定義
声を出したり楽器を演奏したりするときに生まれる震えが、周りの空気や水のような物質を押したり引いたりしながら遠くへ広がっていく波です。私たちの耳は、空気が揺れて伝わってくるごくわずかな圧力の変化を感じ取って、いろいろな音として聞き分けています。
ドミノのように伝わる震え
太鼓をドンと叩くと、ピンと張った太鼓の皮が前後にすばやく震えます。この震えが、皮のすぐ隣にいた空気の粒を力強く押し出します。押し出された空気の粒は、すぐ隣の別の粒をトンと突いて、自分は元の場所に戻ります。
空気の粒そのものが、話す人の口から聞く人の耳までまっすぐ飛んでいくわけではありません。一列に並んだ人たちが隣の人の肩をトントンと叩いて合図を送るように、その場で振動するエネルギーだけが順番に前へ伝わっていくのです。
こうして、空気の粒がぎゅっと集まった部分とまばらになった部分が交互にでき、四方八方へ広がっていきます。物質が波の進む方向と平行に前後へ揺れるので、科学ではこれを「縦波(平行な波)」と呼びます。
縄跳びの縄の片端を持って上下に振ると、うねりが縄を伝って反対側へ進んでいきます。このように揺れる方向と進む方向が垂直な波は「横波(垂直な波)」と呼ばれます。でも、私たちが聞く音は、空気が前後に縮んだり広がったりを繰り返す圧力の波であるところが違います。ちなみに海の波は、水の粒がその場で円を描くように回る少し特別な波で、横波と縦波の性質を両方あわせ持っています。
もう少し正確にいうと
もう少し正確にいうと、音波には、震えを次へつないでくれる飛び石の役目をする媒質(伝える物質)が必ず必要です。空気や水のような粒がまったくない宇宙空間や、真空のガラス瓶の中では、どんなに大きな爆発が起きても、まったく音は広がりません。
音は、周りの物質の状態によって進む速さが大きく変わります。粒がお互いをつかまずに自由に飛び回っている空気中では、音は1秒間に約340メートル進みますが、粒どうしがずっと強く引き合っている水中では、1秒間に約1,500メートルもの速さで進みます。
鉄のパイプや頑丈な線路のような固体の中では、1秒間に5,000メートルを超える猛スピードで広がっていきます。物質をつくる粒どうしがしっかりつかみ合っていて、押すとすぐに弾んで戻ってくるほど、隣の粒に振動を渡す速さが上がるからです。物質が重いからではなく、硬いから速いのです。
昔の西部劇には、遠くから近づいてくる列車に気づこうと、主人公が線路に耳をぴったりつける場面があります。空気を伝ってくる汽笛よりも、硬い線路を伝ってあっという間に届く速い固体の振動を先にとらえようとする、科学的な知恵だったのです。
音の高さと大きさの秘密
蚊の羽音はなぜ細くとがって聞こえ、大きな太鼓の音はなぜ迫力のある低い音に聞こえるのでしょうか。その秘密は、空気の粒が1秒間にどれだけ速くぶるぶると震えるかを表す振動数(周波数)に隠れています。空気が1秒間にたくさん震えるほど高い音になり、ゆっくり震えるほど重みのある低い音に聞こえます。
人間の耳が聞き取れるのは、ふつう1秒間に20回から2万回ほど震える音だけです。2万回を超えて、人間にはとても聞き取れないほど速く震える音を「超音波」と呼びます。コウモリやイルカは、この超音波を周りに向けて放ち、ぶつかって返ってくるこだまを聞いて、目の前のえさや障害物を見つけ出します。
音の大きさは、空気の粒がどれだけ力強く大きな幅で揺れるかで決まります。振動の幅が大きくなるほど、耳の鼓膜を強く叩くので、私たちは「音が大きい」と感じます。
静かにささやくときは、空気の粒がその場でそよそよと弱く揺れます。反対に大声で叫ぶときは、空気の粒が大きな振幅で激しく行き来して、強いエネルギーを周りへ送り出します。
よくある誤解
音が聞こえるのは、話す人の口から出た空気の粒が耳まで飛んでくるからだ。
空気の粒はその場で前後に揺れているだけです。前へ進んでいくのは粒そのものではなく、粒が伝える「振動のエネルギー」です。
日常で出会う場面
スピーカーの前にろうそくを置くと、音楽の音が大きくなったときに炎が前後に揺れます。
水中では音が空気中より4倍以上速く広がるので、ダイバーは音がどちらから来るのか見当をつけにくくなります。
稲妻が光ってから数秒後に雷鳴が聞こえるのは、音の伝わる速さが光より遅いからです。
つまり ひとことで
音波は、物質の粒がその場で震えながら、隣へエネルギーを伝えていく波です。