定義
自然言語処理(NLP)とは、人間が日常で話したり書いたりする言葉をコンピューターが理解・分析し、人間のように文章を書いたり返事をしたりできるようにする人工知能(AI)技術です。0と1の計算しかできない機械に、文章の言外の意味や文脈を読み取る方法を教えるプロセスと言えます。
コンピューターはどうやって人間の言葉を読むの?
人間が友人と交わす日常会話や本に書かれた文章を「自然言語」と呼びます。コンピューターの内部では文字はすでに数値コードとして記録されていますが、そのコードだけでは言葉の意味や単語同士のつながりは分かりません。
そこで、コンピューターに文章を読ませるには、まず文を細かく分解する作業から始めます。例えば「リンゴをおいしく食べた」という文があれば、「リンゴ」「を」「おいしく」「食べた」のように、コンピューターが処理しやすい小さな破片である「トークン」(単語やその一部分、文字など)に分け、それぞれに固有の番号札(ID)を割り振ります。区切る基準はモデルによって異なります。
次に、それぞれの言葉が持つ意味を、無数の数字の集まりである座標に置き換えます。これを「埋め込み(エンベディング:文字を数字の空間上の位置座標に変換する技術)」と呼びます。こうすることで、コンピューターは単語同士の距離やつながりを数学的に計算できるようになり、「リンゴ」と「ナシ」は意味が近い果物同士であることを見つけ出せるようになります。
言葉の意味を数字の座標に変換したおかげで、コンピューターは人間が書いた文章を一つの巨大な数式のように扱い、高速かつ正確に計算できるようになるのです。
もう少し詳しく言うと「文脈を読む技術」です
単に辞書で単語の意味を調べて当てはめるだけでは、人間の言葉を本当に理解したとは言えません。日本語でも「あまい(味が甘い/判断が甘い)」や「目を通す」「目が回る」のように、同じ言葉でも前後の文脈によって意味がまったく変わってしまいます。
過去の「ルールベース方式」では、人間が膨大な文法規則をコンピューターに手作業で1つずつ入力していました。しかし、人間の言葉には例外があまりにも多く、流行語や若者言葉、略語なども次々と生まれるため、すぐに限界を迎えました。
現代の自然言語処理は、巨大な人工神経回路網(ニューラルネットワーク)を活用して、前後の文脈をまるごと一気に見渡す方式へと進化しました。文全体の中で、ある単語が他の単語とどのような関係性を持っているかを確率的に計算します。
そのおかげで、コンピューターは単に1つの単語を見るだけでなく、段落全体の流れや比喩的な表現、話し手の意図や微妙なニュアンスまでかなりの精度で推し量れるようになりました。ただし、皮肉やジョークのような繊細な文脈は、今でも読み違えることがあります。
私たちの日常のどこに隠れているの?
朝起きてスマートフォンの音声アシスタントに「今日の天気は?」と話しかける瞬間から、自然言語処理は働き始めています。マイクから入った人間の声をテキストに変換し、その文章が「天気を尋ねている」という意図を汲み取ったうえで、ふさわしい答えの文を作り出しているのです。
外国語で書かれた長いウェブサイトをクリック1つで自然な日本語に直してくれる翻訳ツールや、長文のニュース記事の要点だけを3行にまとめてくれる自動要約機能も、すべてこの技術のおかげです。メールソフトが迷惑メール(スパム)を自動で見分けるのも、文章の特徴を分析しているからです。
近年、世界中で注目を集める対話型AIも、膨大なテキストデータを学習して生まれた巨大な自然言語処理システムの成果です。コンピューターが人間のように文脈を理解し、文章を書けるようになったことで、検索エンジンやチャットボットをはじめ、世の中のさまざまなサービスが急速に進化しています。
よくある誤解
自然言語処理は、辞書に載っている単語の意味を検索して置き換えるだけのプログラムである。
単なる辞書検索にとどまらず、文の前後の文脈や比喩表現、話し手の意図まで数学的な確率で推測し、新たな自然な文章を生み出すAI技術です。
日常で出会う場面
外国語の記事を読むとき、翻訳ボタンを押すと瞬時に自然な日本語に切り替わる瞬間です。
スマートフォンの音声アシスタントに「明日、傘いる?」と尋ねたとき、天気予報を調べて「午後は雨が降る予報です」と教えてくれる機能です。
つまり ひとことで
自然言語処理は、コンピューターが人間の言葉を数値に置き換えて文脈やニュアンスを理解し、人間のように自然な言葉や文章を作り出せるようにする技術です。