科学

ジャイアント・インパクト説

2つの粘土のかたまりが斜めにぶつかって、大きいほうは地球に、はじけ飛んだ破片が集まって月になった、宇宙規模の出来事です。

  • 約3分
  • 図 1点
  • 2026-10-16 検証

定義

約45億年前、できたばかりの地球に火星ほどの大きさの天体がぶつかり、飛び散った岩石の破片が集まって今の月になった、という科学の理論です。現在、月の誕生を説明する最も有力な仮説とされています。

宇宙で起きた巨大衝突

太陽系ができたばかりの大昔、惑星の候補になる天体がたくさん、入り乱れて軌道を回っていました。約45億年前、生まれたての地球の軌道に、火星ほどの大きさの巨大な天体が近づいてきました。科学者はこの仮想の天体を、ギリシャ神話で月の女神セレネの母の名にちなんで「テイア(Theia)」と呼んでいます。

テイアはものすごい速さで地球に向かって飛んできて、斜めにぶつかりました。このとき生まれた衝突のエネルギーは想像を超えるほど大きく、テイアは粉々になり、生まれたての地球の表面もマグマの海になるほど溶けてしまいました。

衝突ではじき出された大量の岩石の破片と蒸発したガスは、地球のまわりに巨大な円盤状のリングをつくりました。土星の輪のように地球を回っていた破片は、おたがいの重力でどんどん集まりはじめ、ついに今夜空を照らしている月として生まれ変わったのです。

月の謎を解くヒント

アポロ宇宙船が月の岩石を持ち帰るまで、月がどうやってできたのかは謎でした。通りがかった月を地球が重力でつかまえたという捕獲説や、地球が速く回りすぎて一部がちぎれ飛んだという分裂説は、物理の計算と合わなかったのです。

ところが、月から持ち帰った岩石を精密に分析すると、地球の岩石と「酸素同位体の比率」が双子のようにほぼ同じでした。酸素同位体の比率は、太陽系の天体ごとにちがう指紋のような目印で、月と地球がとても近い材料からできたことを示しています。ただ、基本的な衝突モデルでは月は主にテイアの物質でできるはずなので、ここまで似ている理由は、今も研究が続く宿題です。

あわせて、月には重い鉄でできた中心の核がほとんどないこともわかりました。ジャイアント・インパクト説は、この点をうまく説明します。衝突のとき、重い鉄の成分は沈んで地球の核と合体し、外側の軽い岩石の層の破片だけがはじき出されて月になったからです。

もう少し正確にいうと:奇跡のような角度と速さ

もしテイアが地球に真正面からぶつかっていたら、ほとんどが地球と一体になってしまい、月をつくるほどの破片は軌道に上がらなかったでしょう。逆に、ほんの少しかすめただけなら、破片は宇宙の遠くへ飛び去り、月はできなかったはずです。テイアが約45度の角度で地球に斜めにぶつかったから、破片は地球の軌道にとどまることができました。

さらに驚くのは、できあがるまでの速さです。破片が集まって月になるまでは、宇宙の時間でいえば一瞬にすぎない数か月から数百年ほどかかったと計算されています。2022年のあるシミュレーションでは、衝突の直後わずか数時間で月のもとが生まれたかもしれない、という結果も出ました。

この途方もない衝突は、今の地球の生き物の運命も変えました。この衝突は地球の自転軸が傾いた原因の1つとされ、その後は月の重力が傾きを比較的安定して支えてくれたおかげで、四季が規則正しくくり返されると説明されています。

よくある誤解

誤解

地球と月は、太陽系ができたときから、はじめからそれぞれ独立した2つの惑星として並んで生まれた。

事実

月の岩石の成分や内部構造を調べると、独立して生まれたとは考えにくいのです。月は、生まれたての地球とほかの天体がぶつかり、外側の岩石物質が噴き出して集まった結果だと説明されます。

日常で出会う場面

  1. アポロの宇宙飛行士が月面で採ってきた月の石は、酸素同位体の比率が地球の岩石とほぼ同じです。

  2. 鉄の核が大きい地球と、反対に鉄の核がとても小さい月。この内部構造のちがいが、衝突のあとだとされています。

つまり ひとことで

生まれたての地球と火星ほどの天体が斜めにぶつかり、はじけ飛んだ破片が集まって、今の月になりました。

作成 2024-08-24 更新 2026-10-16 検証 2026-10-16