定義
原子の中心には、陽子と中性子が集まってできた原子核があります。元素の種類を決めるのは陽子の数ですが、同じ元素であっても中性子の数が異なる場合があります。このように、同じ元素でありながら中性子の数が違うため、重さだけが異なる原子同士を「同位体(アイソトープ)」と呼びます。
原子の名札は陽子が握っています
原子の中心には、原子核というごく小さな粒があります。この粒は、陽子と中性子が互いにしっかり結びついてできています。
元素の名前を決めるのは陽子の数です。陽子が1個なら水素、6個なら炭素、8個なら酸素と決まっています。この陽子の数が、周期表での席順(原子番号)でもあります。
一方、中性子は名札決めには口を出しません。電気を帯びていないため、ほかの原子とどのように結びつくかにはほとんど関与せず、原子に重さだけを付け足す役割を果たしています。
そのため、陽子の数は同じなのに中性子の数だけが違う原子が生まれます。水素だけでも、中性子がないもの、1個あるもの、2個あるものがあります。これらがお互いに同位体の関係です。
性格はそっくりなのに体重が違います
原子がほかの原子とどのように手を結ぶかは、外側を回る電子が決めています。電子の数は陽子の数と同じになるため、同位体同士は電子の並び順(配置)がまったく同じです。
そのため、化学的な性質は驚くほどよく似ています。重い酸素でできた水も、軽い酸素でできた水もやはり水であり、凍ったり沸騰したりする性質も大きくは変わりません。
違いが現れるのは重さです。重い同位体はほんの少し動きが鈍く、蒸発したり広がったりするスピードがごくわずかに遅くなります。この差を利用すれば、混ざり合っている同位体を重さごとに分けることもできます。
この小さな違いは、思いのほか役に立ちます。例えば、氷河の氷の中に閉じ込められた酸素同位体の割合を測ると、その氷ができた太古の気温を推測することができるのです。
もう少し正確に言うと:不安定な兄弟もいます
もう少し正確に言うと、同位体のすべてがおとなしいわけではありません。陽子と中性子のバランスが良いとき、原子核は安定して形を保ちます。
しかし、中性子が多すぎたり少なすぎたりすると、原子核が不安定になります。このような核は時間が経つと、小さな粒子や光を外へ放出して、より安定した状態へと変わっていきます。このとき外へ飛び出すものこそが放射線です。
自然に姿を変える性質を持つ同位体を「放射性同位体(ラジオアイソトープ)」と呼びます。全体の半分が別の原子に変わるまでにかかる時間を「半減期」といい、一瞬で崩壊するものから数十億年以上かかるものまでさまざまです。
この規則正しい変化は、自然が残した時計のような役割を果たします。木片や貝殻に残された炭素同位体の量を測ることで、それがどれくらい昔のものかを割り出すことができます。なお、自然界にありふれている同位体のほとんどは安定なタイプです。
よくある誤解
同位体はどれも放射線を放つ危険な物質である。
自然界に存在する同位体の大部分は安定しており、放射線を出しません。私たちが飲む水や呼吸する空気の中にも、重さの異なる同位体がごく普通に混ざり合っています。
中性子の数が違えば、別の元素になる。
元素の種類を分ける基準は陽子の数です。中性子の数が違っていても、陽子の数が同じであれば周期表で同じ席を占める同じ元素です。
日常で出会う場面
木片や貝殻に残る炭素同位体の割合を測定し、遺跡や遺物の年代を割り出す放射性炭素年代測定
氷河から掘り出したアイスコアに含まれる酸素同位体の比率を調べ、過去数万年の気候変動を復元する研究
つまり ひとことで
陽子の数が同じなので同じ元素でありながら、中性子の数が異なるために重さだけが違う原子のこと。その一部は不安定で、放射線を出して別の原子へと変化します。