定義
壁にペンキを塗るとき、一度に厚塗りするより、しっかり乾いてから薄く重ね塗りしたほうが色が長持ちしますよね。それと同じように、勉強や練習を一定の時間の間隔をあけて何回かに分けて繰り返すと、記憶がずっと長く残る心理現象です。「分散学習効果」とも呼ばれます。
一夜漬けが試験後に消えてしまう理由
試験前日に徹夜して知識を頭に詰め込めば、翌朝の試験は意外とうまく乗り切れたりします。でも、1週間もたつと頭の中が真っ白になってしまった経験は、誰にでも一度はあるはずです。よく、脳が情報を長期記憶(長い間保管しておく記憶の倉庫)に移してしっかり固める時間を得られなかったからだ、と説明されます。
レンガを積むときも、セメントを塗って少し乾くまで待ってこそ、次のレンガをしっかり載せられます。乾いてもいない湿ったセメントの上にどんどんレンガを積めば、重さに耐えられずガラガラと崩れてしまいますよね。私たちの記憶も同じです。情報を頭に入れたあと、脳がそれを整理して固める時間がどうしても必要なんです。
一気にまとめてやる一夜漬けは、セメントが乾いていない壁のようなものです。その場ではそれらしく立っているように見えても、数日たてば頭の中から跡形もなく散ってしまいます。
ちょっと忘れかけたころに復習すると、脳が働きます
さっき覚えた英単語を1分後に見直しても、簡単すぎて脳はたいして頑張りません。脳が「もうよく知っているから適当に流しても大丈夫」と勘違いしてしまうんです。ところが、1日か2日たって記憶があいまいになったころに、もう一度その単語を思い出そうとすると、頭から汗が出るくらい苦労しますよね。
多くの研究者は、まさにこの「記憶を引っぱり出す苦しい過程」が記憶を丈夫にすると考えています。楽に見直した情報よりも、苦労して思い出した情報のほうが長く残る、という実験結果がたくさんあります。ただし、間隔効果がなぜ起こるのかについては、これ以外にもさまざまな説明があります。
だから、同じ3時間勉強するにしても、1日で3時間をまとめて終わらせるより、1日1時間ずつ3日に分けて間隔をあけて勉強するほうがずっと効果的です。時間をあけるだけで、記憶が保たれる期間が大きく延びることがあります。
もう少し正確に言うと:忘却曲線と復習の間隔
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、人間の記憶が時間とともにどう消えていくのかを自ら実験しました。意味のない音節を覚えた彼の実験では、1日たっただけで半分以上を忘れてしまいました。意味があるものや、すでに知っていることとつながる内容は、これよりゆっくり忘れていきます。これを「忘却曲線」と呼びます。
でも、完全に忘れてしまう手前で、ほどよい間隔をあけて復習すると、忘れる速さがはっきり遅くなります。1回目の復習は学んだ翌日、2回目は3日後、3回目は1週間後というように、復習の間隔を少しずつ広げていく方法がよく使われます。ただし、間隔を徐々に広げるほうが一定の間隔より常に優れているかどうかは、研究によって結果が異なります。こうした方法は学界で「間隔反復(Spaced Repetition)」と呼ばれています。
間隔効果は、単語の暗記だけにとどまりません。楽器の演奏やスポーツの動作といった技能を身につけるときにも、似た効果が報告されています。ただし、効果の大きさは課題の種類や複雑さによって変わるので、さまざまな分野で似た傾向が見られる、と考えるのが正確です。
よくある誤解
復習は一度に何回もまとめて繰り返すほど効果的だ。
同じ場所で続けて何回も見ると、脳が「もう知っている」と勘違いして頑張るのをやめてしまいます。少し忘れてあいまいになったころに、頭をひねって復習したほうが、記憶が長く残りやすくなります。ただし、ちょうどよい間隔は、どれくらいの期間覚えておきたいかによって変わります。
日常で出会う場面
試験前日に徹夜で8時間の一夜漬けをするより、1週間毎日1時間ずつ分けて勉強した内容のほうが、試験のあともずっと覚えています。
単語帳で勉強するとき、間違えた単語を同じ日に何回もまとめて見るより、1日後、3日後というように日をあけて思い出したほうが、長く記憶に残ります。
つまり ひとことで
勉強したあと、少し忘れかけたころに時間をあけてもう一度取り出して復習すると、脳にいちばん長く残ります。