IT·テック

RAWフォーマット

できあがった料理が入った宅配弁当ではなく、好きな味に自分で調理できる、新鮮な食材の箱です。

定義

カメラのイメージセンサーが受けとった光の元の情報を、カメラの色づくりの補正を通さずに(カメラや設定によって、圧縮しない、または可逆圧縮や劣化の少ない圧縮をかけて)そのまま収めた、写真のファイル形式です。撮影したあとでも、ホワイトバランスや露出を画質を損なわずに自由に調整できます。

できあがった料理と、新鮮な食材

シャッターを押すと、レンズを通った光がセンサーに当たります。ふだん使うJPGファイルは、カメラがこの光をほどよい色合いと明るさに自動で「調理してしまった」、いわば「できあがった料理」です。すでに味つけが済んでいるので見るぶんには楽ですが、しょっぱすぎたり薄すぎたりしても、元の味に戻すのは難しいのです。

一方、RAWファイルはまったく手を加えていない生の食材そのものです。イメージセンサーの各画素が感じとった純粋な光の信号が、調味料を一切加えないまま、きちんと並べて収められています。料理人が好みで塩を足したり火加減を変えたりするように、撮影した人が写真の雰囲気を好みに仕上げられます。

たとえば、逆光で暗く写ってしまった人物の顔も、RAWならJPGよりずっと破綻が少なく、色のゆがみもなく救い出せます。暗い影の中に隠れた光の情報が捨てられず、ファイルの中にそのまま残っているからです。

なぜプロはRAWで撮るのでしょうか

いちばんの理由は、色と明るさを表す情報量の差にあります。一般的なJPGファイルは色を256段階(8ビット)で表しますが、RAWファイルはたいてい4,096段階(12ビット)や16,384段階(14ビット)、一部の中判カメラでは65,536段階(16ビット)にまで細かく分けて記録します。そのぶん、色と明暗の階調がずっとなめらかで豊かに表現されます。

特に、光の色温度をそろえるホワイトバランスを調整するときに真価が出ます。オレンジ色の白熱灯の下で黄色っぽく写った室内の写真も、スライダーをひとつ動かすだけで、昼間の屋外で撮ったように自然に直せます。カメラ内部の色処理を通す前の純粋なデータなので、画質が崩れないのです。

また、露出が強すぎて白く飛んでしまった雲のディテールも、かなりの部分をよみがえらせられます。豊かな光の範囲を残してあるおかげで、厳しい撮影環境でも決定的な失敗を減らしてくれます。

もう少し正確に言うと: 万能ではありません

では、日常の写真はすべてRAWで撮るのがよいのでしょうか。必ずしもそうとは限りません。情報を捨てずにすべて収めておくため、ファイル容量がとても大きくなります。同じメモリーカードを使っても、JPGに比べて保存できる枚数が3、4分の1以下に減ってしまいます。

さらに、RAWファイルは完成した画像ファイルではありません。専用の現像ソフトで変換する手順を踏まないと、メッセージアプリで友だちに送ったり、SNSにそのまま投稿したりはできません。カメラはセンサーの生の数値を書きとめただけなので、画面に表示するには、コンピューターがそれを解釈して画像として描き出す必要があるからです。

結局、手早く共有したい、手軽に保管したいという目的なら、軽くてどこでも開けるJPGのほうがずっと便利です。逆に、大切な広告撮影や風景写真のように、緻密なレタッチが必要な場面では、RAWがしっかり力を発揮します。

よくある誤解

誤解

RAWで撮りさえすれば、レタッチしなくてもJPGより必ず鮮明できれいな写真になる。

事実

RAWは、カメラの色づくりの補正を通していない「生」のデータにすぎません。カメラが色をきれいに仕上げてくれたJPGと比べると、最初はむしろ色あせたように平板に見えることがあり、自分で現像・補正してはじめて優れた画質を発揮します。

日常で出会う場面

  1. 夕焼けの風景を撮るとき、暗く写った建物の影をパソコンで明るく持ち上げても、JPGよりずっと破綻が少なく、色のゆがみもなく救い出せます。ただし、持ち上げるほどノイズも一緒に増えるので、撮影の段階で露出をうまく合わせることが、やはり大切です。

  2. 室内の照明で赤くゆがんだ料理の写真を、画質を損なわずに実際の色に戻せます。

つまり ひとことで

RAWフォーマットは、センサーがとらえた光の情報を加工せずに保存した元のファイルで、幅広いレタッチができる一方、容量が大きく、変換の手順が必要です。

この概念が登場するストーリー

作成 2024-10-18 更新 2026-10-16 検証 2026-10-16