定義
表面張力とは、液体の表面にある分子どうしが強く引き合って、自分から表面積をできるだけ小さくしようとする力です。液体の表面がピンと張った弾力のある膜のようにはたらき、丸い形を保たせます。
アメンボが水の上を歩けるわけ
穏やかな池のほとりを歩いていると、細長い脚をもつアメンボが、水に沈まずにスケートをするようにすいすい進む姿が見られます。それどころか、水よりずっと重い鉄のクリップや針でも、そっと水面にのせると沈まずにそのまま浮かぶ、不思議な光景に出会えます。
多くの人は、これを物が水より軽いから浮く「浮力」のせいだと考えがちです。けれども、アメンボの脚が水を突き破らない本当の理由は、水面がピンと張ったゴムの膜のようにしっかり踏ん張って、上からかかる重さを分散して支えてくれるからです。
草の葉の先についた朝露や、窓ガラスを伝う雨粒が、平らに広がらずにころんと丸くなるのも同じ原理です。液体には外に見える面積をできるだけ小さくしようとする性質があります。そして、決まった体積の中でいちばん表面積が小さくなる完璧な立体が、まさに丸い球の形だからです。
表面の分子がひとりぼっちで引かれる力
こうした現象が起こる根本的な理由は、水の奥深くにいる水分子と、表面にいる水分子とで、受ける力が違うことにあります。水の真ん中にいる分子は、まわりをぐるりと他の水分子に囲まれています。上も下も左も右も、となりの分子が同じ強さで引っ張るので、力が完全につり合い、とても安定した状態を保てます。
ところが、水と空気が接する水面のすぐ上にある表面の分子は、事情がまるで違います。分子の下や横には、引き合ってくれる水分子がぎっしり並んでいますが、上の空気中には水分子がほとんどないからです。
その結果、表面の水分子は、上からは引かれず、液体の内側へだけ向かう力を強く受けることになります。こうして表面の分子がみんな内側へ縮こまり、おたがいの手をぎゅっと握りしめることで、液体の表面全体がすき間なく縮んで、ピンと張った張力が生まれるのです。
もう少し正確にいうと
もう少し科学的に見ると、表面張力とは、液体の表面を単位面積だけ広げるのに必要なエネルギーのことです。内側へ引き込まれている分子を無理やり外へ引っ張り出して表面を広げるには、分子どうしの強い引力を断ち切るための外からのエネルギーが必要だからです。
水は、ほかの一般的な液体に比べて、表面張力がとくに強めです。水分子どうしが酸素と水素を通じて強く結びつく、水素結合という特別な引力をはたらかせるからです。アルコールや油などの液体が、水滴ほど丸い球の形を長く保てず、すぐ床に広がってしまうのも、この結びつく力が水より弱いからです。
では、水に石けんや台所用洗剤を一滴たらすとどうなるでしょうか。洗剤に含まれる界面活性剤の分子が水の表面に集まり、水分子に代わって表面を占めます。その結果、表面張力があっという間に弱まり、丸くまとまっていた水滴は力なくさっと広がって、水が布やお皿のすみずみまでよくしみ込むようになります。
よくある誤解
アメンボが水に浮くのは、体が水より軽いからだ。
アメンボは軽いから浮いているのではなく、表面張力でできた水面の弾力のある膜を脚で踏んで立っています。水に洗剤を一滴たらして表面張力を弱めると、アメンボも水の中に沈んでしまいます。
日常で出会う場面
草の葉についた朝露が、平らに散らばらずに丸い玉の形を保ちます。
コップに水をなみなみと注ぐと、あふれずにふちの上でぷっくりと盛り上がります。
水の上にそっとのせた鉄のクリップや針が、沈まずに浮かびます。
つまり ひとことで
表面の水分子どうしが内側へ引き合って、表面積をできるだけ小さくしようとする力です。