので、大きさや引力はほとんど無視できるほど小さいからです。
しかし、環境が極端に変わると、式との大きなずれが出はじめます。気体をものすごい力で圧縮して圧力をとても高くしたり、温度を極端に下げたりした状況を思い浮かべてみてください。
温度が下がると粒の動きが鈍くなって、引き合う力の影響が大きくなります。空間がせまくなると、粒そのものの大きさを無視できなくなります。ついには気体が液体に変わってしまうことさえあります。
つまり、理想気体の状態方程式は、温度が高く圧力が低いほど、実際の気体のふるまいをおどろくほど正確に予測してくれる、頼もしい羅針盤の役目を果たしてくれるのです。
よくある誤解
理想気体の状態方程式は、実際の空気にはまったく合わない役に立たない理論だ。
常温・通常の大気圧といったふつうの日常条件では、実際の気体も理想気体とほとんど同じようにふるまいます。化学実験や日常的な工学計算では、今でもとても役に立っています。
日常で出会う場面
夏の熱いアスファルトの上を走るとき、タイヤの中の空気の温度が上がってタイヤの圧力が高くなる現象
高い山に登ると周囲の気圧が下がって、密封されたお菓子の袋がパンパンにふくらむ現象
つまり ひとことで
気体の圧力・体積・量・温度の関係を、「PV = nRT」というひとつのすっきりした式にまとめた法則です。