定義
電子を引きつける力が違う2種類の金属を液体でつなぎ、化学反応から電気を取り出す装置です。片方の金属は電子を手放し、その電子は導線を通ってもう一方の電極に到着し、そこで液体の中の物質に渡されます。間の導線に電圧計をつなげば、電子が通ることで生まれる電気を目で確かめられます。
電子が滑り台を滑り降ります
公園の滑り台の上に立っている子どもを思い浮かべてみましょう。手を離せば、自然に下へ滑り降りてきます。上と下に高さの差があるときだけ、こうした動きが生まれます。
金属も、電子を握っている力がそれぞれ違います。亜鉛は電子を緩く握っていて、銅はそれよりしっかり握っています。2つの金属を並べると、電子から見て滑り台のような高さの差ができます。
では、2つの金属を食塩水に一緒に浸し、導線でつないでみましょう。亜鉛に緩くぶら下がっていた電子たちが、列を作って銅のほうへ滑り降りていきます。この電子の列になった流れこそが電流です。
こうした電池1つだけでは力が弱く、豆電球を点けるのは難しいです。いくつも直列につなぐと、LEDのように消費電力の少ない部品なら点けられます。電子が流れ出る亜鉛側を負極と呼び、電子が到着する銅側は正極です。レモンや薄い酸に浸したこのタイプの電池では、銅板に着いた電子を銅ではなく液体中の水素イオンが受け取っていくので、泡が出ます。
なぜ食塩水やレモン汁が必要なのでしょう?
滑り台の下に子どもたちが降りてきて、どんどん溜まっていったらどうなるでしょう。場所がなくなって、上にいる子たちももう降りてこられません。電子もまったく同じ状況になります。
亜鉛側の液体には、溶け出した亜鉛イオン(+)が溜まっていき、銅側の液体では、電子を受け取った陽イオンが減っていきます。こうして液体の中の電気のバランスが崩れると、流れはすぐに止まってしまいます。だから、導線のほかに戻っていく道がもう1本必要です。2つの金属を浸した液体が、その道になります。
液体の中には、電気を帯びた粒であるイオンが漂っています。この粒が左右に行き来して、片側に溜まった偏りを解消してくれます。こうした働きをする液体を電解質(電解液)と呼びます。
食塩水も、お酢も、レモン汁も、みなこの働きをします。レモン汁や薄い酸は、銅板で電子を受け取る水素イオンを供給する役割も果たします。レモンに亜鉛メッキの釘と銅板を刺す理科の実験装置が、まさにそれです。ただ、レモン1個では力が弱いので、小さな電子時計を動かすには何個も直列につなぐ必要があります。
もう少し正確に言うと
電池は、電気をあらかじめ入れておく水筒のようなものではありません。中に入っているのは、まだ滑り台を滑っていない化学物質です。電池の仕事は貯蔵ではなく、化学反応に隠れていた力を電気に変えることです。
だから使うほど、亜鉛が少しずつ溶けてなくなっていきます。滑り台の上に登る子どもがいなくなれば、流れも止まります。使い切った乾電池がもう力を出せない理由は、ここにあります。
化学の授業で習う酸化還元反応が、まさにこの場面です。電子を失う側と受け取る側が同じ場所で出会うと、その力は熱になって散ってしまいます。2つの場所を引き離し、その間に導線を渡して電子の通り道を作ったのが、この電池のアイデアです。
ひとつだけ付け加えます。繰り返し充電して使う電池は、外から電気を押し込んで、電子を滑り台の上へ元どおり戻す方式です。同じ滑り台を何度も使うわけですね。
よくある誤解
電池の中にはあらかじめ電気が入っていて、それが流れ出てくる。
入っているのは、まだ反応していない化学物質です。2つの金属と液体が反応している間、そのつど電子を流して電気を作り出しています。
異なる2つの金属を導線でつなぐだけで電気が流れる。
2つの金属が液体(または2つの液体をつなぐ塩橋)でつながり、イオンが行き来できて初めて流れが続きます。液体がないと電子をやりとりする反応が続かず、電気は流れません。
日常で出会う場面
レモンに亜鉛メッキの釘と銅板を刺し、何個かつないで小さな電子時計を動かしてみる、理科の実験装置です。
リモコンに入れる乾電池も、2つの物質が電子をやりとりして電気を生み出す、同じ仲間の装置です。
つまり ひとことで
電子を緩く握る金属としっかり握る金属を液体でつなぎ、その間の導線に電子を流れさせるようにした化学電池です。