定義
帯域幅スロットリング(Bandwidth Throttling)とは、インターネットサービスプロバイダ(通信会社)やサーバー管理者が、ネットワークの混雑を防いだりプランの利用条件を守らせたりするために、通信速度を意図的に引き下げる技術です。蛇口を絞って水の量を減らすように、一度に通れるデータの量を強制的に制限します。
なぜ急にネットが遅くなるの?
マンション全体の部屋で一斉に水を使い始めると、水圧が下がってどの部屋もお風呂に困ってしまいますよね。インターネットの世界もこれとまったく同じです。データが行き交う通り道である「帯域幅(通信回線の道幅)」は無限ではないため、一部のユーザーが大量に独占してしまうと、同じ回線を使っている周りの人の通信速度が一気に落ちてしまいます。
スマホの無制限プランや大容量プランを使っていて、基本データ量を使い切ると「最大3Mbps(あるいは128kbpsなど)で通信可能」という案内を見たことがあるのではないでしょうか。この状態になると、高画質動画の読み込みが止まったり、ダウンロードに時間がかかったりしますよね。
これはスマホが故障したのではなく、通信会社が流れるデータのスピードをわざと絞っているからです。このように、ネットワークの安定稼働や契約プランの条件に基づき、通信会社が意図的に通信速度を制限する技術を「帯域幅スロットリング(帯域制限)」と呼びます。
いつ、どんな目的で速度を落とすの?
帯域幅スロットリングが使われる一番の理由は、すべてのユーザーが公平にインターネットを使えるようにするためです。通勤ラッシュや夜のリラックスタイムのように大勢が同時に接続するとき、一部の大容量ダウンローダーが回線を独占しないよう「交通整理」をしてくれるのです。
また、サーバーを攻撃してパンクさせるDDoS(分散サービス不能)攻撃を受ける際にも、スロットリングは盾の役割を果たします。異常な量のアクセスを検知してその通信ルートのバルブを絞れば、サーバーダウンのリスクを減らせます。ただし、無数の端末から分散して押し寄せる大規模な攻撃は、これだけで防ぐのは困難です。
とはいえ、ユーザー側からすると不便に感じることも少なくありません。大容量のファイル共有ソフトを使ったり高画質動画を長時間見たりしているときに急に速度が落ちるのは、通信会社のシステムが特定の通信パターンを検知して、自動的にデータの蛇口を絞ったからという場合もあるのです。
もう少し詳しく — 回線管理と「ネットワーク中立性」の議論
単に利用者が集中して自然と遅くなる「回線の混雑」と、帯域幅スロットリングは明確に異なります。回線の混雑は「道路に車が増えて自然渋滞が起きる状態」ですが、スロットリングは管理者が人為的に車線を規制してスピードを落とさせる行為です。
技術的には、ルーターなどのネットワーク機器がデータの種類やパケット通信量をリアルタイムで監視し、あらかじめ決めたルールに沿って通信速度の上限を下げるソフトウェア制御によって行われます。
しかし、この強力なコントロール力には懸念もあります。通信会社が自社提携の動画配信サービスは高速で通し、競合他社のサービスだけこっそり速度を落とすような不公平が生まれる恐れがあるからです。すべてのネット通信を差別なく平等に扱うべきだという「ネットワーク中立性」の原則と、このスロットリング技術がしばしば衝突するのはそのためです。
よくある誤解
ネットが遅いのは、常にWi-Fiルーターの故障や電波状況の悪さのせいだ。
契約プランの容量超過や通信会社の混雑緩和ポリシーに基づき、ソフトウェアによって意図的に速度が制限されているケース(スロットリング)も多いのです。
日常で出会う場面
スマホの月間データ容量を使い切った後、最大1Mbpsや3Mbpsなどに制限されて動画が途切れがちになる状態
フリーWi-Fiや社内ネットワークで、特定の端末が帯域を独占しないよう1台あたりの最大通信速度を制限する設定
つまり ひとことで
ネットワークのパンクを防ぎ回線を公平に使うために、通信会社やサーバーが意図的に通信速度を落とす制御技術です。