揚水発電
電気が余っているときに水を山の上へ汲み上げておき、電気が足りなくなったら一気に流して電気を作る巨大な「自然のモバイルバッテリー」です。
定義 揚水発電(ようすいはつでん)とは、余った電力を使って下部のダムから上部のダムへ水を汲み上げて貯めておき、電力が必要になったときに水を下に落として水車(タービン)を回し、電気を生み出すエネルギー貯蔵・発電方式です。
水を汲み上げて充電する巨大な「自然の蓄電池」
スマホの充電が切れないよう、モバイルバッテリーを持ち歩く人は多いですよね。発電所で作られる電気も同じで、作られた瞬間に使わなければそのまま消えて無駄になってしまいます。かといって、街全体をまかなえるほど巨大な化学バッテリー(蓄電池)を作るのは、莫大なコストや寿命の面からとても大変です。
そこで大活躍するのが「水」です。夜間など人々があまり電気を使わず電力が余っている時間帯に、その余剰電力で巨大なポンプを回し、下のダムにある水を高い山頂のダムへと汲み上げます。
余った電気を電線に放置すれば消えてしまいますが、水を高い場所へ持ち上げておけば、水の位置エネルギーという形でしっかり蓄えられます。雄大な自然の地形そのものを、巨大な充電式バッテリーとして活用しているのです。
わずか数分でフル稼働!電力危机的「緊急レスキュー隊」
真夏の猛暑でエアコンが一斉に使われ、街中の電気が突然足りなくなるような緊急事態が発生したとします。このとき山頂のダムの水門を開くと、高い場所に貯めてあった大量の水がパイプを通って一気に下へと流れ落ちます。
勢いよく落下する水のパワーが底に設置された水車(タービン)を猛スピードで回転させ、タービンに連結された発電機が回ることで、わずか数分で大量の電気を瞬時に作り出して電力網へ送り届けます。
一般的な火力発電所や原子力発電所は、火を入れて熱を上げ、フル稼働するまでに数時間から数日かかります。一方、揚水発電は蛇口をひねるようにバルブを開くだけですぐに電気を供給できるため、ブラックアウト(大規模停電)を防ぐ「電力網の頼れる消防隊」のような役割を果たしています。
エネルギー損するのになぜ使う?揚水発電が重宝される理由
科学の視点で細かく見ると、水を汲み上げるときに使った電力に比べ、水を落として回収できる電力は約20〜30%少なくなります。水がパイプを通るときの摩擦や、モーターが回るときに発生する熱によってエネルギーの損失が生じるからです。
エネルギーの総量だけで見れば損をしているように思えますが、電力供給の観点では極めて大きなメリットがあります。電気は貯蔵が難しく、使わなければ100%無駄になってしまいますが、揚水発電を使えば捨てられるはずだったエネルギーの約70〜80%を有用に保存できるからです。
太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーは、天候によって発電量が大きく変動します。昼間に太陽光で余った電気を使って水を汲み上げておき、夜に発電するといった柔軟な運用ができるため、揚水発電はクリーンエネルギー時代を支える最も頼もしい調整役として注目されています。
🤔 よくある誤解
揚水発電は水を消費して発電するため、ダムの水がどんどん減っていく。
揚水発電は上のダムと下のダムの間で同じ水を繰り返し往復させて再利用するため、水そのものを消費して減らすことはありません。
🧺 日常で出会う場面
余った電気で水を高所へ汲み上げて位置エネルギーとして蓄え、電気が足りないときに水を流して再び電気を生み出す巨大な水力バッテリーです。