定義
モニターやスマートフォンの画面の中にある液晶の分子を、床と平行に寝かせたまま、その場で回転させて光の通り方を調整するディスプレイ技術です。斜めから画面を見ても色あせや色の歪みが起こりにくく、本来の色合いをほぼそのまま保てるのが特徴です。
横から見ても鮮やかな液晶のひみつ
リビングの窓についているブラインドを思い浮かべてみてください。羽根を上下に傾けると、見る角度によって外がよく見えたり、すっかり隠れたりしますよね。初期の液晶画面も、このブラインドのように液晶分子を前後や上下に立てたり寝かせたりして光を調整していました。そのため、画面を正面ではなく横や上から斜めに見ると、色が白っぽく浮いたり、黒く反転したりしていたのです。
IPSパネルは、この問題を解決するために液晶の動かし方をがらりと変えました。液晶分子を画面の底面に平らに寝かせたまま、まるでレコードがターンテーブルの上で回るように、水平方向にだけその場で回転させる方式です。英語名の「In-Plane Switching」も、平面の中で向きを切り替えるという意味です。
液晶分子がいつもガラス面と平行に寝ているので、斜めから見てもバックライト(画面の後ろから照らす光)が通る液晶の形が大きく変わりません。そのため、画面を上から見下ろしても横からのぞき見ても、TNパネルやVAパネルに比べて角度による色や明るさの変化がずっと少ない、広い視野角が得られます。ただし、暗いシーンでは、斜めの角度から見ると黒がわずかに浮いて見えることがあります。
タブレットやプロ用モニターでIPSがよく使われる理由
モニターのパネルにはいくつか種類があります。反応速度がとても速く、初期のゲーマーに愛用されたTNパネルは、少し首を傾けただけで画面が真っ黒に見えるほど視野角が狭いものでした。一方、コントラスト比に優れるVAパネルは、正面からは深みのある色を出せますが、横から見ると色がぼんやり薄れてしまう弱点がありました。
それに対してIPSパネルは、画面のどこから見ても安定した豊かな色合いが自慢です。そのため、何人かで集まって動画を楽しんだり写真を確認したりするとき、誰に対してもほぼ同じ色を届けることができます。
寝転がって斜めから眺めることもあるタブレットやノートPC、そして色が命の写真家やグラフィックデザイナー向けのプロ用モニターにIPSパネルが広く使われているのは、まさにこのためです。ただし、最近のスマートフォンは、自ら光を出すOLED(有機EL)画面を使っていることのほうが多いです。
もう少し正確に言うと:オールラウンダーパネルの弱点
どんな技術にも言えることですが、IPSパネルにも構造上の限界や惜しい点があります。液晶分子が画面と平行に寝ている構造のため、完全な黒を表現しようと光をさえぎるときに、すき間からわずかに光がもれてしまうことがあるのです。
このように光が少しずつもれて黒を完全な漆黒にできないため、コントラスト比(いちばん明るいところと暗いところの明るさの差)は一般的に1000:1前後と、VAパネルより低めです。
また、明かりをすべて消した真っ暗な部屋で暗い映画を見ていると、斜めの角度から見たモニターの端や画面の隅がぼんやり白っぽく光るIPSグローが見えることもあります。頭を動かすと、その形や強さが変わるのが特徴です。見る角度に関係なく同じ場所に固定されて見える光もれは、「バックライトブリーディング」という別の現象です。
初期のころは、液晶分子を回転させるのに時間がかかり、動きの速いゲーム画面で残像が出るという弱点もありました。しかし最近は、液晶の応答速度を1ミリ秒(ms)前後まで高めた「Fast IPS」技術が登場し、画質と応答速度を両立した高性能ゲーミングモニターとしても高い人気を得ています。
よくある誤解
IPSパネルは、どんな環境でも完璧な黒を表現できる。
液晶が平らに寝ているという構造上、バックライトの光を100%さえぎるのは難しく、黒がやや灰色っぽく浮いて見えます。また、暗い部屋で斜めから見ると隅がぼんやり白く見えるIPSグローという現象もあります。完璧な黒の表現は、素子そのものが消灯できるOLEDのほうが優れています。
日常で出会う場面
IPS画面のタブレットを床に置いて、斜めに寝転がって眺めても、画面の文字や写真の色はほとんど変わりません。
デザインチームで何人かが1台のモニターを囲んでデザイン案を確認するときも、全員が歪みのない同じ色を見られます。
つまり ひとことで
液晶を画面と平行に水平回転させることで、斜めから見ても本来の色合いをほぼそのまま見せてくれるディスプレイ技術です。