定義
超大質量ブラックホールは、太陽の数十万倍から数百億倍も重い巨大なブラックホールです。天の川銀河をはじめ、大きな銀河のほとんどで中心に位置していて、周りの物質を引き寄せたり強力なエネルギーを放ったりしながら、銀河全体の形成と進化に決定的な影響を与えます。
銀河のど真ん中にいる巨大な存在
夜空の銀河の中心部を特殊な望遠鏡で詳しく観察すると、中心部の星々が、目に見えないある一点を軸にして猛烈な勢いで回っています。何もないように見えるそのど真ん中に、想像を超えるほど莫大な質量をもつ天体が潜んでいるのです。
星が寿命を迎えて崩壊するときにできる一般的なブラックホールは、太陽の数倍から数十倍ほどにすぎません。ところが超大質量ブラックホールは、太陽数百万個から数百億個を一つにまとめたほどの重さを誇ります。天の川銀河の中心にも、太陽の約400万倍の質量をもつ超大質量ブラックホール「いて座A*」が、静かに居座っています。
この巨大な質量のおかげで、周りの時空は極端に曲がり、強力な重力によって銀河中心部の星々は高速で公転しています。銀河全体を支えているのは銀河そのものと暗黒物質ですが、中心部の領域では、この巨大なブラックホールが強力な中心点の役割を果たしているわけです。
どうしてこんなに巨大になったのでしょう?
太陽ほどの星を何億個も一か所に集めるのは、宇宙でも決して簡単なことではありません。科学者たちは、初期の宇宙で巨大なガス雲が直接崩壊したか、初期にたくさんあったブラックホール同士が衝突・合体を重ねて大きくなったのではないかと考えています。
超大質量ブラックホールの周りにガスや塵が吸い込まれるときには、降着円盤と呼ばれる巨大な回転円盤ができます。このとき物質同士がぶつかり合い、摩擦熱で放つ光は、銀河全体の星の光を合わせたよりも数百倍明るくなることがあり、これをクエーサーと呼びます。
もう少し正確に言うと、宇宙が生まれてまもない非常に初期の宇宙でも、すでに巨大な超大質量ブラックホールが見つかっています。それがどうやってごく短い時間でそこまで大きく育ったのかは、現代天文学が解き明かそうとしている、最もわくわくする謎の一つです。
すべてを壊すだけの怪物なのでしょうか?
ブラックホールというと、周りの星や惑星を掃除機のようにところかまわず飲み込む恐ろしい破壊者ばかりを思い浮かべがちです。けれども超大質量ブラックホールは、物質を飲み込むだけの単純な怪物ではありません。
ブラックホールが物質を飲み込むとき、あふれ出たエネルギーは両極の方向へ光に近い速さで噴き出します。これを「ジェット」と呼びます。この強力なジェットと放射エネルギーは銀河全体に広がり、冷たいガス雲をかき乱して押しのけます。
その結果、ガスが固まりすぎて星が見境なく生まれるのを防ぐこともあれば、反対に遠くのガスを圧縮して新しい星の誕生をうながすこともあります。銀河の成長をほどよく調整してくれる、宇宙の大きな生態系の調整役というわけです。
よくある誤解
超大質量ブラックホールが、銀河全体のすべての星を重力でつなぎ止めている。
超大質量ブラックホールの重力が強く及ぶ範囲は、銀河の中心部にかぎられます。銀河全体の数千億個の星をつなぎ止めているのは、銀河そのものの質量と暗黒物質の重力です。
日常で出会う場面
天の川銀河の中心にある「いて座A*」は、太陽の約400万倍の重さをもつ超大質量ブラックホールです。
人類が初めて直接観測して撮影に成功した、M87銀河の中心のブラックホールは、太陽の質量のなんと65億倍にもなります。
つまり ひとことで
超大質量ブラックホールは、銀河の中心にある太陽の数百万〜数百億倍の重さをもつ巨大な天体で、強力なエネルギーを放って銀河の形成や星の誕生を調整しています。