定義
私たちがスマートフォンでよく使う絵文字のように、目に見える物の形をかたどって作られた文字のことです。人類が言葉を記録し始めた頃、初期の文字が共通して採用した方法の一つで、古代エジプトのヒエログリフ(聖刻文字)や漢字の起源となった甲骨文字などが代表的です。
スマホの絵文字のように始まった文字
友達にメッセージを送るとき、言葉の代わりに太陽のマーク(☀️)やコーヒーカップのマーク(☕)を送る場面を思い浮かべてみてください。文字を読まなくても、絵を見るだけで相手が何を伝えたいのか一目で分かりますよね。
文字がなかった時代の古代の人々も、まったく同じことを考えました。身の回りにある太陽、月、山、木、そして人間の身ぶりをそのまま粘土板や岩に刻んで意思疎通を始めたのです。これこそが、物の実際の姿をかたどって作られた象形文字の出発点です。
最初は対象を細かく写し取った絵に近いものでした。しかし、硬い石に刻んだり、忙しい日常の中で素早く書き留めたりするには、あまりにも時間と手間がかかります。そのため、時代の変化とともに最低限必要な特徴だけを残して線をシンプルに整理し、現代のような記号へと発展していきました。
絵なのに、どうやって複雑な文章になったの?
象形文字で日常の会話を記録しようとすると、すぐに大きな壁にぶつかります。リンゴの形は簡単に描けますが、「甘い」「嬉しい」「考える」といった目に見えない感情や抽象的な概念は、絵で表すのが難しいからです。
古代の人々は、この難問をとびきりユニークな言葉遊びのような方法で解決しました。意味は違っても、発音が同じ(または似ている)別の物の絵を借りてきて書き表すという方法です。これは絵文字当てパズルの名を取ってレブス原理(Rebus principle)と呼ばれます。
それだけでなく、意味を表す絵と音を表す絵を組み合わせて、新しい文字を作り出すことも行われました。こうして象形文字は、単なるイラストの域を超え、複雑な哲学や文学、法律まで詳細に記録できる強力な文字体系へと進化していったのです。
もう少し正確に言うと
象形文字というと、原始人が描いた素朴な絵、あるいは音を持たず意味だけを伝える記号だと思われがちです。しかし、それは誤解です。象形文字は、意味と話し言葉の音の両方を精巧に表現した高度な文字体系でした。
例えば、古代エジプトのヒエログリフに出てくるワシや足の絵は、その物自体を表すこともあれば、アルファベットの子音のように特定の音を書き表す記号としても使われました。現代私たちが使っているアルファベットの「A」も、もとは雄牛の頭をかたどった記号から始まったと考えられています。セム系言語を話す人々が雄牛を意味する言葉「alp」の語頭の音を書き留めるためにこの記号を借りて使い、ギリシャへ伝わる過程で回転・単純化されて母音のAになったのです。
つまり、象形文字は未開な時代の遺物などではなく、現代使われている多くの文字、とりわけアルファベットや漢字の大いなるルーツであり出発点なのです。古代の人々のひらめきが絵を文字へと変えたおかげで、人類の知恵は途切れることなく今日まで受け継がれてきました。
よくある誤解
象形文字は意味だけを表す純粋な絵であり、言葉の音を書き表すことはできない。
象形文字は物の意味だけでなく、特定の発音(音)を表す表音文字の役割も兼ね備えていました。古代エジプトのヒエログリフでも、実際には音を表す記号が極めて多く使われていました。
日常で出会う場面
丸の中に点を打って太陽を表していた絵文字が、現代の漢字「日」になりました。
古代エジプト人は雄牛の頭の絵で牛を表し、のちに生まれた初期アルファベットはその形を借りて子音の音を表記したと考えられています。
つまり ひとことで
象形文字は物の姿をかたどって作られた文字で、絵から始まって音と意味の両方を表すようになり、現代のさまざまな文字のルーツとなりました。