定義
でこぼこ道を通ったときに起こる車体のガタつきや振動を、オイルの摩擦抵抗を使ってすばやく鎮めてくれる、自動車の要となる緩衝装置です。
スプリングだけでは車は止まれません
スピードバンプを勢いよく越えるとき、車の下についた大きなスプリングが、路面から突き上げる衝撃をやわらかく受け止めてくれます。ただ、スプリングは縮んでから伸びるときの弾性エネルギーを抱えているので、放っておくとゴムまりのように上下にぽんぽん跳ねる動きが止まりません。
もし車にスプリングしかなかったら、バンプを一度越えただけで、車体はしばらくのあいだ上下にゆらゆら揺れ続けます。乗っている人は荒波に揺れる船のように酔ってしまい、タイヤも路面から浮きがちになって、ハンドル操作が不安定になります。
そこで、跳ね続けるスプリングをつかまえて止める装置が必要になります。ショックアブソーバーは、スプリングが受け止めたエネルギーを引き継いで、ゆらゆらと繰り返す往復振動をあっという間に鎮めてくれる、頼もしいシートベルトのような役割を果たします。
細い穴を通るオイルの力
水鉄砲に水ではなく、とろりとした食用油やシャンプーをいっぱいに入れて持ち手を押してみると、重くてなかなか押せません。液体が細い穴を無理やり通り抜けるとき、とても大きな流体抵抗(摩擦力)が生まれるからです。
ショックアブソーバーの筒の中も、この注射器や水鉄砲とまったく同じ構造になっています。筒の中にはねっとりした特殊なオイルが満たされていて、ごく小さな穴(バルブ)がいくつも開いたピストン板が、そのオイルの中を上下に往復します。
車がガタついてピストンが動くと、オイルは細かなすき間をぬって逃げなければなりません。このときに生まれるオイルのねばりによる抵抗力が、車体の動きをぐっと引き止めてくれます。
この過程で、揺れていた運動エネルギーは細かな摩擦熱に変わって、空気中に散っていきます。おかげで車は揺れを失い、もとの落ち着いた姿勢に戻れるのです。
もう少し正確にいうと:衝撃ではなく振動を抑えています
ショックアブソーバー(Shock Absorber)は英語名を直訳すると「衝撃を吸収するもの」ですが、もう少し正確にいうと、衝撃を直接受け止める主役ではありません。路面から伝わる最初の衝撃を全身で受け止める本当の主人公は、スプリングです。
物理学では、揺れている物体が抵抗を受けてエネルギーを失い、止まる現象を「減衰振動」と呼びます。スプリングが最初の衝撃をやわらかく和らげたあと、ショックアブソーバーは、その後に続くいつまでも終わらない余計な振動を消し去る減衰器(ダンパー)の役目を受け持ちます。
スプリングとショックアブソーバーが名コンビを組まなければ、自動車はまともに走れません。ショックアブソーバーは乗り心地をよくするだけでなく、急ブレーキや急カーブのときにタイヤが跳ね上がらないよう押さえて、タイヤが路面に接し続けられるようにすることで、安全な走行も守っています。
よくある誤解
ショックアブソーバーは、車のガタつく衝撃を直接吸収するスプリングの別名である。
衝撃を最初に受け止めるのはスプリングで、ショックアブソーバーは、スプリングが跳ね続けないようにオイルの摩擦で振動を止める、別物の減衰装置です。
日常で出会う場面
スピードバンプをドンと越えたあと、車体が1~2回の揺れでおさまって水平に戻ります。
洗濯機が高速で脱水するとき、洗濯槽が暴れて壊れてしまわないよう、底のほうで揺れを抑えてくれます。
つまり ひとことで
スプリングが衝撃をやわらかく受け止めたら、ショックアブソーバーがオイルの摩擦抵抗で、いつまでも続く振動をすばやく止めてくれます。