定義
超音波とは、人間が聞き取れる範囲を超えて非常に細かく振動する音のことです。一般に人間が聞き取れる限界とされる2万ヘルツ(1秒間に2万回の振動)より高い周波数を持つ音波を指します。耳で聞くことはできませんが、物質を通り抜けたり、ぶつかって跳ね返ってきたりする性質に優れており、病院の検査や深海探査など、さまざまな場面で「目」の代わりに使われています。
多くのコウモリが真っ暗な夜でも障害物にぶつからない秘密
真っ暗な部屋で目を閉じ、手を叩いたと想像してみてください。壁に反射して返ってくる音の響きだけで壁の位置を言い当てられるでしょうか。コウモリやイルカが夜空や深い海の中を自由自在に飛び回り、泳ぎ回れる秘密がまさにこれです。
昆虫を食べるコウモリなど多くのコウモリは、口や鼻から人の耳には聞こえない超高音を発射しています(※すべてのコウモリが反響定位を行うわけではありません)。この音が飛んでいる蛾や木にぶつかって跳ね返ってくると、両耳でその反射波を受け止めます。音が戻ってくるまでの時間から距離を、左右の耳に届く音のわずかなズレから方角を割り出すのです。これによって、小さな昆虫でも正確に捕まえることができます。
このように音を放って物体の位置を探る仕組みを反響定位(エコーロケーション)と呼びます。人の耳には静まり返った夜に見えても、コウモリたちの世界では非常に強力な音のシグナルがひっきりなしに飛び交っているのです。
病院ではどうやってお腹の中の赤ちゃんを見るの?
産婦人科に行くと、ひんやりとしたゼリーを塗り、丸みのある器具をお腹の上で滑らせる検査を目にします。このとき、器具の内部ではごく小さな振動板が1秒間に数百万回も細かく震え、体内へ向けて超音波を送り出しています。
私たちの体は、皮膚、脂肪、筋肉、骨といった密度の異なる組織でできています。音は性質が異なる組織の境目にぶつかるたびに、一部はそのまま通り抜け、一部は鏡のように反射して戻ってきます。検査装置は、跳ね返ってきた信号の強さと戻るまでにかかった時間を集めて、コンピューター上で点描画のように画面へ映像を描き出します。
超音波はレントゲン検査と違って放射線ではなく「音の振動」を利用します。そのため胎児の検査にも広く用いられ、医師の判断のもとで必要に応じて安全に活用されています。骨のような硬い組織を通り抜けるのは苦手ですが、柔らかい内臓や血液の流れをリアルタイムの映像で観察するのに最も適したツールなのです。
もう少し詳しく:なぜあえて超音波を使うの?
私たちが普段の会話で使う普通の音では、なぜ体内を透かして見たり精密な探査をしたりできないのでしょうか。音は波(波動)であるため、障害物にぶつかるとその背後に回り込んで広がる性質(回折)を持っています。低い音は波長が長いため、小さな障害物を回り込んで通り過ぎてしまうのです。
一方、超音波は1秒間にものすごい回数振動するため、波長が非常に短くなります。波長が短くなるほど、音は周りに広がらず光のように一方向へまっすぐ進む性質(直進性)が強くなります。小さな物体に当たっても回り込まず、くっきりとぶつかって跳ね返るため、ごく細かな様子まで捉えることができるのです。
超音波は物の探知だけでなく、洗浄ツールとしても活躍しますが、これは直進性とはまた別の原理です。眼鏡屋さんにある洗浄機のように、液体の中に超音波を送り込むと、気圧が急激に上下して微細な泡が発生しては弾けます(キャビテーション現象)。このときに生じる衝撃波が、すき間の汚れを強力に剥ぎ落としてくれるのです。
よくある誤解
超音波は電波や放射線の一種である。
超音波は電波や放射線ではなく、空気や物質が震えることで伝わる純粋な「音(音波)」です。ただ人間の耳で聞き取れる周波数よりも高すぎるため、耳に聞こえないだけなのです。
日常で出会う場面
産婦人科でお腹の赤ちゃんの心拍や動きを確認するエコー検査装置(超音波診断装置)
船が魚の群れや海底の地形を精密に捉える魚群探知機や高周波ソナー
メガネ店や時計店で細かなすき間の汚れを落とす超音波洗浄器
つまり ひとことで
人の耳には聞こえないほど高速で振動し、まっすぐ進んで跳ね返ってくる性質を利用して物体の内部や姿を映し出す「見えない音」です。