定義
宇宙は想像を絶するほど超高温・超高密度の状態から始まり、膨張しながら現在の巨大な姿になったという科学的な説明です。宇宙はずっと同じ姿で静止しているのではなく、時間の経過とともに空間そのものが広がり続けていることを教えてくれます。
水玉模様の風船が膨らむように広がる空間
空気が抜けた風船にペンでいくつか点を描き、息を吹き込んで膨らませる様子を想像してみてください。風船が大きくなるにつれて、点と点の間隔がどんどん離れていきますよね。点が足を生やして自ら歩いているのではなく、風船のゴムの表面そのものが伸びているからです。
私たちの宇宙も、この風船の表面とまったく同じです。銀河が宇宙空間を自力で泳いで遠ざかっているのではなく、銀河が浮かぶ空間そのものが四方八方へと広がっています。このように膨張し続ける宇宙の歴史を解き明かしたのが、まさにビッグバン理論です。
約138億年前、宇宙は想像もつかないほど超高温・超高密度の状態にありました。いま観測できる宇宙全体が、極めて小さな領域にぎゅっと凝縮されていたのです。そこから空間が急激に広がり始めたことで、現在の宇宙の歴史が幕を開けました。
宇宙が残した生々しい痕跡と確固たる証拠
宇宙が本当にそんな超高温・超高密度の状態から広がったのだと、なぜ分かるのでしょうか? 天文学者たちが遠くの銀河を観測していたとき、驚くべき事実を発見しました。地球から遠く離れた銀河ほど、私たちからより速いスピードで遠ざかっていたのです。これはいま「ハッブル・ルメートルの法則」と呼ばれています。
映像を巻き戻すように時間を過去へと遡れば、銀河同士は過去になるほど近づき、宇宙はより小さく密集していたはずだという結論に至ります。これが膨張の第1の証拠です。
第2の決定的な証拠は、初期の宇宙が残した「光の残響」です。極めて熱かった初期宇宙の光は、空間の膨張とともに次第に冷やされ、現在では微弱な電波として宇宙全体を満たしています。これを宇宙マイクロ波背景放射(ビッグバンから約38万年後に解き放たれた光)と呼びます。かつてのアナログテレビの砂嵐(ザーというノイズ)のごく一部も、実はこの背景放射だったのです。
より正確に言えば:大爆発ではなく空間の膨張
「ビッグバン(Big Bang)」という言葉を聞くと、真っ暗な空間の真ん中で爆弾がドカンと炸裂した様子を思い浮かべがちです。しかし、より正確に言えば、ビッグバンはすでにある何もない空間の中で物質が飛び散った事件ではありません。
ビッグバンとは、宇宙のあらゆる場所で同時に空間そのものが広がった現象なのです。宇宙の外側から全体を眺められる特等席のような場所が別にあるわけではありません。一般相対性理論を使って時間を過去へ巻き戻していくと、時空そのものが始まったように見えますが、その始まりの瞬間やその前に何があったのかは、現代の科学でもまだ解明されていない問いです。
初期の宇宙はあまりにも熱く、原子核さえまとまることができませんでした。誕生直後の数分間で温度が下がり、水素やヘリウムといった最も軽い元素の原子核が作られました。それから約38万年後、さらに温度が下がって電子が原子核に捕らえられ「原子」ができると、光が空間を自由に直進できるようになりました。このときの光がまさに宇宙マイクロ波背景放射です。現在の宇宙で質量比にして水素とヘリウムが約3対1の割合で存在していることも、初期宇宙の環境が残した重要な証拠なのです。
よくある誤解
ビッグバンは、何もない宇宙空間の真ん中で巨大な爆弾が炸裂したような爆発である。
ビッグバンは既存の空間で物質が吹き飛んだのではなく、宇宙のあらゆる場所で空間そのものが広がった現象です。
日常で出会う場面
息を吹き込むと、表面にあるすべての点の間隔が同時に広がるゴム風船
オーブンの中でパン生地が膨らむとき、レーズン同士の間隔が自然と離れていく様子
つまり ひとことで
宇宙はずっと静止しているのではなく、約138億年前に超高温・超高密度の状態から始まり、空間そのものが現在も広がり続けています。