定義
床にフラフープを2つ、少し重ねて置くと、重なり合う部分ができます。ベン図とは、このようにいくつかのグループや概念の関係を、重なった円の形で一目で見せてくれる視覚的な道具です。いくつかの対象に共通する特徴は何か、それぞれだけが持つ個性は何か、を整理するときに使われます。
フラフープ遊びで分かる分類
床に赤いフラフープと青いフラフープを置くところを想像してみましょう。2つの輪を少し重ねて置くと、床には3つのエリアができます。
左には赤いフラフープにだけ属する場所、右には青いフラフープにだけ属する場所ができます。そして真ん中には、2つの輪が重なり合う特別な場所ができますね。
ここに果物を分類して入れてみましょう。左に「赤い果物」、右に「甘い果物」を入れるなら、真ん中には2つの条件をどちらも満たすいちごやりんごのような果物が入ります。
このように、むずかしい言葉を使わなくても、円をいくつか描くだけで、何がどこに属するのかを直感的につかめます。考えを整理したり、ものを分類したりするとき、世界中の人がまずこの図を思い浮かべるのは、そのためです。
数学と論理のいちばんやさしい案内図
数学では、ある基準にしたがって集められたものの集まりを集合(同じ性質をもつものの集まり)と呼びます。記号や数式だらけの集合の問題でも、この図を描くと、まるで地図を見るように道がはっきり見えてきます。
2つの円が重なる真ん中の部分を共通部分(積集合)と呼び、2つの円全体を合わせた広い領域を和集合(どちらかに属するものすべて)と呼びます。
円の外側の空間は、そのグループに入れなかった残りの領域で、「補集合」になります。むずかしい計算をしなくても、領域を目で確かめるだけで、包含関係をすばやく知ることができます。
インターネットの検索窓に単語を2つ入れて検索するときも同じです。2つの単語がどちらも入っているページだけをぴたりと選び出すのは、まさにこの共通部分の領域を見つけ出す作業なのです。
もう少し正確に言うと
教科書や日常でよく描かれるこの図には、おもしろい原則がひとつ隠れています。ベン図は、実際にその対象があってもなくても、重なりうるすべての可能性を必ず全部描き入れなければならない、という点です。
たとえば「偶数」と「奇数」のように、定義上まったく重なる対象がない場合でも、いったん2つの円を重ねて描き、真ん中のスペースを「空っぽ」として扱うのが正式なやり方です。
これに対して、実際に重ならないグループは、円を最初から遠く離して描く方式があり、これを「オイラー図」と呼びます。日常生活では2つの用語を厳密に分けず、混ぜて使いますが、論理学ではかなりはっきり区別します。
ちなみに、円が4つ以上に増えると、完全な円の形ではすべての場合を重ねて描くことができなくなるため、楕円や、くねくねした豆のような形の図形を使うこともあります。
よくある誤解
円を使って集合を表した図は、すべてベン図である。
共通点がないので2つの円を最初から離して描いたり、1つの円の中にすっぽり入れて描いたりした図は、厳密にいえば「オイラー図」です。ベン図は、要素があるかどうかに関係なく、すべての重なりの領域を全部示す図です。
日常で出会う場面
映画の好みを整理するとき、「アクション映画が好きな人」と「コメディ映画が好きな人」を円で描いて、共通の好みを探します。
ショッピングサイトの検索で「夏服」と「セール品」のフィルターを同時にオンにすると、2つの条件をどちらも満たす商品だけが絞り込まれます。これも同じ原理です。
つまり ひとことで
複雑な対象どうしの関係を、重なった円で表し、共通点と違いを一目で見せてくれる視覚的な道具です。