一般常識

浸透圧の仕組み

水分子が膜を自由に行き来するうちに、水が多い側から少ない側へと結果的により多く流れ込んでいく自然な移動現象です。

  • 約3分
  • 図 1点
  • 2026-10-11 検証

定義

濃度の異なる2つの液体が、水は通すが溶けている物質(溶質)は通しにくい半透膜を挟んで接するとき、濃度の薄い側から濃い側へと水が自然に移動する現象です。このとき、水の移動を食い止めるために濃い側の溶液に加えなければならない圧力を「浸透圧」と呼びます。

白菜を塩漬けにすると、なぜしんなりするのでしょうか?

みずみずしい白菜の葉は水分をたっぷり含んでいるため、パリッとしていてシャキシャキしています。白菜の細胞の中は、さまざまな物質が薄く溶け込んだ細胞液で満たされているからです。ところが、漬物を作るときなどに表面へ粗塩をたっぷり振ると、白菜の外側は一瞬にして非常に塩分濃度の高い環境へと変わります。

白菜の細胞を包む細胞膜は、水は通しやすいものの塩のイオンは簡単には通さない半透膜(はんとうまく)の役割を果たします。そのため、塩が中に入ってくるスピードよりも、中の水が出ていくスピードのほうがはるかに速くなります。水分子は膜の両側を行き来していますが、内側から外側へ出ていく量のほうが多いため、結果として細胞の中の水が外へと吸い出されていきます。

こうして細胞から水分が抜けると、内側から細胞をピンと支えていた圧力が失われ、ハリがなくなります。料理で野菜が「しんなりした」と言う状態こそ、まさにこの浸透現象によって起こる代表的な変化なのです。

もう少し正確に見てみると

この現象を一番わかりやすく理解するコツは、塩ではなく水分子の視点から眺めてみることです。濃度が薄いということは、溶けている成分に対して水分子の割合が多く、水分子の濃度(密度)が高い状態を意味します。逆に濃い塩水は、塩の粒子がスペースを占めているため、相対的に水分子の密度が低くなっています。

水分子は通れるけれど塩の粒子は通りにくい微細な隙間を持つ膜を挟むと、水分子は両側からひっきりなしに膜へと衝突し、自由に行き来します。しかし、水分子が多い側から少ない側へと通り抜ける分子の数のほうが反対向きよりも多いため、時間が経つと、まるで水が濃い溶液のほうへと吸い寄せられていくように見えるのです。

このようにして水が移動して液面の高さに差ができると、液体の重さによって圧力(水圧)が生じます。この濃度差による水の移動をちょうど押しとどめるために、濃い側の溶液に加えなければならない圧力を、物理の法則では浸透圧と定義しています。

植物の根とハイテク技術に活きる原理

植物が雨の降らない日でも土の中の水分を吸い上げる最初のステップも、この浸透現象です。植物は根の細胞内の濃度を、普段は周りの土壌中の水分よりも濃く保っています。これによって、土の中の水が根の内側へと自然に染み込んでくる仕組みを利用しているのです。なお、吸い上げた水を高い梢の葉まで引っ張り上げる主な力は浸透圧ではなく、葉から水分が蒸発する際に水柱を引き上げる蒸散作用によるものです。

逆に、濃すぎる肥料を一度にたくさん与えてしまうと、土の濃度が根の細胞液よりも濃くなってしまいます。すると根の中の大切な水分がむしろ土側へと奪われてしまい、植物が枯れてしまう「肥料焼け」という現象が起きることもあります。

現代のテクノロジーでは、この原理を逆に応用した技術も活躍しています。海水に人工的に強い圧力をかけると、塩分などは半透膜で遮られ、真水だけが膜を通り抜けて押し出されます。こうして得られた水をさらに処理して飲料水にします。これは「逆浸透(RO)方式」と呼ばれ、海水の淡水化プラントや家庭用浄水器、半導体工場で使われる超純水の製造などに幅広く活用されています。

よくある誤解

誤解

浸透圧とは、塩が水を無理やり引っ張り込む化学的な力である。

事実

塩が水を強制的に引き寄せているのではなく、半透膜を挟んで水分子が自由に熱運動する中で、水分子の密度が高い側から低い側へと結果的により多く移動する物理現象です。

日常で出会う場面

  1. しおれた野菜を真水に浸しておくと、水分を吸い込んでシャキッと生き返る。

  2. サラダにドレッシングを早くかけすぎると、野菜の水分が抜けてベチャッとしてしまう。

つまり ひとことで

濃度の異なる2つの液体が半透膜を挟んでいるとき、水が濃度の薄い側から濃い側へと自然に移動する現象です。

作成 2025-07-26 更新 2026-10-11 検証 2026-10-11