定義
同じ日に生まれた双子でも、一人は走る新幹線に乗り、もう一人は駅のホームに立っていれば、二人の時計は違う進み方をします。双子のパラドックスは、一人が光に近い速さで宇宙旅行に出て戻ってくると、地球にじっとしていた双子よりずっと年をとっていない、という物理現象を扱う思考実験です。相対性理論では、速く動くものの時間はゆっくり進むとされますが、「お互いに相手のほうが動いているように見えるはずなのに、なぜ片方だけが若いのか?」という疑問から始まります。
なぜ二人とも「相手の時間のほうが遅い」と言うのでしょうか?
電車に乗って窓の外を見ると、外の景色が後ろへ流れていくように感じますよね。ホームに立っている人の目には電車が走っていますが、電車の中の人の目にはホームが遠ざかっていくように見えます。
特殊相対性理論は、速く動くものの時間は、外から見るとゆっくり進むと説明します。そうすると、ものすごい速さで宇宙船に乗って飛んでいく兄は、地球に残った弟の時間がゆっくり進んでいると考えるはずです。
逆に、地球に残っている弟から見れば、宇宙船で遠ざかっていく兄の時間のほうが遅く進まなければ筋が通りません。結局、二人ともお互いの時間のほうが遅いと主張することになり、どちらの言い分も正しく見えて矛盾のように思える状況を、双子のパラドックスと呼びます。
もう少し正確に言うと:対称性を崩すUターン
二人の立場がまったく同じなら、本当に解けない矛盾になってしまいますが、実は二人のあいだには決定的な違いがひとつ隠れています。宇宙船に乗った兄だけが、目的地に着いたあとで止まり、向きを変えて地球へ引き返すUターンを経験したという点です。
地球にいた弟は、出発から到着まで、速さも向きも急に変わらない状態を保っていました。一方、宇宙船の兄は、地球に戻るためにブレーキを踏み、船首を回し、もう一度スピードを上げるという、大きな変化を受けなければなりませんでした。
物理学では、このように速さや向きが変わる運動を加速運動と呼びます。兄が向きを変える瞬間、兄が「今」だと思う地球の時刻が大きく先へ飛びます。このとき時間の差を生むのは、加速の強さそのものではなく、行きと帰りで兄だけが別々の基準系に乗り換えたという非対称性です。
実際に帰ってくると何が起こるのでしょうか?
宇宙船が無事に地球に着陸し、二人が再び同じ場所で向かい合う瞬間、もう二人の状況に迷うことはありません。向きを変えて運動の状態が変わった兄のほうが、地球にいた弟よりも実際にずっと若いままになります。
もし兄が光の速さにとても近い速さで10年間宇宙を旅して戻ってきたとすると、その速さによって驚くことが起こります。兄の時計も体も10年分しか年をとっていないのに、地球ではすでに50年から70年もの歳月が流れていて、弟は白髪のおじいさんになっているのです。
これはSF映画の無理な設定ではなく、飛行機や人工衛星に載せた精密な原子時計の実験などで何度も確かめられた時間の遅れという現象です。ふだんの生活では気づかないだけで、世の中には、誰にとっても同じように流れる絶対的な時間は存在しません。
よくある誤解
双子のパラドックスは、相対性理論の誤りを証明する本当の物理的矛盾である。
見かけ上は矛盾のようでも、実際には矛盾ではありません。向きを変えて戻ってくるのは宇宙船に乗った人だけで、二人の立場は対称ではないため、論理的に説明がつきます。
日常で出会う場面
映画『インターステラー』では、帰ってきた主人公よりも娘のほうがずっと年をとっている場面があります。似ているようですが、主にブラックホールの近くの強い重力が原因なので、双子のパラドックスの速度の効果とは原因が違います。
地球のまわりを高速で回るGPS衛星の時計は、速度と重力の違いのせいで、地上より1日に約38マイクロ秒速く進みます。そのため衛星の時計は、打ち上げ前からこれだけ遅く進むようにあらかじめ合わせてあります。
つまり ひとことで
光に近い速さで旅に出て、向きを変えて戻ってきた人は、地球にじっとしていた人より流れた時間が少なく、若いままでいます。