定義
宇宙の時空における離れた2つの地点を、まるでトンネルのように結ぶ仮想の通路です。光の速さで進んでも何万年もかかる遥か彼方の宇宙空間を、一瞬で通り抜けられるようにしてくれる理論上の近道です。
リンゴをかじった虫食い穴から生まれた名前
リンゴの皮の上にいるアリを思い浮かべてみてください。アリがリンゴの反対側へ行くには、丸い表面に沿って遠回りしながら長く歩かなければなりません。しかし、もしリンゴの中に虫が通り抜けた穴があったらどうでしょうか? 表面をぐるりと回ることなく、その穴へ潜り込んで一瞬で反対側に出られますよね。1950年代に物理学者のジョン・ホイーラーが、この虫食い穴の例えからワームホールという名前を付けました。
私たちが暮らす宇宙空間も、カチカチに固まった箱ではなく、重い物体によってゆがんだり引き伸ばされたりする柔軟な布のようなものです。はるか遠く離れた2つの宇宙空間が大きく曲がれば、紙の両端が重なり合うように互いに近づくことができます。
このとき、合わさった2つの時空の間にトンネルを開けてつなぐと、宇宙の超高速ショートカットが完成します。遠い宇宙を光より速く飛んでいくのではなく、空間そのものを折りたたんで移動距離を極端に縮めてしまうという仕組みです。
アインシュタインの方程式に潜んでいた答え
ワームホールは、映画制作者が単なる空想で考え出したものではありません。物理学者アルバート・アインシュタインの重力理論(一般相対性理論)の方程式を解いたときに現れる、数学的な解の一つです。ただし、実際の宇宙に存在するかどうかはまだ分かっていません。1935年にアインシュタインと同僚の研究者ネイサン・ローゼンが発表した解はアインシュタイン・ローゼン橋と呼ばれ、ワームホールの初期の形と考えられています。
質量を持つすべての天体は、周囲の時空をくぼませます。極端な質量が一点に集まったブラックホールは、空間を深く押しつぶしすぎて底が抜けたような深いすり鉢を作り出します。
もしこのすり鉢の先が宇宙の別の場所とつながっていれば、ひとつの通路が生まれます。しかし、最初に導かれたアインシュタイン・ローゼン橋は一瞬で閉じてしまうため、光さえ通り抜けることができません。そのため、その後の物理学者たちは、一度入ったら抜け出せないブラックホールとは違い、人間が通り抜けられるワームホールが可能なのか、それにはどんな条件が必要なのかを研究してきました。
もう少し詳しく:なぜまだ利用できないのか?
数式の上に存在するからといって、人間が通れる宇宙トンネルが現実の宇宙に転がっているわけではありません。理論上、ワームホールは自身の強大な重力によって、生じた瞬間にあっという間に潰れて閉じてしまうという極めて不安定な性質を持っています。
宇宙船が無事に通り抜けるには、トンネルの入り口が閉じないよう、内側から外側へ壁を力強く押し広げて支え続けなければなりません。物理学者たちは、そのために重力とは逆に押し広げる力を持つ負のエネルギーを持つ物質が必要だと説明しています。
しかし、ワームホールを支えられるほどのこうした物質は、現実世界で発見されたことも人工的に作られたこともありません。極めて近づけた金属板の間にわずかな負のエネルギーが生じる現象(カシミール効果)などは実験で確認されていますが、それでワームホールを支えられるかは未知数です。さらに、実際の宇宙で観測されたワームホールもまだないため、今なお現代物理学が解き明かそうとしている最も魅力的な理論的仮説として残されています。
よくある誤解
ワームホールは天文学者が宇宙望遠鏡ですでに発見し、写真まで撮影されている天体である。
ワームホールはアインシュタインの数学的方程式から予測された理論上のモデルにすぎません。これまでに実際の宇宙で観測されたり、発見されたりしたことは一度もありません。
日常で出会う場面
映画『インターステラー』で、人類の新たな居住先を見つけるために土星の近くに出現したワームホールへ探査船が飛び込む場面。
リンゴの表面をぐるりと歩いて回る代わりに、虫が中を掘り進んだトンネルを通って反対側の皮へまっすぐ通り抜ける状況。
つまり ひとことで
ワームホールは、ゆがんだ時空の2つの地点をトンネルのようにつなぎ、気の遠くなるような超長距離を一瞬で通り抜けられるようにする仮想の近道です。