定義
逆転思考(インバージョン・シンキング)とは、目標を直接達成しようと頑張るのではなく、正反対の「絶対に起きてはならない最悪の失敗」を先に思い描き、それを一つずつ避けていく問題解決の方法です。目標にまっすぐ進みにくいときに考える向きをひっくり返すと、隠れていた致命的なリスクがくっきり見えてきます。
ピクニックを完璧に台無しにする方法
楽しいピクニックを計画するとき、普通は何をしたら盛り上がるかから考えますよね。おいしいお弁当のメニューを決めて、わくわくする遊びを用意します。でも逆転思考は、問いをまるごとひっくり返します。「このピクニックを完全に台無しにするには、どうすればいい?」と考えるのです。
大雨なのに傘を持っていかない、レジャーシートを忘れて湿った芝生に座る、食べ物が傷んでお腹をこわす……そんな場面がすぐ浮かぶはずです。こうして失敗するパターンを先にリストにしておくと、何を準備して何に気をつければいいかが一目でわかります。
成功する方法はぼんやりしていて見つけにくいですが、物事を台無しにする原因はずっと具体的で、思いつきやすいものです。最悪の状況を先に想像してそれを避ければ、ピクニックが失敗する可能性を大きく減らせます。
数学者ヤコビと投資家マンガーの秘密
19世紀ドイツの優れた数学者カール・ヤコビは、「常に裏返せ」という言葉を残したと伝えられています。彼は、すでに知られている問題を逆向きに立て直してみると新しい道が開けると考え、実際に楕円積分をひっくり返して楕円関数を研究するという方法で大きな成果を上げました。
伝説的な投資家チャーリー・マンガーも、この方法を生涯の思考ツールにしていました。彼は「自分がどこで死ぬかさえわかれば、絶対にそこへは行かない」という田舎の人のジョークを好んで引用しました。お金持ちになる特別な秘訣を追いかける代わりに、破滅への近道を先に見極めて避ける戦略をとったのです。
マンガーは、とても賢くなろうと努力するより、愚かなミスを地道に避け続けたことが長い目で見て大きな利益になったと語りました。致命的なミスを避け続けるだけでも、長い年月がたてば大きな差が生まれうるということです。
もう少し正確に言うと:何でも反対にすればいいわけではありません
逆転思考は、何事も悪い面ばかり見る悲観主義という意味ではありません。目標を立てるなとか、前向きな挑戦をやめなさいという意味でもまったくありません。むしろ、私たちがつい陥りがちな根拠のない楽観を正してくれる、頑丈な安全装置に近いものです。
本当の逆転思考のカギは、前へ進む考えと、後ろから支えてくれる考えのバランスです。どこへ向かうか目標を決めるときは明るい未来を描きつつ、その道を実際に歩く計画を立てるときは、何が自分をつまずかせるかを冷静に検討する、というやり方です。
テスト勉強でも、100点を取る方法を悩む前に、前回のテストでなぜ失敗したのかを振り返るのが逆転思考です。一夜漬けやスマホ依存のようなはっきりした邪魔ものを先に取り除けば、勉強の効率は自然と上がります。
よくある誤解
逆転思考は、何事にも悪い点ばかり探す悲観主義や消極的な態度だ。
失敗を恐れて避けようとするのではなく、失敗の要因をあらかじめ取り除いて成功の確率を確実に高めようとする、積極的な問題解決の戦略です。
日常で出会う場面
幸せな結婚生活のために、「相手がいちばん傷つく言葉や行動」を先に思い浮かべ、それを絶対にしないようにする。
プロジェクトを始める前に「このプロジェクトが6か月後に完全に失敗したと仮定」して原因を先に探す、事前検死(プレモーテム)会議。
文章がうまくなる秘訣を探す前に、「読む人を退屈させる文章の特徴」を書き出して、それを避ける。
つまり ひとことで
成功の秘訣を探し回るより、最悪の失敗要因を先に見つけて一つずつ消していく、発想を逆にした考え方です。