科学

リチウムイオン電池

2つの部屋のあいだをせわしなく行き来するシャトルバスのように、小さな粒が場所を移りながら電気をためたり送り出したりする装置です。

定義

両側の壁のあいだでボールを投げ合うキャッチボールのように、小さな粒が2つの部屋を行き来して電気をためたり送り出したりする装置です。スマートフォンや電気自動車の心臓にあたる充電式の電池で、使い捨ての乾電池と違い、電気をつないで何百回も繰り返し充電して使えます。

卓球のボールのように2つの部屋を行き来するリチウム

スマートフォンを充電器につなぐと、電池の中ではにぎやかな引っ越し作戦が始まります。正極(プラス極)におとなしく集まっていたリチウムの粒が、充電器の力を受けて反対側の負極(マイナス極)へ列をなして渡っていきます。負極は、エネルギーをたっぷり充電したリチウムの粒が順番に積み重なって休む、仮住まいの部屋です。

逆にスマートフォンで動画を見たりゲームをしたりするときは、反対向きに移動します。負極にとどまっていたリチウムの粒が元の家である正極へ戻るとき、握っていた電子を導線の外へ押し出して、スマートフォンの画面を光らせ、スピーカーを鳴らします。

このようにリチウムの粒が2つの部屋のあいだをロッキングチェアのように行ったり来たりすることから、科学者はこれを「ロッキングチェア原理」と呼びます。電池そのものが電気を新しく作る発電所なのではなく、リチウムという小さな働き手がエネルギーを運ぶシャトルバスの役目を果たしているわけです。

なぜ、よりによってリチウムなのでしょう?

電池の材料にできる金属は世の中にたくさんあります。けれど、毎日手に持ち歩くスマートフォンや、重い車体を動かす電気自動車にとっては、重さがいちばん大切な課題です。リチウムは水に浮くほど軽く、地球上でもっとも軽い金属元素です。

そのうえリチウムは、自分の持つ電子を外へ思い切りよく放り出す、積極的な性格をしています。大きさはほこりのように小さくて軽いのに、電子を押し出す力はとても強いので、同じ重さのほかの金属よりずっと多くの電気エネルギーをぎゅっと詰め込めます。

もう少し正確に言うと、リチウムは化学的に、電子を失ってイオン(電気を帯びた原子)になろうとする傾向がもっとも強い元素のひとつです。重さあたりにためられるエネルギーの量を表す「エネルギー密度」がずば抜けて高いため、携帯用電子機器の革命を起こすことができました。

長く使うと、なぜ電池がすぐ減るのでしょう?

買ったばかりのスマートフォンは一日中使ってもへっちゃらですが、2年ほどたつと、電池の残量表示がはっきり分かるほど早く減るようになります。これは、リチウムの粒が2つの部屋のあいだを何百回も行き来するうちに、粒が出入りする通り道がゆがんだり、表面にカスが厚くたまったりするためです。

通り道が壊れると、家に帰れず道端に閉じ込められてしまうリチウムの粒がだんだん増えます。部屋のあいだを行き来して電気を運ぶはずの働き手が減るにつれて、電池全体の蓄電容量も一緒に縮んでいく。これが寿命が短くなる本当の理由です。

また、電池の内部を満たしている液体(電解液)は、強い衝撃を受けたり熱くなったりすると、火がつきやすくなります。そこで科学者たちは、火災の危険をなくすために、液体の代わりに燃えにくい固体を詰める次世代電池の開発に力を入れています。

よくある誤解

誤解

スマートフォンの電池は、0%になるまで使い切ってから充電したほうが長持ちする。

事実

昔使われていたニッケル系の電池と違い、リチウムイオン電池は底の底まで使い切ると内部の物質が傷んで、かえって寿命が縮みます。そのため、完全に空にしたり、いつも100%まで満タンにしておいたりするより、中間の範囲で使うほうが寿命に有利だと言われています。

日常で出会う場面

  1. スマートフォンを充電器につなぐと、リチウムの粒が負極へ移動してエネルギーをためます。

  2. 電気自動車が道路を走るときは、リチウムの粒が正極へ戻りながらモーターを回します。

つまり ひとことで

軽くて力持ちのリチウムの粒が、正極と負極のあいだをシャトルバスのように行き来して、電気をためたり送り出したりする装置です。

この概念が登場するストーリー

作成 2025-03-17 更新 2026-10-17 検証 2026-10-17