定義
値札が0円になった瞬間、頭の中の損得計算が「無料」のほうへ大きく傾き、その商品を実際以上に魅力的に感じてしまう心理現象です。少しでも値段がついているときと違い、0円になると損をする心配がまったくないと思い込むために起こります。
10円引きと無料は、まったく別物です
街角で200円のペットボトルの水が100円で売られていたら、まず「喉が渇いているかな?」と考えますよね。ところが100円の水が「無料」で配られていたら、必要がなくてもとりあえず列に並んでもらってしまいます。同じ100円分安くなっているのに、私たちの反応はまるで違います。
人は、値段がたった1円でもついていれば、支出による損と得られる得を天秤にかけます。ところが値段が「0」になった瞬間、頭の中の損得の天秤が無料のほうへ大きく傾きます。何も払わないのだから失うものはないという、強い安心感が働くからです。
行動経済学者ダン・アリエリーの研究チームが行ったチョコレートの実験が、これをよく示しています。高級チョコを15セント、ふつうのチョコを1セントで売ったときは、73%が高級チョコを選びました。ところが両方を1セントずつ値下げして14セントと「0セント(無料)」にすると、価格差は変わらないのに、69%が無料のチョコを手に取ったのです。
送料500円を惜しんで1,000円余計に使います
ネットショッピングで、カートに入れた商品が2,700円だったとします。そこへ送料300円がかかるという表示が出ると、なんだか大きな損をした気分になりますよね。結局「3,000円以上で送料無料」の条件を満たそうとして、今すぐ必要でもない1,000円の靴下セットを追加で買ってしまいがちです。
落ち着いて計算すると、300円を節約するために1,000円多く使ったわけですから、700円の損です。それでも心の中では、送料という費用を「0円」にできた事実にばかり目が向き、得をしたと錯覚してしまいます。企業はこの心理を利用して、お客さんにより大きな金額を支払わせるように誘導しています。
「1つ買うともう1つ無料(1+1)」やおまけ付きキャンペーンも同じ原理です。半額セールよりもおまけ付きという無料の表現のほうが魅力的に感じられることも多いのです。いらないものをおまけでもらった瞬間、私たちは合理的な消費者ではなく、コレクターになってしまいます。
もう少し正確に言うと:無料に隠れたコスト
経済学的に見ると、この世に完全な無料は存在しません。お金を払わない代わりに、私たちは時間や個人情報、あるいは他の有益な選択を諦めるという機会費用を払っています。0円という値札の裏には、目に見えない本当のコストが隠れているわけです。
無料のコーヒーを1杯もらうために、炎天下で1時間も列に並ぶ行動が代表的です。コーヒー代500円は節約できましたが、1時間という貴重な時間と体力をそっくり支払っています。もしその1時間を休憩や別の用事に使っていたら、500円よりずっと価値が大きかったはずです。
無料のスマホアプリを使うときも、位置情報や興味関心のデータを渡し、たくさんの広告を見ています。結局、0円という数字に惑わされないためには、「自分はお金の代わりに何を支払っているのか」をいつも冷静に考えることが大切です。
よくある誤解
無料効果は、単に値段が安いから起こる普通の値引き反応だ。
100円が50円になるときと、50円が0円になるときでは、人の心理はまったく違います。価格が0円になった瞬間、損をする恐怖が消え、好みが無料のほうへ急激に偏ります。
日常で出会う場面
送料無料の基準額に届かせるために、必要のないものをカートに追加してしまう行動
販促イベントで配られる100円ほどの無料ボールペンをもらおうと、長い列に並んで20分も待つ姿
つまり ひとことで
価格が0円になると、人は損をする心配がないと感じて、無料のほうへ選択が大きく偏ります。