定義
不安定な原子核が自ら放射線を出して、より安定した状態、たいていは別の原子へと変わっていく性質を放射能といいます。そして、不安定な原子の全体の数がちょうど半分に減るまでにかかる一定の時間を、半減期と呼びます。
なぜ、ある物質は自分からエネルギーを放つのでしょう?
高く危なっかしく積み上げすぎて、ちょっとした風でもすぐ崩れそうなジェンガのタワーを想像してみてください。世の中のあらゆるものをつくっている原子の中にも、中心にある原子核が重すぎたりバランスが悪かったりして、危なっかしくぐらついているものがあります。
こうした不安定な原子核はじっとしていられず、自分から小さな粒子をはじき出したり、強力な光の形をしたエネルギーを外へ放り出したりします。このとき放たれるエネルギーの波や粒を放射線と呼び、こうしたエネルギーを自ら放つことのできる能力を放射能と呼びます。
エネルギーを外へ放り出した原子は、より安定した状態、たいていは別の種類の原子に姿を変えます。新しくできた原子もまだ不安定なら、何度か崩壊を重ねてようやく安定します。ぐらぐらしていたジェンガのタワーからブロックが数本ストンと抜け落ちて、やっと低くて頑丈な安全なタワーに落ち着く仕組みとそっくりです。
半分ずつ減っていく規則正しい時間割
熱したフライパンにポップコーン用のトウモロコシ100粒を入れて炒める場面を思い浮かべてみましょう。1秒後にどの粒が先にポンとはじけるかは、だれにもわかりません。ところが、たくさんの粒が集まっていると、全体の半分の50粒がポップコーンになるまでの時間は、不思議なくらいいつも同じくらいです。
放射性の原子も、このポップコーンの粒とよく似た動きをします。ただしポップコーンは温まるほどはじけやすくなりますが、原子はどれだけ時間が経っても崩壊する確率が変わりません。特定の原子1個が何分何秒後に変身するかは予言できませんが、とてつもなく多くの原子が集まった塊で半分が崩壊するまでの時間は、数学の公式のように正確に決まっています。
このように、放射性物質の量がちょうど半分に減るまでにかかる時間を半減期と呼びます。もし半減期が10年の放射性元素が100gあれば、10年後に元の元素のまま残るのは50g、20年後には25gです。残りは消えてなくなるのではなく、別の元素に変わります。時間が2倍になったからといって0gになるわけではなく、残った量の半分ずつ規則正しく割れながら減っていきます。
もう少し正確にいうと
原子核の半減期は、物質を溶鉱炉に入れてぐつぐつ煮立てても、南極の氷の中でカチカチに凍らせても、ほとんど変わりません。原子核の内部で起こる変化は、激しい熱や高い圧力、化学反応ではほぼ変えられない固有の性質だからです。ただし、電子捕獲のように原子核のまわりの電子がかかわる一部の崩壊は、化学的な環境によってごくわずか(1%前後)変わることもあります。
科学者たちは、このようにほとんど揺らがない自然の時計を使って、はるか昔の謎を解き明かします。生き物が生きている間に体に取り込んだ放射性炭素が、死後は一定の割合で(半減期ごとに半分ずつ)減っていく性質を利用し、残りの量から逆算する放射性炭素年代測定法が代表的な技術です。
炭素なら数万年前の古代遺跡の年代まで測ることができますし、半減期がはるかに長いウランのような別の放射性元素を使えば、地球がいつ誕生したのかも突き止められます。さらに、原子力発電の燃料管理や、分厚い鉄板の内部の欠陥を調べる非破壊検査など、産業技術の幅広い場面で、自然の規則が安全に活用されています。
よくある誤解
半減期が10年の放射性物質は、20年経つと完全になくなる。
半減期が2回過ぎても0になるわけではなく、残った50%の半分である25%が残ります。0に向かって限りなく半分ずつに割れながら減っていきます。崩壊した原子も消えるのではなく、別の元素に変わって残ります。
日常で出会う場面
数千年前の古代遺跡から出土した木材や骨の年代を、炭素の半減期を使って測ります。
飛行機の翼やビルの鉄骨に細かいひびがないかを、分解せずに放射線の透過写真で点検します。
つまり ひとことで
放射能は不安定な原子がエネルギーを放って安定していく性質で、半減期はその物質が半分に減るまでの規則正しい時間です。