科学

浮力

水の中に無理やり沈めた浮き輪が、手を離したとたんにポンと水面へ跳ね上がる。その裏で働いている見えない手のことです。

  • 約3分
  • 図 2点
  • 2026-10-14 検証

定義

浮力とは、水や空気のような流体(流れることのできる液体や気体)の中に入った物体が、上向きに押し上げられる力のことです。水の中で重い物を持つと空気中よりずっと軽く感じるのも、まわりの流体が物体を上へ押し上げてくれているからです。

お風呂で浮き輪を沈めると起こること

お風呂の水の中に、ゴムボールや空のペットボトルをぐっと沈めてみたことはありませんか? 指先に力を込めて押し込むほど、手のひらを押し返す強い力を感じます。手を離した瞬間、ボールはあっという間に水面からポンと跳ね上がります。

このとき物体を上へ押し上げている力が、まさに浮力です。水の中に入った物体は、四方八方から水の圧力を受けます。ところが水は深くなるほど水圧が強くなるので、下から押し上げる圧力は、上から押さえつける圧力よりいつも大きくなります。

この上下の圧力の差のせいで、物体は全体として上向きに持ち上げられる力を受けます。プールで友だちを抱き上げるとき、地上よりずっと軽く感じるのも、水が下から一緒に持ち上げてくれているからです。

この現象は水の中だけで起こるわけではありません。空気も流れる気体なので、空中に浮かぶ風船や私たちの体にも、目に見えない小さな浮力がいつも働いているのです。

もう少し正確に言うと:アルキメデスの原理

浴槽にお湯をいっぱいに張って体を沈めると、お湯が縁からざぶんとあふれ出します。物体が水の中に入るには、その体積の分だけ、もともとそこにあった水を外へ押しのけなければならないからです。

古代ギリシャの数学者アルキメデスは、こうした現象にまつわる大切な科学の法則を、『浮体について』という本にまとめました。物体が受ける浮力の大きさは、物体が押しのけた流体の重さとぴったり同じだ、という事実です。これを物理学では「アルキメデスの原理」と呼びます。

たとえば体積1リットルの物体を水にすっぽり沈めると、水1リットル(約1キログラム)を押しのけます。すると水は、その物体を1キログラム重の力(約9.8ニュートン)でぐっと上へ支えてくれます。

つまり、物体が場所を取った分だけ水が押し出されて、「私の場所を返して」と上へ押し上げてくるようなものです。押しのけられた水が重いほど、物体が受ける浮力も比例して大きくなります。

鉄でできた巨大な船は、なぜ沈まないのでしょう?

小さな鉄の玉や硬貨を水に投げ込むと、まっすぐ底へ沈みます。それなのに、鉄の玉とは比べものにならないほど重い巨大な鉄の客船やコンテナ船は、どうして沈まずに水の上に安全に浮いていられるのでしょうか?

秘密は、物体の全体的な形と密度(物質がぎっしり詰まっている度合い)にあります。船の内部は鉄で埋まっているわけではなく、ほとんどが空っぽの空気の空間になるように設計されています。船底を広くて浅いお椀のような形に大きく作り、とてつもない量の水を押しのけられる構造にしていることが肝心です。

船が押しのけられる海水の最大の重さが、鉄と空気を合わせた船全体の重さより大きければ、船は自分の重さと同じだけの水を押しのけるところまで沈んだ状態で、水の上に浮かびます。逆に、物体が押しのけた水の重さが物体自身の重さより軽ければ、物体は底へ沈んでしまいます。

海の中を進む潜水艦も、この原理を使っています。艦内のタンクに海水を入れると重くなって沈み、圧縮空気で海水を押し出すと軽くなって(浮力が重さより大きくなって)、ふたたび悠々と水面へ浮かび上がります。

よくある誤解

誤解

重い物は必ず沈み、軽い物は必ず浮く。

事実

浮くか沈むかを決めるのは重さそのものではなく、「体積に対する重さ(密度)」と、押しのけた流体の量です。何万トンもある鉄の船でも、中を空洞にして体積を大きくすれば、たくさんの水を押しのけて楽に浮かびます。

日常で出会う場面

  1. プールで仰向けになって力を抜くと、体がぷかぷか浮くのも浮力のおかげです。

  2. 遊園地のヘリウム風船や空を飛ぶ熱気球も、空気が押し上げてくれる浮力のおかげで浮かび上がります。

つまり ひとことで

浮力とは、流体の中の物体が、押しのけた流体の重さの分だけ上向きに押し上げられる力のことです。

作成 2024-12-06 更新 2026-10-14 検証 2026-10-14