科学

ドップラー効果

近づいてくる救急車のサイレンは「ピーッ」と高く、遠ざかると「ウォーン」と低くなる。これは波が押し縮められたり、引き伸ばされたりするために起こる現象です。

  • 約4分
  • 図 1点
  • 2026-10-13 検証

定義

道を歩いていると、近づいてくる救急車の音が「ピーポーピーポー」と高く聞こえ、目の前を通り過ぎた瞬間に「ポーピーポーピー」と急に低くなる。そんな経験はありませんか?このように、音や光のように波を出す物体と、それを聞いたり見たりする人が近づいたり遠ざかったりすると、その人が感じる振動数(1秒間に波が振動する回数)が元の値からずれる現象を、ドップラー効果と呼びます。

なぜ近づいてくるときは音が高くなるのでしょう?

湖にぷかぷか浮かんでいるアヒルが足をバタバタさせると、同心円状の丸い波紋が四方八方に均等に広がります。波と波の間隔も、前後左右どちらも同じです。ところが、アヒルが前に泳ぎながらバタバタを続けると、波紋の形は大きく変わります。

アヒルは前に進みながら波をつくるので、前方の波紋どうしはぎゅっと詰まって押し縮められます。反対に、アヒルがすでに通り過ぎた後方の波紋は、間隔がゆったりと広がります。

音も、空気を伝わって広がる波、つまり波動(空気の振動)の一種です。救急車がサイレンを鳴らしながらこちらへ走ってくると、音の波が前方にぎっしり詰まって、私たちの耳に頻繁に届きます。1秒間に鼓膜を叩く波の回数が増えるほど、脳はそれを「より高い音」として受け取るのです。

もし救急車も聞く人も止まったままサイレンを鳴らしているなら、こうした音の変化は起きません。救急車が前へ動きながら次の波を出すと、前の波により近い場所から出すことになるため、前方の波の間隔が狭くなるのです(音そのものが速くなるわけではありません)。

遠ざかると音が低くなる理由と、光の変化

救急車が目の前をびゅんと通り過ぎて遠くへ離れていくと、まったく逆のことが起こります。救急車は音を出しながら、同時に逃げるように遠ざかっていくので、耳に届く音の波の間隔がゴムひものようにびよーんと引き伸ばされます。

波の間隔が広がると、1秒間に耳に届く波の振動数は減ります。私たちの耳は、1秒間に入ってくる振動数が少ないほど「低い音」として聞き取るため、通り過ぎた瞬間にサイレンの音がすとんと落ちるように低く変わるのです。

驚くことに、このドップラー現象は音だけでなく、目に見える光でも同じように起こります。光も波の性質を持っているので、星の光をプリズムのように分けて調べると(分光)、近づいてくる星は光の模様(スペクトル線)が波長の短い青い側へ(青方偏移)、遠ざかる星は波長の長い赤い側へ(赤方偏移)わずかにずれています。星の色が目に見えて変わるわけではありません。

警察が道路でスピード違反の車を取り締まるときに使うレーダー式のスピードガンも、この原理を使っています。車に向けて発射した電波が当たって跳ね返ってきたとき、振動数がどれだけ変わったか(高くなったか低くなったか)を測って、車の速度を割り出しているのです。

もう少し正確に言うと:宇宙膨張の秘密

もう少し正確に言うと、救急車が出しているサイレンの本当の音の高さや、星が実際に放っている光そのものの色が変わっているわけではありません。

サイレンを鳴らして走る救急車の中に座っている運転手は、音の高さの変化をまったく感じません。運転手には、最初から最後まで同じ音程で聞こえています。ドップラー効果は、音を出す物体とそれを聞く人との「相対的な動き」によって、観測者から見たときにだけ起こる現象なのです。

天文学者のエドウィン・ハッブルは、銀河までの距離を測り、先にスライファーらが測定していた銀河の赤方偏移と比べました。近くのアンドロメダ銀河のように近づいてくる例外もありますが、遠い銀河ほど赤方偏移が大きいという関係が見えてきました。

これは、遠い銀河ほど私たちから速く遠ざかっているということを意味し、宇宙が風船のように膨らんでいるという考えの中心的な根拠になりました。ただし、遠い銀河の赤方偏移は、銀河が空間の中を走ることで生じるドップラー効果というより、光が届くまでの間に空間そのものが引き伸ばされることで生じるものと説明されます。

よくある誤解

誤解

近づいてくる救急車のサイレンがだんだん大きくなる現象そのものがドップラー効果である。

事実

音が大きく聞こえるのは、距離が近づいたことによる音量の違いです。ドップラー効果は音の大きさではなく、「音の高さ(周波数)」が高くなったり低くなったりする現象です。

日常で出会う場面

  1. 電車が猛スピードで警笛を鳴らしながら通り過ぎるとき、「ファーン」という警笛の音が一瞬で低く下がります。

  2. 道路で警察が速度違反の車の速度を測るレーダー式スピードガンは、跳ね返ってきた電波のドップラー効果を利用しています。

  3. 遠い銀河の光が赤い側へずれている度合いは、宇宙が膨張しているという考えの中心的な根拠になりました(厳密には、空間が引き伸ばされることで生じる赤方偏移です)。

つまり ひとことで

波を出す物体と観測者が近づくと波が詰まって、音は高く聞こえ、光は青い側へずれます。遠ざかると波が伸びて、音は低く聞こえ、光は赤い側へずれる現象です。

作成 2024-12-31 更新 2026-10-13 検証 2026-10-13