定義
トランジスタは、電気の流れを1秒間に数十億回というスピードでオン・オフしたり、ごく弱い電気信号を大きく増やしたりする、中心的な半導体部品です。現代のコンピュータやスマートフォンの頭脳をつくる、いちばん基本的なレンガの役割をしています。
まばたきよりも速く開け閉めする、電気の蛇口
指で蛇口のハンドルをちょっと回すと、太い水が勢いよく出たり、ぴたっと止まったりします。トランジスタもまったく同じ仕事をしますが、指のかわりに電気で動きます。
蛇口に水が入る管、出ていく管、調節ハンドルがあるように、トランジスタにも3本の足があります。制御用の足にとても弱い電気信号を送ると、残り2本の足のあいだに大きな電流が流れたり、止まったりします。物理的に動く部品がまったくないので、1秒間に数十億回もオン・オフできます。
こうして電気が通る状態を1、通らない状態を0と決めると、コンピュータの基本言語である2進法の計算ができあがります。コンピュータのチップの中には、爪ほどの大きさに、こうした電気で動く超高速スイッチが数百億個もぎっしり詰まっています。
小さな声を力強く大きくする魔法
トランジスタはスイッチだけでなく、音を大きくする増幅器(信号を強くする装置)としても使われます。マイクにささやいた声が、大きなコンサートホールのスピーカーから堂々と響きわたる場面を思い浮かべてみてください。
マイクが拾ったかすかな音声信号は、トランジスタの制御用の足に入ります。この足は、信号の強弱に合わせて、蛇口のハンドルを細かく揺らします。その結果、電源から供給される大きな電流が、元の音声波形の形をそのまま保ったまま、大きさだけ何倍にもなって流れ出します。
結局、増幅とはエネルギーを新しく生み出すことではありません。電源が供給する大きな力を土台にして、小さな信号に合わせて大きな電流の流れをまねるように調節するしくみなのです。
もう少し正確に言うと:半導体の中の電子の関所
もう少し正確に言うと、トランジスタは、電気をよく通す導体と通さない絶縁体の中間の性質をもつ半導体の材料でできています。シリコンに特別な不純物を混ぜて、電子の多いN型半導体と電子の足りないP型半導体をサンドイッチのように重ねてつくります。
普段は、2つの半導体の境目に、電子が越えられない見えない壁ができていて、電流は流れません。ところが、真ん中にある制御用の電極に一定の電圧をかけると、この壁が低くなったり、電子が通れる道ができたりして、電子がどっと流れ込みます。
これこそが、電子の関所をナノ単位で制御する半導体構造の核心です。今の最先端の半導体製造では、この関所を髪の毛の太さの数千分の一にあたる、数十ナノメートル前後まで小さくして、性能を高めています。なお、「3ナノプロセス」のように名前につく数字は、実際の長さとぴったり同じではありません。
よくある誤解
トランジスタは、自分でエネルギーを生み出して信号を増幅している。
トランジスタがエネルギーを無から生み出しているわけではありません。外部の電源(電池やコンセント)が供給する大きな電流を、入力信号の形に合わせて開け閉めしながらコントロールする、調節装置です。
日常で出会う場面
スマートフォンの頭脳であるモバイルプロセッサの中では、数百億個のトランジスタが0と1を超高速で計算しています。
ギターアンプやオーディオのスピーカーが楽器の音を力強く大きくするときに、トランジスタの増幅機能が使われています。
つまり ひとことで
トランジスタは、電気をとても速くオン・オフするスイッチであり、小さな信号で大きな電流を調節できる、現代の電子機器の中心的な部品です。