定義
人工知能(AI)が自ら学習できるように、画像や動画、音声、テキストなどの元データに対し、人間が「これは何か」という説明や正解(ラベル)をつけてあげる作業のことです。
AIのための「親切な解答集」をつくるプロセス
幼い子どもに身の回りのものを教えるときのことを思い浮かべてみてください。リンゴの写真を見せて「これはリンゴだよ」、子犬の写真を見て「これはワンワンだよ」と丁寧に教えますよね。こうしてたくさんの写真と名前のペアを見せ続けると、子どもはやがて初めて見るリンゴや犬でも、自分でそれが何なのか分かるようになります。
コンピュータのプログラムも似たような仕組みで学びます。ただ、人間の子どもよりもはるかに多くの例が必要で、意味を直感的に理解するというよりは、データの中に隠れたパターンを見つけ出すアプローチをとります。人工知能は、何の説明もない写真を見せられても、それが猫なのか車なのか自分では判断できません。コンピュータにとって画像とは、無数のピクセルと色の数値が無秩序に並んだデータにすぎないからです。
そこで人間が、写真の中の猫の周りを四角い枠(バウンディングボックス)で囲み、「猫」という名札を直接つけてあげます。このようにデータ一つひとつに正しい名前をつけていく作業をデータラベリングと呼びます。AIのために世界一親切な問題集と解答集を作ってあげるようなものです。
写真から声まで、広がるラベリングの世界
ラベリングは、単に写真に四角い枠を描くだけではありません。自動運転車を安全に走らせるためには、道路や歩道、歩行者、信号機などをピクセル単位で細かく塗り分けて識別する、極めて精密な画像分割作業が必要です。
テキストや音声データを扱うときにもラベリングが活躍します。顧客対応AIを作るときには、ユーザーのメッセージが「感謝」なのか「苦情」なのかを人間が一つひとつ読んで「感情タグ」をつけます。音声認識AIを鍛えるときには、録音された人の声を耳で聞き取り、正確な文字データへと書き起こしていきます。
私たちが普段便利に使っている最新技術の裏側には、数多くの人々による地道で丁寧な手作業が隠されています。データにつけられた正解が正確であってこそ、AIも変な勘違いをすることなく賢く育つことができるのです。
もう少し詳しく:正解がある学習とない学習
もう少し正確に言うと、すべてのAI学習で人間が手作業でラベルをつけなければならないわけではありません。このようにラベルつきのデータを使って正解を当てるように訓練する手法を教師あり学習(Supervised Learning)と呼びます。
一方で、正解ラベルなしでコンピュータ自身がデータの隠れた規則性や似たグループを見つけ出す教師なし学習もあります。また、文章の次の単語や隠された単語を予測させるように、データの中から自ら問題と正解を作り出して学ぶ自己教師あり学習も存在します。昨今の大規模言語モデル(LLM)は、主に文脈から次の単語を予測する手法で、まず膨大なデータを学習しています。最近では、AIがおおまかにラベル付けを行い、人間が確認・修正だけを行う手法や、コンピュータ自身が合成データを生成する技術も急速に進化しています。
それでも、特定のタスクを高精度にこなしたり、AIを人間の意図に合わせて調整したりする段階では、精密で質の高い正解データが欠かせません。データに誤ったラベルがついていれば、AIも間違った判断を学んでしまう「ガベージイン・ガベージアウト(ゴミを入れればゴミが出てくる)」の法則が厳然として働くからです。
よくある誤解
AIはデータを大量に投入しさえすれば、人間が手を加えなくても自らすべてを完璧に学習する。
ラベルなしで規則性を見つける学習手法もありますが、正解を特定する教師あり学習においては、人間が丁寧にラベルをつけた高品質な学習データがAIの性能を大きく左右します。
日常で出会う場面
自動運転の学習のために、道路の走行映像に映る自動車、歩行者、道路標識の位置を四角い枠で囲んで指定する。
迷惑メール判定AIを作るために、届いたメール本文ごとに「迷惑メール」または「通常のメール」というタグをつける。
つまり ひとことで
AIが自ら学習できるように、元データに正解(ラベル)をつけてあげる基礎的な作業です。