定義
油圧システム(hydraulic system)は、閉じ込めた液体に加えた圧力がすべての方向に同じように伝わるという物理法則を使って、小さな力を大きな力に変えて伝える機械装置です。油(作動油)を満たした管と円筒形のシリンダーをつなぐことで、巨大な重機や自動車のブレーキを楽に動かします。
小さな力で巨大な岩をひょいと持ち上げる秘密
細い注射器と太い注射器をホースでつなぎ、細い側を指で軽く押すと、太い側のピストンが力強く押し上げられます。油圧システムが力を大きくする仕組みは、まさにこれです。密閉した管の中に油をいっぱいに満たし、細い側の入り口を軽く押すと、その圧力がつながった管全体にそのまま伝わります。
このとき反対側にある広い側のピストン(油の力を受ける円板)は、面積が広い分だけ非常に大きな力を受けて押し上げられます。狭い面積に加えた10キログラムの力が、100倍広い面積では、なんと1,000キログラムの重さを持ち上げる力に変わる、というわけです。これがパスカルの原理を使った力の増幅です。
ショベルカーが家ほどもある岩を軽々と持ち上げられるのも、運転手がブレーキペダルをつま先で軽く踏むだけで、速く走る重い車がその場でぴたりと止まれるのも、秘密はすべてここにあります。
大きな力を得るかわりに、動く距離をゆずります
力が何倍にも増えたからといって、魔法のようにエネルギーがひとりでに生まれるわけではありません。公園のシーソーやてこを使うとき、重い友達を軽く持ち上げるには、自分が座っている側の端をずっと長い距離だけ下に押し下げなければなりませんよね。油圧もまったく同じルールに従います。
面積の狭い側のピストンを10センチメートル深く押して油を送っても、面積が10倍広い反対側の大きなピストンは、わずか1センチメートルしか上がりません。つまり、力の大きさを大きく得るかわりに、移動距離をゆずる交換が起きているのです。
結局、人が小さなピストンにした仕事の量と、機械が大きなピストンを通してやり遂げた仕事の量は、摩擦などの損失を除けば同じです。実際には損失があるぶん、できた仕事は少しだけ小さくなります。油圧システムはエネルギーを生み出すのではなく、人が出せる小さな力で重い物を扱えるように、形を変えてくれる優れた道具なのです。
もう少し正確に言うと:なぜ水や空気ではなく油を使うのでしょうか?
油圧装置に空気ではなく液体を満たすのは、「圧縮性(押したときに縮む性質)」のためです。空気のような気体は、押すとふかふかの枕のように体積がぐっと縮み、力を見当違いなところで吸収してしまいます。一方、油のような液体は、どれだけ強く押し込んでも体積がほとんど縮まないので、力を伝えるのにうってつけです。
では、ありふれた水ではなく、なぜ油(作動油)を使うのでしょうか。水は鉄の部品を簡単に錆びさせますし、冬には凍りつく危険があります。それに対して特殊な油は、部品どうしの摩擦を減らす潤滑油の役目をしながら、機械の内部のサビや腐食を防いでくれます。
ただし、管の中に空気の泡が少しでも混ざると、ブレーキがふにゃっと沈み込んで効かなくなるという危険な現象が起こることがあります。そのため、完全な密閉と気泡の遮断こそが、油圧機械の性能と安全を保ついちばん重要な技術なのです。
よくある誤解
油圧システムを使うと、エネルギーや仕事の量そのものが何倍にも増える。
小さな力で大きな力を得るかわりに、そのぶん長い距離を押さなければならないので、機械がした仕事(エネルギー)の総量は変わりません。
日常で出会う場面
ショベルカーが、長いアームの油圧シリンダーを伸ばして、巨大な岩や土を掘り起こす動き
運転手がブレーキペダルをつま先で軽く踏んで、走る重い車を止める油圧式ブレーキ
美容院のイスの下のレバーを足で踏んで、座っているお客さんごとイスを上に持ち上げる装置
つまり ひとことで
密閉された液体は圧力をそのまま伝えるので、面積の違いを利用して、小さな力を巨大な力に変えて機械を動かせます。