定義
光が空気や水のように異なる透明な物質の境界面を斜めに通り抜けるとき、進む向きが折れ曲がる現象です。光が通る物質の種類によって光の進む速さが変わるために起こります。
砂場に入ったタイヤのように曲がります
なめらかなアスファルトの上をまっすぐ走っていたおもちゃの車を思い浮かべてみてください。この車が、ズボズボと沈む砂場に斜めの角度で入っていくとします。先に砂場に触れたほうのタイヤは速さが落ちますが、まだアスファルトに残っている反対側のタイヤは、変わらず速く転がります。
左右のタイヤの速さが違ってくるので、車の先頭は、速さが落ちた砂場のほうへぐいっと向きを変えます。光も同じです。ひとかたまりの波として広がっていく光が新しい物質に斜めにぶつかるとき、境界面に先に触れた部分の速さが先に変わることで、進む向きが曲がります。
光は物質の電磁気的な性質によって、通り抜ける速さが変わります。真空や空気中では何にもじゃまされず最も速く進みますが、水やガラスのように原子がぎっしり詰まった物質の中に入ると、はっきり遅くなります。まさにこの速さが変わる差によって、曲がりが生まれるのです。
水の中の箸が折れて見える秘密
透明なグラスに水を注いでストローや箸を差すと、まるで真ん中でぽっきり折れたようにずれて見えます。水中に沈んだ箸の先で反射した光が水の外へ出るとき、空気との境界面で水面のほうへ傾くように曲がるからです。
私たちの目と脳は、光はいつもまっすぐ進むものだと考えています。そのため、曲がって入ってきた光の道筋を逆向きにまっすぐ延ばした位置に物があると思い込みます。その結果、水中の物は実際の深さよりも水面に近く、浮き上がった位置にあるように見えます。
澄んだ谷川の水に足を浸すと底が思ったより浅く見えるのも、水の外から泳ぐ魚を捕まえるとき、見えている位置より少し下をねらわなければならないのも、すべてこの光の曲がる現象のためです。
もう少し正確に言うと:最短時間の法則
物質ごとに光をどれだけ遅くするかを数字で表した物理量を屈折率と呼びます。真空の屈折率を1として基準にすると、空気は約1.0003、水は約1.33、ガラスは約1.5、ダイヤモンドはなんと約2.4にもなります。たとえば水の屈折率が1.33ということは、水中では光が真空より1.33倍遅く、つまり真空中の速さの約75%で進むという意味です。屈折率の数字が大きい物質ほど光の速さはより遅くなり、曲がる角度もより大きくなります。
物理学ではこれを「フェルマーの原理」という根本的な原理で説明します。海でおぼれた人を助けに行く海上の救助隊員を想像してみてください。砂浜を走る速さが水中を泳ぐ速さよりずっと速いなら、ひたすら一直線に泳いで行くより、砂浜をもう少し走ってから水に飛び込むほうが、救助にかかる時間をぐっと短くできます。
光も二つの地点のあいだを進むとき、かかる時間がいちばん短い最短時間の経路をひとりでに選んで進みます。速い空気中では長い距離を走り、遅い水中では短く進むために、境界面で進む向きを曲げるのです。私たちが使うメガネのレンズやカメラ、そして雨上がりの空にかかる虹も、すべてこの精巧な光の法則のおかげで存在しています。
よくある誤解
光が曲がるのは、物質が光を力で押したり引っぱったりするからだ。
光に特別な物理的な力がはたらくからではなく、異なる物質を通り抜けるときに光の進む速さが変わり、波面の進む向きがひとりでに曲がる現象です。
日常で出会う場面
コップに差したストローが、水面を境に折れて見えたり、太く見えたりします。
メガネやカメラのレンズが、光を一か所に集めたり広げたりして、くっきりした像を結ばせます。
夏、熱く熱せられたアスファルトの道の上に水たまりがあるように見える蜃気楼ができます。
つまり ひとことで
光が異なる物質に入るとき、速さが変わることで、移動時間を最小にするために進む向きが曲がる現象です。