科学

放射性炭素年代測定

生き物が息を引き取った瞬間から、さらさらと減りはじめる体の中の「砂時計の砂粒」を数える技術です。

  • 約3分
  • 図 2点
  • 2026-10-17 検証

定義

放射性炭素年代測定とは、昔の遺物や骨に残っている放射性炭素の量を測って、その生き物がいつ死んだのかを突き止める科学的な方法です。生きている間は一定に保たれている特別な炭素が、死んだ後は一定の速さで減っていく性質を利用します。

生きている間は満たされ、死ぬと減っていく

生きている間、植物は光合成で空気中の二酸化炭素から、動物はその植物や他の動物を食べることで、体の中に炭素を取り込みます。この炭素の出発点である空気中には、ほとんどを占める普通の炭素(炭素12)と一緒に、ごくわずかな放射性炭素(炭素14)が混ざっています。生きている間は食べて排出することをたえず繰り返すので、体の中の放射性炭素の割合は、大気中の割合とほぼ同じに保たれます。

ところが、生き物が死ぬと、もう光合成も食事もしません。新しい炭素が体に入ってくる通り道が、すっかり閉じてしまうわけです。このときから、すでに体の中に入っていた炭素14は別の物質に変わりながら、一定の速さで減りはじめます。

これは、命が止まった瞬間に動きはじめる砂時計のようなものです。時間がたつほど砂粒が少しずつ減っていくので、残った砂粒の量を測るだけで、この砂時計がいつひっくり返されたのかを逆算できます。

半分に減る魔法の時間、半減期

放射性炭素が減る速さは、まわりの温度や湿度、圧力が変わってもまったく変わりません。火で燃やされても、かちかちに凍っても、放射性炭素が半分に減るまでにかかる時間は約5,730年で、いつも同じです。科学者は、ある物質の量が半分に減るまでにかかるこの時間を半減期と呼びます。

たとえば、昔の墓から掘り出した木片の中の炭素14の量が、生きている木のちょうど半分なら、その木は約5,730年前に切られたことになります。もし4分の1しか残っていなければ、半減期を2回経たことになるので、約11,460年前の遺物だとわかります。

このように炭素14は、減る速さが環境に左右されない頼れる自然の時計の役目を果たします。ただし、試料がほかの炭素で汚れると結果がずれてしまうことがあるので、試料をきれいに扱うことが大切です。

もう少し正確にいうと:なんでも測れるわけではありません

放射性炭素年代測定も万能ではありません。まず、土を焼いて作った陶器そのものや、金属でできた青銅の剣は、この方法では測れません。この方法が使えるのは、かつて生きて呼吸していた骨、木、皮、紙といった有機物だけだからです。

測れる時間にも限界があります。半減期を何度も重ねて約5万年から6万年がたつと、残っている炭素14があまりにも少なくなり、現代の技術でも正確に測るのがむずかしくなります。そのため、数千万〜数億年前の恐竜化石の年代は、化石が埋まっていた地層の上下にある火山岩を、半減期がはるかに長い別の放射性元素で測って調べます。

過去の時代ごとに、大気中の炭素の割合がわずかに違っていたことも考える必要があります。そこで科学者は、年輪がはっきりした古い木の実際の年齢と比べる較正(キャリブレーション)という作業を経て、誤差を細かく減らしています。

よくある誤解

誤解

放射性炭素年代測定で、数千万〜数億年前の恐竜化石の年代もわかる。

事実

炭素14は約5万〜6万年たつとほとんどなくなってしまうため、恐竜の化石のようにとても古いものは測れません。恐竜時代の地層は、半減期が数億〜数十億年にもなるウランやカリウムなど、別の放射性元素で測ります。

日常で出会う場面

  1. 先史時代の遺跡から出土した櫛目文土器にこびりついた食べ物のこげや炭の年代を測ります。

  2. エジプトのピラミッドで見つかった木棺や、ミイラを包んでいた亜麻布の年代を明らかにします。

つまり ひとことで

生き物が死んだ後、放射性炭素が一定の速さで半分ずつ減っていく性質(半減期)を利用して、遺物の年代を割り出す科学技術です。

作成 2026-08-01 更新 2026-10-17 検証 2026-10-17