定義
星や銀河から届いた光の波長が引き伸ばされ、赤い側へずれて見える現象です。光を出す天体が私たちから遠ざかるときに起こります。遠い銀河ほど大きくずれていることが分かり、宇宙が膨張している重要な根拠になりました。
救急車が通り過ぎると音が変わるのはなぜ?
道端に立っていると、救急車がサイレンを鳴らして近づいてくるとします。近づくときの音は高くて鋭く聞こえます。ところが目の前を通り過ぎて遠ざかった瞬間、同じサイレンなのに音がすっと低くなります。
音は水の波のように広がる波です。車が近づくと、前へ進む波は詰めて押しつぶされて波長が短くなり、耳には高い音として届きます。反対に遠ざかると、後ろへ広がる波は引き伸ばされて波長が長くなり、低い音になります。
光も波なので、同じことが起こります。私たちから遠ざかる星の光は、波長が長くなった状態で届きます。目に見える光のうち波長が長い側は赤なので、光全体が赤い側へずれていきます。
このずれを赤方偏移と呼びます。サイレンが低くなるのと、同じ仕組みです。
どれだけずれたかは、どうやって測るの?
サイレンが低くなったと気づくには、もとの音を知っている必要があります。サイレンがもともと「ピーポー」と二つの音を行き来すると知っているから、それより低く聞こえれば遠ざかっているのだと見当がつきます。
星の光も同じです。星の光をプリズムで広げると虹のような帯ができます。この帯をスペクトルと呼びます。その中には、ところどころに暗い縞が現れます。水素やカルシウムのような元素が特定の波長の光を吸い込んで残した跡です。この縞が現れる位置は、実験室で前もって調べておけます。
ところが遠い銀河の光を広げてみると、縞がそろって赤い側へずれています。サイレンの二つの音がいっしょに低くなったのと同じ姿です。ずれた距離 がそのまま、遠ざかる速さを教えてくれます。
また、遠い銀河ほど縞が大きくずれていることも確かめられました。遠くにある銀河ほど速く遠ざかっている、という意味です。
もう少し正確に言うと
ここでサイレンのたとえが当てはまらなくなる場面があります。遠い銀河が赤くなるのは、銀河が道路の上を走っているからではありません。銀河と私たちのあいだの空間そのものが広がり、そこを通ってきた光の波長がいっしょに引き伸ばされた結果です。
サイレンにたとえるなら、救急車が逃げているのではなく、救急車と私のあいだの道路がぐんぐん伸びているようなものです。そのため、この赤くなる現象は宇宙論的赤方偏移と、別の名前で呼ばれます。星が実際に私たちから走って遠ざかって起こるドップラー赤方偏移とは、原因が違います。
すべての星の光が赤くなるわけでもありません。 アンドロメダ銀河のように近くにあって私たちのほうへ近づいてくる天体の光は、むしろ青い側へずれます。これを青方偏移といいます。
つまり、縞がどちらへずれたかを見れば、その天体が近づいているのか遠ざかっているのかを読み取れるのです。
よくある誤解
赤方偏移が起こると、星の光が実際に真っ赤に見える。
色が丸ごと赤く変わるわけではありません。光の波長が長くなって、スペクトルの縞が赤い側へずれるのであり、そのずれの大きさを機械で測って調べます。とても遠い銀河ではずれが大きすぎて、目に見えていた光が赤外線の側へ移ってしまうこともあります。
遠い銀河が赤く見えるのは、銀河たちが宇宙空間の中を猛スピードで逃げているからだ。
銀河が空間の中を走っているのではなく、銀河と私たちのあいだの空間が広がり、光の波長もいっしょに引き伸ばされた結果と考えられています。
日常で出会う場面
電車が踏切を通り過ぎるとき、警笛が高かったのが低くなるのも、波長が押しつぶされたあと引き伸ばされるからです。
天文学者は、銀河の縞がどれだけずれたかを測って、その銀河がどれくらい遠くにあるかを見積もります。
つまり ひとことで
遠ざかる天体の光は波長が長くなって赤い側へずれ、そのずれの大きさが宇宙の膨張を知る手がかりになります。