定義
スマートフォンやノートPCなどの電子機器を充電器に接続した際、電力をバッテリーに蓄えず、機器本体の部品へ直接送って動作させる電力供給技術です。充電しながら高負荷なゲームや重い作業を行っても、バッテリーが発熱して寿命が縮むのを防いでくれます。
なぜ充電しながらゲームをするとカイロのように熱くなるのか?
スマホで重いゲームをしながら充電器を挿したままにして、本体がホッカイロのように熱くなった経験はありませんか。このように熱くなるのは、さまざまな場所から発生する熱が重なり合ってしまうからです。
近年のスマートフォンは、充電器から入ってきた電気をまず画面や頭脳にあたる半導体(SoC/AP)などの部品に送り、余った電力でバッテリーを充電します。例えるなら、水道水を使いながら余った水で貯水タンクを満たそうとして、ポンプが休む暇もない状態です。
リチウムイオンバッテリーは、充電する過程で内部抵抗や化学反応による熱を発し、電圧を変換する充電回路からも熱が出ます。そこにゲームのグラフィック処理で熱くなった半導体の発熱まで加わるため、スマホ内部の温度が一気に上昇してしまいます。温度が上がりすぎると、端末は故障を防ぐために自動で性能を落としたり、充電を停止したりします。
バッテリーをスキップする直通の電力ルート
バイパス充電は、この問題を解決するためにバッテリーへの充電経路をスキップします。英語のバイパス(Bypass)が「迂回路」を意味するように、電気をバッテリーに通さず、マザーボードや主要パーツへ直接流す仕組みです。
端末を動かすのに必要な電力だけを充電器から直接引っ張って使うため、バッテリーは充電も放電もほぼ行わず休止状態になります。そのため、バイパス機能が有効になると、ゲームを長時間プレイしても画面上部のバッテリー残量表示がほとんど変わりません。
バッテリーへの負担がほぼなくなることで、充電に伴う発熱が抑えられ、機器内部の発熱が大幅に減少します。もちろん半導体がゲーム処理で出す熱は残りますが、全体の温度が上がりにくくなるため、過熱を防ぐ強制的な性能低下(サーマルスロットリング)が起きにくくなり、高いパフォーマンスをより長く維持しやすくなります。
もう少し詳しく知ると
もう少し正確に言うと、バイパス充電がスムーズに動作するためには、機器本体と充電器がリアルタイムで通信し合う賢い技術が必要です。ゲームの演出が派手になって電力を多く消費するときは充電器により多くの電流を要求し、ローディング画面などで電力消費が減ったときは即座に供給を絞る必要があるからです。
スマートフォンでは、電力を柔軟にコントロールできる給電規格(USB-PD PPSなど)がこの役割を担っています。たとえばSamsungのGalaxyシリーズでは、PPSに対応した25W以上のUSB-PD充電器を接続することでこの機能(ゲーム給電)が利用できるようになります。ただし、必要な条件や呼び方はメーカーや機種によって異なります。
また、バイパス充電はバッテリーを素早く充電する急速充電技術ではないという点も知っておく必要があります。バッテリー寿命を縮める高温状態を避けるため、充電機能を一時停止して外部電源のみで動かしている状態なのです。そのため、バッテリーの残量そのものを増やしたいときは、ゲームを終了するか、この機能を一時的にオフにする必要があります。
よくある誤解
バイパス充電は、バッテリーを超高速で満タンにする最新の充電技術である。
バイパス充電中はバッテリー残量がほとんど増えません。バッテリーを通さず機器本体へ直接電気を流すことで発熱を抑え、バッテリーの劣化を遅らせる技術です。
日常で出会う場面
スマートフォンで重い3Dゲームを長時間プレイするときに、本体が熱くなるのを防ぐ。
ポータブルゲーム機やノートPCをコンセントに繋ぎっぱなしで据え置きのように使うとき、バッテリーの劣化を抑える。
つまり ひとことで
バッテリーを介さず機器の部品へ直接電力を供給することで、発熱を抑え、バッテリーの劣化を遅らせる技術です。