ベルヌーイの定理

駅のホームで通過する電車のそばに立つと、電車の方へ体が引き寄せられる現象を説明する空気と水のルールです。

定義 気体や液体のように流れる物質(流体)の流速が速くなると、その流体の内部の圧力が逆に低くなるという物理法則です。18世紀の科学者ダニエル・ベルヌーイが提唱した原理で、空気や水が速く流れる場所ほど、まわりを押す力が弱くなることを示しています。

風が強く吹くほど、なぜ圧力が下がるの?

2枚の紙を少し隙間を空けて並べて持ち、その間に息を勢いよく吹き込んでみてください。直感的には風で2枚の紙が外側に広がりそうですが、驚くことに紙同士はピタッとくっつきます。外側の空気が静止している間に、内側の空気が猛スピードで通り抜けることで、内側の空気の圧力が一気に下がったからです。

空気や水のように自由に流れる物質を、科学では「流体」と呼びます。流体には常に「圧力が高いところから低いところへ移動しようとする」性質があります。吹き込んだ息によって紙の間の圧力が下がったため、外側にあった比較的圧力の高い空気が2枚の紙を内側へと強く押し込んだのです。

廊下に大勢の人が集まっていて、前方に向かって全力疾走する様子を想像してみてください。みんなが前だけを見て猛スピードで走っているときは、横の壁や隣の人を横に押し出す余裕がなくなりますよね。このように、流体の粒がひとつの方向へ進むことにエネルギーを使うと、周囲を横に押し広げる力は自然と小さくなるのです。

ベルヌーイの定理:紙の間の気流と気圧差 速い気流 低圧 高圧 高圧

身の回りにあふれる「流れ」の魔法

化粧台に置いてあるスプレーや香水の仕組みも、ベルヌーイの定理でスッキリ説明できます。スプレーのノズルをプッシュすると、ストロー上部の狭い吹き出し口から空気が猛スピードで噴き出します。すると、ストローの出口付近の空気圧力が一瞬で急激に下がります。

このとき、ボトルの液面には普段通りの大気圧がかかっています。その結果、ボトルの中の液体は大気圧に押され、圧力が下がったストローの上部へと勢いよく吸い上げられます。上へと吸い上げられた液体は、吹き出す速い気流とぶつかって細かな霧となって広がるのです。

野球でピッチャーが投げる変化球も同じ原理です。ボールが回転しながら飛ぶと、一方の面は空気の流れとぶつかって流速が遅くなり、反対側の面は回転方向と空気の流れが一致して流速がとても速くなります。流れが速い側の圧力が低くなることで、ボールが圧力の低い方へと曲がる「マグヌス効果」が生まれます。

もう少し詳しく言うと

ベルヌーイの定理の根本には、物理学の大原則である「エネルギー保存の法則」があります。閉じた管の中を流れる流体は、高さによる位置エネルギー、速度による運動エネルギー、そして流体自身が持つ圧力エネルギーを秘めており、この3つの合計は常に一定でなければなりません。

パイプが水平で位置エネルギーが変わらない場合、流速が速くなって運動エネルギーが増えた分、圧力エネルギーが必ず減少しなければ全体のエネルギーが釣り合いません。つまり、流体の速度と圧力は、一方が増えればもう一方が減るエネルギーのシーソーゲームをしているようなものです。

なお、飛行機の翼が宙に浮く力(揚力)について「ベルヌーイの定理だけで説明できる」と誤解されがちです。しかし実際の航空機では、翼が空気を下向きに押し下げることで生じる作用・反作用の力も半分以上の大きな割合を占めています。このように、複数の物理法則が見事に組み合わさって飛行機は大空を飛んでいるのです。

🤔 よくある誤解

✕ 誤解

飛行機の翼が浮き上がる力(揚力)は、ベルヌーイの定理だけで生まれている。

✓ 事実

ベルヌーイの定理も一部関わっていますが、翼が空気を下へ押し出すニュートンの作用・反作用の法則や、空気が翼のカーブに沿って流れるコアンダ効果が合わさることで初めて完全な揚力が説明できます。

🧺 日常で出会う場面

1 台風や突風が吹いたとき、建物の屋根の上の気圧が下がって屋根が上へと吹き飛ばされる現象。
2 シャワーカーテンの内側で温かいシャワーを勢いよく出すと、空気の流れが速くなってカーテンが内側に吸い寄せられる現象。
💡 つまり ひとことで

流体の流速が速くなると圧力が下がり、これはエネルギー保存の法則によって起こる自然のルールです。