定義
時間の遅れとは、観測者の動きや重力の強さによって、時間の流れそのものが相対的にゆっくりになる現象です。光の速さに近いスピードで動いているときや、重い天体の近く、つまり重力の井戸の深いところにいるときほど、ほかの場所より時間がゆっくり流れます。
光の速さが一定だからこそ起こること
走る新幹線の中で、天井に向けてレーザー光を撃ち上げる場面を想像してみてください。
車内の人から見ると、光は天井まで真上にまっすぐ上がって下りてくるように見えます。ところが、ホームに立って通り過ぎる新幹線を見ている人には、光が車両の進行方向に沿って斜めに進んでいるように見えます。
ここで宇宙の絶対的なルールが登場します。光は誰が見ても、いつも同じ速さ(秒速およそ30万キロメートル)でしか進みません。ホームの観測者から見ると、光はより長い斜めの道のりを進まなければならないのに、光の速さは速くなれません。結局、道のりが伸びた分だけ、その中で流れる時間そのものが長く引き延ばされるしかないのです。
その結果、ホームの人から見ると、高速で走る新幹線の中の時計は、自分の時計よりもチクタクの間隔が伸びて、時間がゆっくり進んでいるように見えます。
重力が強い場所でも時間は遅くなります
重いボウリングの球をピンと張ったゴムシートの上に置くと、シートが深くぐっと沈むのを見たことがあるかもしれません。
アインシュタインは、質量をもつ物体は周りの空間だけでなく、時間までも一緒にゆがめると説明しました。重力がとても強い天体のまわりは、時空の網がぴんと引っ張られたような状態です。
このように重い天体に近づいて重力の井戸の奥深くにいくほど、光や物体だけでなく、時間の流れそのものも下へ引きずり込まれるようにゆっくりになります。映画『インターステラー』で、ブラックホールの近くの惑星に行った主人公はほんの数時間しか滞在していないのに、地球では20年以上(約23年)もの歳月が流れていました。これも、巨大な重力による時間の遅れのせいです。
ですから、地球の重力の井戸のより深いところ(地表)にいるほうが、高い山の頂上や宇宙空間にいるよりも、時間はごくわずかにゆっくり流れています。
もう少し正確に言うと:自分の時間はいつも正常です
高速で飛ぶ宇宙船に乗ると、体の動きや時計の針がスローモーションのようにのろくなって、もどかしいのでは、と思いがちです。
でも実際には、宇宙船の中にいる本人は何の変化も感じません。心臓の鼓動もいつもどおりのペースで、時計の針もいつもと同じように1秒に1目盛りずつ進みます。時間の遅れは、いつも互いに異なる2人の観測者が比べたときだけ現れる、相対的な違いなのです。
実際、私たちの頭上を回る人工衛星(GPS)は、時速1万4千キロメートルで飛ぶことで時間が遅くなる効果と、地球から離れて重力が弱くなることで時間が速くなる効果を同時に受けています。この2つを合わせると、衛星の時計は1日に約38マイクロ秒ずつ進むため、衛星の時計は打ち上げ前からその分だけゆっくり進むように調整され、残る誤差も絶えず補正されています。この相対性理論による時間の遅れの補正がなければ、スマートフォンのナビは1日で10キロメートル以上も道に迷ってしまうでしょう。
よくある誤解
光の速さに近いスピードで飛ぶと、宇宙船の中の人も自分の体や時計がスローモーションのように遅くなるのを直接体感する。
自分の基準系では、時間はまったく普通に流れています。時間の遅れは、相対的に動いている別の観測者から見たときにだけ現れる違いです。面白いことに、一定の速度で互いにすれ違う2人の観測者のあいだ(特殊相対性理論)では、逆も成り立ちます。宇宙船の中の人が地球の時計を見ると、その時計が遅れているように見えるのです。ただし、片方が向きを変えて再会する場合(双子のパラドックス)や、重力の差がある場合には、どちらの時計が実際に進みが少なかったのかがはっきり決まります。
日常で出会う場面
映画『インターステラー』で、巨大ブラックホールの近くの惑星での1時間が、地球の時間では7年にもなっていた場面です。
スマートフォンのナビが正確な位置を割り出せるように、GPS衛星の時計を相対性理論による時間のずれの分だけ調整しておく技術です。
つまり ひとことで
速く動くほど、また重い天体に近いほど、時間は相対的にゆっくり流れます。これはGPS衛星でも毎日確認されている、宇宙の本当の法則です。