定義
ブラックホールとは、極めて狭い空間に途方もない量の物質がぎゅっと凝縮したことで、重力が極端に強くなった天体のことです。引き寄せる力が凄まじすぎるため、光を含め宇宙のあらゆるものがそこから脱出することができません。
巨大な星が極限まで縮むときに生まれます
巨大な綿あめを手でぎゅっと押し固めて、硬くて小さなビー玉1個にまとめる様子をイメージしてみてください。綿あめ全体の重さは変わらないのに、大きさだけが信じられないほど小さくなりました。
宇宙の星もこれと同じです。太陽の数十倍もの重さを持つ巨大な星がその一生を終えると、自らを支えていたエネルギーが尽き、自身の重さに耐えきれなくなって中心に向かって猛烈な勢いで崩壊していきます。これを「重力崩壊」と呼びます。
すべての物質があり得ないほど狭い1点へと圧縮されることで、その周りの時空は底なしの急な穴のように深く落ち込みます。こうして生まれる宇宙で最も極端な天体こそが、ブラックホールなのです。
二度と戻れない境界線、事象の地平面
激しい滝に向かって流れる川でボートに乗っているところを思い浮かべてみてください。ある地点までは必死にオールを漕げば上流へ戻れますが、滝の直前の断崖を越えてしまった瞬間、いくら漕いでも真っ逆さまに落ちるしかありません。
ブラックホールの周囲にも、このような後戻りのできない境界線が存在します。これを「事象の地平面(イベント・ホライズン)」と呼びます。この境界線の内側に入り込むと、脱出するために必要な速度が宇宙で最も速い光の速度を超えてしまいます。
光さえも脱出できないため、この境界線の向こう側の世界で何が起きているのか、私たちは決して見ることができず、知ることもできません。
さらに、アインシュタインの相対性理論によれば、重力が強くなるほど時間の流れは遅くなります。そのため、遠くから観察すると、地平面へと落ちていく物体はだんだん動きが遅くなり、境界線の直前でほぼ静止したように見え、やがて光が赤く薄れながら消えていくように見えます。
少し正確に言うと:宇宙の掃除機ではありません
ブラックホールと聞くと、宇宙のあらゆるものを手当たり次第に吸い込む巨大な掃除機を連想しがちです。しかし、ブラックホールは周りの物質を手当たり次第に飲み込むモンスターではありません。
少し正確に言うと、遠く離れた場所に働くブラックホールの重力は、同じ質量を持つ普通の星の重力と全く同じです。もし今すぐ私たちの太陽が、同じ質量の小さなブラックホールに変わったとしても、地球が吸い込まれることはありません。
地球は光を失って暗くなるだけで、現在回っている公転軌道をそのまま保って周り続けます。ブラックホールに極端に近づきさえしなければ、普通の恒星の周りのように安定した軌道を回り続けることができます。ただし、ブラックホールのすぐ近くでは事象の地平面の外側であっても安定した軌道が存在しないため、最終的には吸い込まれてしまいます。
つまりブラックホールは、宇宙を破壊する掃除機などではなく、ごく狭い領域に極端に重力が集中した特別な天体にすぎないのです。
よくある誤解
ブラックホールは宇宙のあらゆるものを吸い尽くす巨大な掃除機である。
ブラックホールも普通の天体と同様に、質量に比例した重力を持つだけです。十分離れた距離にいれば、他の恒星を周回する惑星のように安定して公転し続けることができます。
日常で出会う場面
天の川銀河の中心にある巨大ブラックホール「いて座A*(エースター)」
映画『インターステラー』に登場し、周囲の光を大きく歪ませていたブラックホール「ガルガンチュア」
つまり ひとことで
途方もない質量の物質が極小の空間に凝縮して生まれ、光さえも逃れられない強力な重力を持つ天体です。