定義
オンデバイスAIとは、遠くにある巨大なインターネット上のサーバー(クラウド)を通さずに、スマートフォンやノートパソコンなど手元の機器の中で、AIの計算を直接処理する技術です。インターネットにまったくつながっていない環境でも素早く動き、処理中の個人情報が機器の外へ出ていかないので、より安全に守ることができます。
雲の向こうへ電話をかけません
気になることが出てくるたびに、遠く離れた本社へ電話をかけて聞いているところを想像してみてください。返事をもらうまで信号が行き来する時間がかかりますし、電話が切れたら何もできなくなります。これまで私たちが使ってきたAIサービスの多くは、データセンターにある巨大なコンピューター(サーバー)が計算を一手に引き受ける、クラウド方式で動いていました。
いっぽうオンデバイスAIは、手元のスマートフォンの中に、賢い小さな頭脳を直接埋め込んだようなものです。写真を補正したり、外国語をリアルタイムで翻訳したりするとき、インターネットにつながなくても、機器ひとつですぐに計算を終わらせます。飛行機の中や、電波の届かない山奥でも止まることなく、しっかり役目を果たしてくれます。
通信網を通らないので、信号が行き来する遅延時間(レイテンシ)もほとんどなくなります。ボタンを押したとたんに反応が返ってきますし、毎月の通信データ量を気にする心配も減らせます。
私の秘密は部屋の外へ出ません
クラウドのAIを使うときは、自分が書いた日記や家族写真、通話の録音ファイルが、通信網に乗って外のコンピューターへ飛んでいく必要があります。企業がどんなに厳重な暗号化やセキュリティ対策をしていても、大切な個人情報が外の世界へ送られた瞬間から、漏えいの危険はつねに残ります。
いっぽうこの方式では、データを分析して判断するすべての過程が、ポケットの中の機器の内側だけで静かに行われます。ユーザーが入力した音声や画像の元データが外部のサーバーにまったく送られないので、個人情報が漏れる危険を大きく減らせます。企業のデータセンターがハッキングされても、そのサーバーには私の元データはない、ということです。ただし、機器そのものをなくしたり、悪意のあるアプリが入り込んだりする危険までなくなるわけではありません。
こうした安全面の利点のおかげで、デリケートな健康データを扱うスマートウォッチや、顔認証でドアを開けるスマートロックのような身近な機器でも、安心してAI機能を使えるようになります。
もう少し正確にいうと:小さなチップのための特別な訓練
スマートフォンのような小さな機器は、巨大なビルほどもあるデータセンターのように大量の電気を自由に使うことはできませんし、熱を冷ますのにも限界があります。そのため、手のひらサイズの機器にAIを入れるには、もとは数百ギガバイトもあった巨大なAIプログラムを軽く小さくする、本格的なダイエットが欠かせません。
複雑な数式をシンプルに圧縮する軽量化の技術とあわせて、AIの演算だけを電光石火の効率で処理するニューラルネットワーク処理装置(NPU)という半導体を機器に搭載します。電力はごくわずかしか使わないのに、AIの計算に限れば一般的なコンピューターのチップよりずっと速く効率的にこなす、特別な頭脳です。
もう少し正確にいうと、今日のAI機器は、どちらか一方だけを使うのではなく、ハイブリッド方式をとっています。かんたんな写真編集やリアルタイムの音声通訳は機器の中ですばやく処理し、膨大な知識が必要な複雑な文章づくりは、クラウドサーバーの助けを借りて処理する、といった具合です。
よくある誤解
オンデバイスAI対応のスマートフォンは、世の中のあらゆるAI機能を、機器ひとつですべてこなせる。
小さな端末のハードウェアには限界があります。かんたんな作業は機器の中で片づけますが、大規模言語モデル(LLM)のように膨大な演算が必要な複雑な作業は、今も巨大なクラウドサーバーの力を借りて処理しています。
日常で出会う場面
機内モードの状態でも、外国人との会話をスマートフォンがリアルタイムの音声で通訳してくれます。
スマートフォンのギャラリーアプリが、写真に写った人物やペットを、インターネットにつながなくても自分で認識して分類してくれます。
つまり ひとことで
外部のサーバーにデータを送らず、手元のスマートフォンやノートパソコンの中でAIを直接動かして、速く安全に使う技術です。