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サーマルグリス

凸凹な2つの石の隙間を埋める漆喰(しっくい)のように、熱いパーツと冷却板の間の微細な空気の隙間を埋めて熱を受け渡す架け橋です。

  • 約4分
  • 図 1点
  • 2026-10-12 検証

定義

サーマルグリスは、パソコンのCPUやグラフィックボード(GPU)のように高熱を発するパーツと、熱を冷ます冷却装置(クーラー)の間に塗る粘り気のあるペースト状の物質です。金属表面の目に見えない微細な空気の隙間をぴったりと埋め、熱をスムーズに逃がす手助けをします。

ツルツルに見える金属も、顕微鏡で見ると凸凹だらけです

買ったばかりの鍋の底を触ると、とてもなめらかに感じられます。しかし、電子顕微鏡で拡大してみると、深い谷や尖った峰が連なる山脈のように凸凹しています。パソコンの心臓部であるCPUの表面や、熱を奪う金属製の冷却板(ヒートシンク)も、見た目とは違って表面が非常にざらついています。

この2つの金属をそのまま重ね合わせると、実際に触れ合う面積よりも触れ合わない隙間のほうがはるかに多くなってしまいます。その隙間には、どうしても空気が閉じ込められてしまいます。ところが、空気は熱をほとんど伝えないため断熱材のような役割を果たしてしまいます。熱が冷却板へと逃げられず、パーツ内部に熱がこもってしまうのはこれが原因です。

サーマルグリスは、まさにこの空気の隙間を追い出すために塗るものです。歯磨き粉のようにねっとりとしたペースト状なので、金属表面の微細な谷間に入り込んで隙間を余すところなく埋めてくれます。熱が滞ることなくスムーズに伝わるように、熱伝導のバイパス(通り道)を作ってくれるのです。

たっぷり塗れば良いというわけではありません

何かを塗るときは、多ければ多いほど良いと思いがちです。しかし、サーマルグリスの場合はそうとも限りません。グリス自体の熱を伝える能力(熱伝導率)は、銅やアルミニウムなどの純粋な金属よりもずっと劣ります。あくまで、熱をほとんど伝えない空気と比べれば数十倍から数百倍マシだというだけなのです。

グリスを塗りすぎても、クーラーを固定するときに余分な量が横へ押し出されるため、冷却効果に大きな差が出ないことが多く、むしろ基板にあふれて汚れる原因になります。逆に少なすぎると、接触面全体を覆いきれず空気の隙間が残ってしまいます。最も理想的なのは、2つの金属の高い峰同士が直接触れ合い、くぼんだ谷間だけが薄く埋まっている状態です。

そのため組み立てのエキスパートなどは、米粒や小豆ほどの大きさをちょこんと絞り出して乗せます。その上にクーラーを乗せてネジでしっかり固定すると、その圧力によってグリスが紙1枚よりも薄く広がり、ムラなく均一に行き渡るのです。

時間が経つと乾いて固まり、役目を果たせなくなります

パソコンを数年間使っていると、ファンがものすごい音を立てて回り、動作がカクつくことがあります。これは、熱を冷ましきれずにパーツが自ら性能を落として故障を防ぐ現象(サーマルスロットリング)が起きているサインです。ホコリを掃除しても温度が下がらない場合、サーマルグリスの劣化が疑われます。

サーマルグリスの中には、熱をよく伝える微細なセラミックや金属の粉末と、それらをペースト状に保つオイル成分が含まれています。パソコンの加熱と冷却が長期間繰り返されると、パーツの熱膨張と収縮によってグリスが外側へ少しずつ押し出されたり(ポンプアウト現象)、長時間の高温によってオイル成分が抜けて乾いてしまったりします。硬く固まってしまったグリスは、干上がった田んぼのようにひび割れ、再び空気の隙間を作ってしまいます。

正確には、グリスが押し出されてできた空洞や、乾燥による微細な亀裂が、熱を遮る断熱壁になってしまうのです。そのため、数年使ったパソコンは固まった古いグリスをアルコールできれいに拭き取り、新しいサーマルグリスを塗り直すだけで、CPUの温度が劇的に下がることがあります。

よくある誤解

誤解

サーマルグリスは、とにかく分厚くたっぷり塗るほどよく冷える。

事実

サーマルグリスの熱伝導率は、金属よりもはるかに低いです。多すぎてもクーラー固定時にほとんどが横へ押し出されて冷却効果はほぼ変わらず、少なすぎると空気の隙間が残ってしまいます。接触面の隙間をきっちり埋めつつ、薄く均一に広げることが最も重要です。

日常で出会う場面

  1. 自作した高性能ゲーミングPCのCPUの上に、米粒ほどグリスを乗せてクーラーを取り付ける。

  2. 3年以上使って熱暴走しやすくなったノートPCの、固まった古いグリスを拭き取って塗り直し、温度を下げる。

つまり ひとことで

サーマルグリスは、CPUとクーラーの間にある微細な空気の隙間を埋め、熱をスムーズに逃がすための熱伝導物質です。

作成 2024-12-21 更新 2026-10-12 検証 2026-10-12