定義
電子が余っている半導体(N型)と、電子が不足して空席ができている半導体(P型)をぴったり貼り合わせた境界のことです。2つの境目には電気を運ぶ粒が消えてしまった薄い帯(空乏層)が自然に生まれます。この帯の働きによって、電気は一方の向きにはスムーズに流れ、反対向きにはほとんど流れなくなります。
生徒が余る教室と、空席が余る教室
ドアを挟んで2つの教室が隣り合っているところを想像してみてください。左の教室は席よりも生徒が多く、座れなかった生徒たちが通路をうろうろしています。右の教室は逆に生徒より席が多く、あちこちに空席が残っています。
半導体も、材料に少し手を加えることでこのような2つの性質を作ることができます。自由に動ける電子が余っている側を「N型」、電子が抜け出た空席が余っている側を「P型」と呼びます。この空席を「正孔(ホール)」と呼びますが、電子が座れる空き椅子のようなものだとイメージしてください。
2つの教室の間のドアを開けると、何が起こるでしょうか? 立っていた生徒たちが境界を越えて、すぐ近くの空席に次々と座ってしまいます。その結果、境目の近くには歩き回る生徒も座れる空席もなくなった何もない帯(空乏層)が生まれます。
この帯には電気を運ぶ粒がいなくなってしまうため、電気が通り抜けにくくなります。さらに、生徒が右へ移動したせいで右側はマイナス、左側はプラスの電気を帯びるようになります。この電気の反発力が後から来ようとする生徒を押し返すため、帯は一定の厚みで広がることが止まります。
なぜ一方向にしか流れないのか?
では、この2つの教室に電池をつないでみましょう。電池のプラス側を空席が多いP型に、マイナス側を生徒が多いN型につなぎます。すると、電池が両側から生徒と空席を境目に向かって押し出してくれます。
押し出された分、境目の何もない帯は薄くなります。帯が十分に薄くなると、生徒たちが境界を越えて隣の教室の空席へと次々に移動できるようになります。このように連鎖して続く移動こそが、私たちが普段「電流」と呼んでいるものです。
電池を逆向きにつなぐと、状況は一変します。今度は電池が生徒と空席を境界から遠ざける向きに引っ張ってしまいます。その結果、何もない帯はむしろ分厚くなり、乗り越えられる生徒がほとんどいなくなって電気が遮断されます。
つなぐ向きを変えただけで、通り道が完全に塞がれてしまうわけです。この性質のおかげで、PN接合は電気を一方向にしか通さない扉として機能します。
もう少し正確に言うと:空席自体は粒ではありません
教室のたとえ話では空席がまるで自分で動いているように話しましたが、実際に移動しているのは生徒です。生徒が隣の空席に1つ移ると、空席は見かけ上、反対側に1つ押し出されます。「正孔が移動する」というのは、このように空席が順々に移り変わっていく様子を便宜上そう呼んでいる表現です。
また、電池を正しい向きにつないだからといって、最初から電気が一気に流れるわけではありません。境目に残っている帯を押し広げるには、ある程度の電圧が必要です。その壁(しきい値電圧)を越えて初めて、電流がしっかりと流れ始めます。
逆向きにつないだときも、電流が完全にゼロになるわけではありません。ごくわずかな電流が漏れ出しますし、電圧をあまりに高くしすぎると帯が耐えきれずに壊れてしまうこともあります。それでも、「一方はよく通り、反対側はほぼ遮断される」という教室の基本イメージは変わりません。
よくある誤解
P型半導体の中では「正孔(ホール)」という粒が実際に動き回っている。
正孔は実在する粒ではなく、電子が抜け出た「空席」のことです。電子が隣の空席に移ると空席が反対側へずれていきますが、この動きを1つの粒のようにみなして計算すると便利なため、そう呼ばれています。
P型はプラス、N型はマイナスの電気を帯びている材料である。
どちらの材料も、単体では電気を帯びていない中性です。プラスやマイナスの電気の偏りは、2つを貼り合わせたときの境目付近でのみ発生します。
日常で出会う場面
充電器の中で、向きが常に入れ替わる交流の電気を一方向に整える部品(整流ダイオード)に使われています。
リモコンの先端で赤外線信号を飛ばすLED(発光ダイオード)も、この接合に電気を流すことで光を生み出しています。
つまり ひとことで
電子が余る半導体と空席が余る半導体を貼り合わせると境目に何もない帯ができ、電気が一方向にしか流れない性質が生まれます。