定義
丸い地球の表面にある2地点を最短で結ぶ飛行ルート、そして航海ルートです。地球の中心を通るように地球を大きなナイフでまっすぐ切ったとき、表面にできるいちばん大きな円(大円)の円周に沿って進む道のことを指します。
平らな地図にだまされないために
世界地図を広げて、ソウルからアメリカのニューヨークまで定規をあててまっすぐ線を引くと、太平洋のど真ん中をすっと横切る線になります。ところが実際に機内の飛行ルート画面を見ると、飛行機は太平洋の真ん中ではなく、北の空へ大きく弧を描くように高く昇って飛んでいきます。
初めて見ると、どうして飛行機はまっすぐ行かずに遠回りするのだろう、と不思議に感じるかもしれません。でもこれは、私たちが平らな2次元の紙の地図に慣れすぎているせいで起こる錯覚です。地球は平らな画用紙ではなく、丸い立体のボールの形をしているからです。
地球儀の上に糸を置いて、ソウルとニューヨークの間でピンと張ってみると、驚くことに気づきます。シベリアの東の端と北極海の近く、カナダ北部を通る北側の弓なりの道のほうが、平らな地図で直線に見えた太平洋横断ルートよりずっと短いのです。最近ニューヨーク行きの飛行機がアラスカ方面へ向かうのは、2022年からロシア領空を避けつつ、この道にできるだけ近づけて取ったルートだからです。
紙の地図は丸い地球を無理に広げて描いているので、北極に近い高緯度ほど、陸地や海の面積が実際よりはるかに大きく膨らんで見えます。そのため目で見ると遠回りのようでも、本物の丸い地球の表面では、この北側のルートがいちばん速い近道になるのです。
地球をいちばん大きく切る円、大円
スイカを丸ごと一個、中心をぴったり通るように包丁で半分に切ると、切り口の縁に、周りがいちばん長い丸い円ができます。これと同じように、球の中心を通る平面で地球を切ったとき、表面に現れるいちばん大きな円を大円(グレートサークル)と呼びます。逆に、中心をそれて切ると、ずっと小さな円(小円)になります。
地球儀で見つかる赤道や、南北をつなぐすべての経線は、地球の中心を通る代表的な大円です。一方、赤道以外の緯線は、中心を通らず上下にそれた小さな円にすぎません。
2地点の間を、できるだけ少ない燃料と時間で飛ぶには、2つの都市と地球の中心を一度に通る巨大な仮想の円を考え、その円の弧に沿って進む必要があります。これが、長距離の国際線の飛行機や大型船が採用している大圏航路の幾何学的な原理です。
もしこのルートを外れて、地図の上でだけ直線に見える道を進むと、実際にはずっと長い距離を飛ぶことになり、何千リットルもの航空燃料と貴重な飛行時間をむだにしてしまいます。
もう少し正確にいうと
船や飛行機が大圏航路に沿って進むとき、パイロットは羅針盤の方位角を少しずつ変え続けなければなりません。大圏航路は地球上の経線を斜めに横切っていくので、羅針盤の針との角度が飛行中ずっとリアルタイムで変化するからです。
羅針盤の角度を一つに固定したまま進む道は、等角航路(ラムライン)と呼ばれます。帆船の時代には、羅針盤の角度を変えなくてすむ等角航路のほうが操縦しやすかったのですが、距離が長くなりすぎるため、現代の航空機はコンピューター計算で角度を修正し続けながら、大圏航路を基本に飛んでいます。
また、現代の航空会社が、数学的に完璧な大圏航路の線だけにこだわるわけではありません。大圏航路を基本の骨組みにしつつ、後ろから機体を押してくれる強いジェット気流(上空の速い風)に乗ったり、危険な嵐を避けたりするために、ルートをこまめに微調整しています。
つまり大圏航路は、幾何学が人類に贈ってくれた、いちばん経済的な基準線です。地球の丸い曲面を理解することで、私たちは毎日空の道で、たくさんの時間とエネルギーを節約しているのです。
よくある誤解
飛行機が北へ弧を描いて飛ぶのは、太平洋の天気を避けるための遠回りだ。
地球は丸い球なので、北へ丸く膨らんだルートそのものが、実際に距離がいちばん短い最短の近道なのです。ただし、2022年以降ニューヨーク行きがアラスカ方面へ向かうのには、ロシア領空の回避も一役買っています。
日常で出会う場面
仁川空港からアメリカのサンフランシスコへ行くとき、飛行機は太平洋の真ん中ではなく、日本の北部とアラスカの近くを通って飛びます。
ソウルからイギリスのロンドンやフランスのパリへ向かういちばん短い大圏航路は、西への直線ではなく、北西のシベリアの空を通ります。2022年以降は、ロシア領空を避けるために中国や中央アジア方面へ回り込み、飛行時間が長くなることもありました。
つまり ひとことで
丸い地球の表面で、2地点をいちばん速く、いちばん短く結ぶ最短ルートです。