科学

金星の逆自転

みんなが同じ向きに走るトラックの上で、一人だけ反対向きにゆっくり回っているコマのようなものです。

  • 約4分
  • 図 2点
  • 2026-10-17 検証

定義

トラックを走る陸上選手が全員同じ向きに走っているのに、一人だけ後ろを向いて逆向きに歩いている選手がいます。金星の逆自転とは、太陽系のほとんどの惑星が自転する向きと正反対に、金星が逆回りしている現象のことです。地球では太陽が東から昇って西に沈みますが、金星では太陽が西から昇って東に沈みます。

どうしてみんなと逆向きに回っているの?

太陽系の惑星は、約45億年前に、回転する一つの巨大なガスと塵の雲から生まれました。フィギュアスケートの選手がくるくる回るように、太陽も惑星も、最初はみんな同じ向き(反時計回り)に回り始めました。地球、火星、木星など、ほとんどの惑星は、北極の上から見下ろすと今も反時計回りに回っています。

ところが金星だけは、時計回りに回っています。天文学ではこれを逆向きの自転、つまり逆自転と呼びます。しかも回る速さがびっくりするほど遅いのです。地球は一周するのに24時間ですが、金星が一周自転するには、地球の時間でなんと約243日もかかります。金星が太陽のまわりを一周する公転は225日なので、自転のほうが公転より遅いことになります。

このように、一人だけ逆向きに、しかもとてもゆっくり回るという独特な性質のせいで、金星では太陽の動きが地球とまったく違って見えます。金星の表面から空を見上げたら、太陽は西の空からゆっくり昇り、東の空へ沈んでいきます。おもしろいことに、自転と公転が反対向きに重なり合うおかげで、日が昇ってからまた昇るまでの実際の1日は約117日です。自転一周(243日)より短いので、金星の1年のあいだに、日の出は約2回あることになります。

巨大な衝突か、厚い大気の力か?

科学者たちは、金星が最初から逆向きに回っていたとは考えていません。生まれたときは他の惑星と同じように普通に回っていて、そのあとに何か決定的な出来事があった可能性が高いとされています。最も有力な一つ目の説明が、原始惑星との巨大衝突です。

太陽系が生まれたばかりの混沌とした時代に、大きな天体が金星にぶつかったという仮説です。その衝撃で金星が上下にすっかりひっくり返ったか、回転の向きそのものが逆に曲げられたという説明です。そのため金星の自転軸の傾きは約177度とされ、頭と足がほとんど逆さまになったコマのような姿です。

もう一つの有力な説明は、金星の厚い大気と太陽の重力が力を合わせた結果だとする理論です。金星は、地球の大気圧の90倍を超える、重くて濃い二酸化炭素の大気を持っています。太陽の熱を受けて大気がふくらむことで生じる摩擦力と潮汐力が、何億年ものあいだ金星の自転を止め、ついには反対向きに押し出したという分析です。

もう少し正確に言うと

もう少し正確に言うと、天文学では、自転軸が177度ひっくり返っていることと、回転の向きそのものが逆であることを、物理的には同じものとして扱う場合もあります。北極が南を向くように完全にひっくり返ってしまえば、もとの向きのまま回っていても、見かけ上は反対に回っているように見えるからです。

また、金星の逆自転は、一つの原因だけで起きたというより、いくつかの物理現象が重なった結果である可能性が高いとされています。太陽に近い位置のために生じる太陽の潮汐力、惑星内部の核とマントルのあいだの摩擦、そして初期の太陽系での衝突、これらが一緒に作用したという分析が、現在では多くの支持を集めています。

天王星も、自転軸が約98度傾いてほとんど横倒しのまま回っているため、金星とともに逆自転する惑星に分類されます。金星の逆自転は、宇宙空間では、惑星が周囲の環境や他の天体との相互作用によって自分の動きを劇的に変えうることを示す、最も代表的な証拠です。

よくある誤解

誤解

金星は生まれたときから、他の惑星とは反対向きに回って生まれてきた。

事実

太陽系の惑星は同じ円盤から生まれたので、初期にはおおむね同じ向きに回っていたと見る意見が多いです。巨大な天体の衝突や、厚い大気と太陽の潮汐力の影響で、回転軸がひっくり返ったり向きが変わったりしたと推定されています。

日常で出会う場面

  1. 金星では、太陽が西から昇って東に沈みます。

  2. 金星の自転周期(243日)は公転周期(225日)より長いです。ただし自転が逆向きなので、日が昇ってからまた昇るまでの実際の1日は約117日で、金星の1年のあいだに日の出は約2回あります。

つまり ひとことで

金星は、太陽系のほとんどの惑星とは違って時計回りに逆向きに自転していて、巨大衝突や大気の潮汐力でひっくり返ったと推定されています。

作成 2026-04-03 更新 2026-10-17 検証 2026-10-17