定義
季節の変化やエサ不足にあわせて、繁殖地(ヒナを産み育てる場所)と越冬地(冬を越す場所)のあいだを、短くて数十キロ、長ければ数万キロも定期的に行き来する鳥たちの大規模な移動のことです。太陽の位置や地球の磁場を感じ取る優れた感覚を頼りに、毎年正確な空の道を見つけ出します。
なぜ大変な長旅に出るのでしょう?
夏のバカンスで涼しい避暑地へ出かけたり、寒い冬に暖かい南の島へ旅行したりする姿を思い浮かべてみてください。渡り鳥も同じように、いちばん暮らしやすい環境を求めて何千キロもの空の道を飛んでいく、季節の旅人です。
多くの人は、鳥は単に寒さを避けるために移動すると思っています。でも本当の最大の理由は、ヒナを育てるエサをたっぷり確保するためです。春から夏の北の地域は日が長く、昆虫や種といった食べ物がとても豊富になります。
反対に冬が近づくと、北の大地は凍りついてエサが手に入らなくなります。そこで、暖かくて食べ物が残っている南へ飛んで冬を乗り切るのです。つまり移動は過酷な旅ですが、種の生き残る確率を最大限に高める自然のすぐれた生存戦略なのです。
地図もスマホもなしで道を見つける秘密
大海原や見知らぬ大陸を越えながら、渡り鳥はどうして迷わずに目的地へたどり着けるのでしょうか。渡り鳥の体の中には、最新のカーナビよりも優れた複合ナビゲーションシステムが備わっています。
昼間は空に浮かぶ太陽の位置を見て方角を決めます。夜に移動する渡り鳥は、夜空の星が回転する中心(北極星のあたり)を見つけて北を見きわめます。さらに、海岸線や大きな山脈といった地形の見た目も覚えて、道しるべに使っています。
いちばん驚くのは、目に見えない地球の力を読み取る能力です。渡り鳥は地球の磁場を感じ取る感覚を使い、磁力線が地面となす傾きを読んで、極の方向と赤道の方向を区別します。この感覚は目の中の光を感じるタンパク質と関係があるという研究が多くありますが、正確なしくみはまだ研究中です。
もう少し正確にいうと:エネルギーを節約するコツと生態系
長い距離を飛ぶには、たくさんの体力が必要です。そのため渡り鳥は、移動の時期が来る前からふだんよりずっと多く食べて脂肪をたくわえ、種によっては体重がほぼ2倍にもなります。この脂肪が、飛行機でいう燃料の役目を果たすわけです。
もう少し正確にいうと、ガンやトキのように翼の長い鳥たちは、群れでV字の編隊を組んで飛びます。前を飛ぶ鳥の翼の先にできる空気の渦が、後ろの鳥に空中で浮く力を足してくれるからです。こうして飛ぶと、1羽で飛ぶときよりも飛行エネルギーを大きく節約できます。
最近は、都市の明るい人工照明や気候変動のせいで、渡り鳥が方向を見失ったり、移動の時期を逃したりする問題が深刻になっています。渡り鳥の移動は、単なる鳥たちの旅を超えて、地球全体の生態系が健やかにつながっていることを示す自然の大きな循環の輪なのです。
よくある誤解
渡り鳥は、ただ寒いから暖かい場所へ避難しているだけだ。
寒さそのものよりも「エサ不足」が移動を促すいちばん決定的な原因です。羽毛がびっしり生えた鳥は寒さにとても強いのですが、冬になって地面や水面が凍ると、昆虫や魚などのエサが手に入らなくなるため、南へ移動します。
日常で出会う場面
ツバメは秋になると、日本から東南アジアまで数千キロを飛んで冬を過ごします。
キョクアジサシは北極近くの繁殖地と南極の海を行き来し、1年間で地球を1周以上する距離を飛びます。
つまり ひとことで
渡り鳥の移動は、エサと繁殖のために、地球の磁場や星座をコンパスにして旅立つ、驚きの生存の旅です。